アレ? そんなに疲れてない!! ドゥカティ新型「パニガーレV2 S」サーキットさんざん走って爽快気分!?

2025年モデルでドゥカティ「パニガーレV2」がフルモデルチェンジしました。ドゥカティのVツインエンジン史上、最も軽く、小さくなり、軽さが徹底追求されています。スペインのセビリアサーキットで、生まれ変わった「パニガーレV2 S」に試乗しました。

楽しさと新しさに溢れたキャラクターが、サーキットのピットを明るくする

 スペインのセビリアサーキットの最終セクションは、2&3速で6回も連続して切り返す超テクニカルパートです。そこで新型「Panigale V2 S(パニガーレV2 S)」は信じられないほどの運動性を見せてくれました。大袈裟ではなく、その振る舞いは排気量250ccや400ccクラスに近く、890ccとは信じられないほどだったのです。

ドゥカティ新型「Panigale V2 S」(2025年モデル)に試乗する筆者(小川勤)。スリックタイヤを履いたテスト車でサーキット走行。軽さの追求は車体のセットアップにも影響。サスペンションは前モデルよりもよく動く設定に
ドゥカティ新型「Panigale V2 S」(2025年モデル)に試乗する筆者(小川勤)。スリックタイヤを履いたテスト車でサーキット走行。軽さの追求は車体のセットアップにも影響。サスペンションは前モデルよりもよく動く設定に

 この日、セビリアサーキットのパドックは終日笑顔に溢れていました。1本目の走行後には、皆が驚きと共に「軽い、簡単、機敏」と口を揃えます。

 走行を重ねる度に「楽しい、安全、安心」といった声も多くなり、新型「パニガーレV2 S」は、これまでドゥカティが積み上げてきたものが「軽さと扱いやすさ」というかつてないカタチで昇華したことを証明していました。

 2025年モデルでは、前モデルより17kgの軽量化を実現しています。車名は同じですが、それはもはや全く別物のバイクに仕上がっていると言えます。

 ミドルクラスの排気量のスーパースポーツでサーキットを走ると、パワーやハンドリングの難しさ、そして体力消耗による疲労に翻弄されることも多々ありますが、新型はとてもフレンドリーでした。

 ドゥカティのスーパースポーツは、他メーカーのスーパースポーツと比較すると、乗りこなすのが難しい個性的なハンドリングであることが多かったのですが、新型「パニガーレV2 S」は寛容で、大きな方向転換をしてきました。

軽いバイクは楽しい! それは昔から変わらない

「軽さは正義」。これはスポーツバイクやレーサーにおいて昔からよく使われる言葉です。しかし、軽さを出すのはとても難しいこと。もちろんチタンやカーボン、マグネシウムといった軽量素材を使えば叶いますが、それには猛烈なコストがかかってしまいます。そこでドゥカティは、バイクの重量の1/3以上を占めるエンジンの軽量化に踏み切ったのです。

一目でドゥカティとわかる、美しいラインを繋いだデザイン。実際に見るととてもコンパクトに仕上がっています
一目でドゥカティとわかる、美しいラインを繋いだデザイン。実際に見るととてもコンパクトに仕上がっています

 ドゥカティ史上最軽量となる「V2」と命名されたエンジンは、前モデルのエンジンと比べると9.5kgの軽量化を実現しています。実際にドゥカティの本社で今までのエンジンと見比べましたが、明らかにコンパクトに仕上がっていました。

 ただし、メリットばかりではありません。前モデルのエンジンは排気量955ccで最高出力155psでしたが、新型エンジンは890ccの120psです。

 重量と引き換えに65ccの排気量と、35psの馬力を失ってしまったのです。しかし結論から言うと、120psはサーキットを走るのに十分だったのです。実際、ドゥカティのテスト部隊が同じコースを新旧2台の「パニガーレV2 S」で走り比べても、ラップタイムはほとんど変わらなかったそうです。

 それは、扱いやすいエンジンがスロットル操作を大胆にし、軽い車体がブレーキングやターンイン時のプレッシャーを軽減しているからです。「ちょうど良い」と言うと、もしかしたら物足りないように感じる人がいるかもしれませんが、扱いやすさと軽さは、確実に速さにも直結しているのです。

 最大トルクの70%が3000回転で生み出され、3500から1万1000回転の間で最大トルクの80%を下回ることはないというエンジンのターゲットは、てっきり公道だと思っていましたが、サーキットでも抜群に楽しいのは嬉しい驚きとしか言いようがありません。

スポーツ走行後に疲労感ナシ。こんなドゥカティ初めて!!

「パニガーレV4」譲りのクイックシフターをはじめとする電子制御も秀逸です。本来、新型「パニガーレV2」のタイヤはピレリ製の「ディアブロロッソIV」が標準ですが、今回の試乗はスリックタイヤで行なわれました。グリップが良いためトラクションコントロールはまるで作動しなかったのですが、滑らかなクイックシフトは様々なシーンでライダーをサポートし、バンク中でも躊躇なくシフト操作ができ、落ち着いた操作を心がければトラクションが途切れることはありません。

軽さとスリムさを追求することで、ハンドリングは実際の重量よりもかなり軽く感じます
軽さとスリムさを追求することで、ハンドリングは実際の重量よりもかなり軽く感じます

 また、レコードラインをトレースしやすいことも印象的でした。ターンインの際に向きが確実に変わるため、旋回時間を短めにすることができ、余裕を持って立ち上がりに備えることができるのです。

 またスロットルを開けた際もスムーズにパワー&トルクが提供され、それはすぐさまグリップとして使うことができます。

 サスペンションもよく動く設定で、大胆な肉抜きがされているモノコックフレームや両持ちとなったスイングアームとの相性も抜群。どこまでもしなやかに路面を追従してくれます。

 ブレーキングでも軽い車体は恩恵があります。多少オーバースピード気味になってしまってもリカバリーがしやすく、クリッピングポイントに戻ってきやすいのです。その寛容なキャラクターを知ると、色々と試してみたい気分にさえさせてくれます。

 実は今回、15分×6本の走行枠がありました。当初はそんなに走れるのだろうか……と不案でしたが、それは杞憂に終わりました。実際はほとんど汗をかくこともなく、爽快感に包まれたまま1日を終えることができたのです。

 この疲労感の少なさが、満足感の高さに繋がるのは間違いありません。

「パニガーレV2」は、「パニガーレV4」という孤高の存在があるため、どうしてもエントリーモデルに見られがちです。もちろん、「パニガーレV2」からドゥカティのスポーツバイクの世界を見れば、かつてないほど早くドゥカティを理解することができるしょう。

 しかし、「パニガーレV2」は僕(筆者:小川勤)のようにキャリアを重ねたライダーも満足させてくれるバイクでもあります。一般道ではどんな振る舞いをしてくれるのか? そこでも新たなるスポーツバイクとしての一面を見せてくれることでしょう。今から日本での再会が楽しみです。

※ ※ ※

 2025年モデルのドゥカティ新型「パニガーレV2」の価格(消費税10%込み)は、足まわりに豪華装備を持つ「パニガーレV2 S」が240万8000円、スタンダードな「パニガーレ V2」が211万9000円です。

【画像】フレームはドコ? ドゥカティ史上最軽量の「Panigale V2 S」のストリップを見ると……(20枚)

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Writer: 小川勤

1996年にエイ出版社に入社。2013年に二輪誌『ライダースクラブ』の編集長に就任し、様々なバイク誌の編集長を兼任。2020年に退社。現在はフリーランスとして二輪媒体を中心に執筆を行なっている。またイベントレースも好きで、鈴鹿4耐、菅生6耐、もて耐などにも多く参戦。現在もサーキット走行会の先導を務める。

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