国産初のスポーツバイク!? ヤマハ「YDS-1」の設計思想は「YZF-R」シリーズへ ホンダとのライバル関係は宿命だった!!
1959年に設立してわずか5年のヤマハ発動機から、日本のスポーツバイクの原点とも言える「YDS-1」が登場しました。浅間火山レースで活躍したファクトリーマシン「YDレーサー」のレプリカとも言えるピュアスポーツモデルでした。
レースマシンから公道市販車へ
ヤマハ「YDS-1」は、1959年に発売された国産初と言われる本格的スポーツバイクです。排気量246ccの2ストローク空冷2気筒エンジンを搭載し、レース用キットパーツも豊富に発売され、オンでもオフでも活躍しました。
当時ヤマハのバイクは、車名の頭文字に「Y」を使用しており、2番目のアルファベットが排気量クラスを表していました。「A」が125ccで、「B」が130cc、「C」が175cc、「D」が250ccです。「YDS-1」はヤマハの250ccスポーツ車の初代モデルを表す車名となっています。

「YDS-1」誕生の経緯は、発売の2年前に第2回浅間火山レースに登場した「YD-1」がベースの「YDレーサー」がルーツです。その「YDレーサー」は1位から3位を独占する快走を見せます。
ちなみに、「YD-1」はヤマハ初の250ccクラスのバイクで、しかもヤマハ初の2気筒エンジン搭載車でした。同様に「YDレーサー」はヤマハ初のファクトリーレーシングマシンとなります。
ところが、浅間火山レースはいわゆるクラブマン(アマチュアレーサー)対象の市販車レースへと路線変更されたため、ヤマハは「YDレーサー」をベースにした市販車「250S」をクラブマン向けに市販することになりました。
この「250S」は最高出力20PSを発揮し、138kgの軽量な車両重量と相まって最高速は140km/hという高性能でした。クラブマンのみならず全国のバイクファンにも販売好調で、生産台数が3000台に達した時点で車名を「YDS-1」とあらためて販売を継続しています。
その後、「YDS-1」をベースにしたレース専用モデルの「TD-1」も市販され、国内外のレースで活躍しました。つまり「YDS-1」は国産初のスポーツバイクであり、「RZ」や「TZR」そして現行の「YZF-R」シリーズへと続く、ヤマハのレーサーレプリカのルーツとも言えます。
当時ヤマハの250ccモデルには実用車的な「YD-2」がラインナップしており、その分「YDS-1」はスポーツ寄りに振り切った設計が施されています。

「YDS-1」のコンセプトは「世界市場で通用するツーリング用のスポーツモデルである事」とし、さらに「キットパーツによってスクランブラーモデルにも、スピードレーサーにも改造できるものにしたい」と設定されました。
それを実現したのは2連キャブレターや5速ミッション、コンロッドのニードルベアリング、「YDレーサー」譲りのダブルクレードルフレームなど、進歩的で贅沢な装備の数々でした。
メインステージは公道で、さらにレースでも活躍できるというのはいかにもヤマハらしい思想ですが、現在の「YZF-R」シリーズにも共通するコンセプトだと言えます。
1959年は、まだ国内に多くのバイクメーカーが乱立しており、ほとんどの国産バイクが旧時代のサドルシートでした。そんな時期に現代的スポーツバイクのルーツと言える「YDS-1」が登場し、同年にホンダからも「CB92スーパースポーツ」(排気量125ccの4ストローク並列2気筒SOHCエンジン)が発売されています。
ヤマハとホンダがその後ライバル関係になるとは、当時の人たちは想像もできなかったのではないでしょうか。両社の先進性には感心するとともに、宿命のようなものを感じざるを得ません。
ヤマハ「YDS-1」(1959年)の当時の販売価格は18万5000円です。
■ヤマハ「YDS-1」(1959年)主要諸元
エンジン形式:空冷2ストローク並列2気筒
総排気量:246cc
最高出力:20PS/7500rpm
最大トルク:1.9kg-m/6000rpm
全長×全幅×全高:1990×615×950mm
始動方式:キック式
燃料タンク容量:15.5L
乾燥重量:138kg
フレーム形式:ダブルクレードル
タイヤサイズ(前):3.00-18-2P
タイヤサイズ(後):3.00-18-4P
【取材協力】
ヤマハ・コミュニケーションプラザ(静岡県磐田市/ヤマハ発動機本社隣接)
※本記事中の写真は許可を得て撮影しています
Writer: 柴田直行
カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員













