急こう配と九十九折の「箱根旧街道」を越える!! 自転車で江戸の旅路を体感!
江戸時代、京都と江戸を結ぶ東海道で最大の難所とされた「箱根旧街道」には、宿場町の面影、石畳の風情、そして旅人を癒した茶屋がありました。自転車で箱根の峠を越え、そんな歴史を感じるヒルクライムを紹介します。
東海道を支えた「箱根旧街道」を行く
江戸時代、京都と江戸を結ぶ東海道の中でも屈指の難所と言われた「箱根旧街道」は、現在でも宿場町の趣や石畳の佇まい、旅人の疲れを癒した茶屋などが点在しています。歴史の息吹を感じながら自転車で登る。そんなヒルクライムを紹介します。

徳川家康が、天下統一後に整備を進めた須雲川沿いの旧東海道は、それまで利用されてきた尾根道の「湯坂道」から変更されたものです。
古来、街道では高台から見下ろすことができ、頭上からの攻撃を避けることができる尾根に沿った道が選ばれてきましたが、江戸時代になると、水の確保が容易で旅人の利便性を考慮した川沿いの道が選ばれたようです。
戦乱から太平の世へと移り変わったことが、「道」にも現れているのです。
現在は、当時の街道に沿って県道が伸びています。江戸時代の面影を色濃く残すルートになっているので、歴史を感じながら、箱根越えの厳しさを味わえるヒルクライムを楽しむことができます。
スタート地点は「箱根湯本駅」近くの「三枚橋」です。集落を抜ける序盤から、急勾配の直登が始まります。集落を抜けると、一度勾配が緩みカーブが続く区間を挟んで、本格的な登坂へと入っていきます。
中盤の畑宿エリアでは、寄木細工の工房が点在する趣のある風景が楽しめますが、ここからが本当の坂との戦いの始まりです。約3km先の甘酒茶屋まで緩むことのない急登が続きます。
目の前に現れるのは「七曲り」と呼ばれる九十九折です。途中、自動車専用道路の「箱根新道」の高架橋が頭上に現れます。一方で、江戸の旅人が歩いた旧道(登山道)への入口も見ることができます。
歴史的な街道と現代の構造物が交差する、独特の景観が広がります。
これでもかと続く急勾配が緩み、見通しが良くなったところに甘酒茶屋があります。ここは江戸時代の旅人も休息を取った場所です。自転車で難所を制覇したら、江戸時代の旅人に想いを馳せる準備が整っていることでしょう。
甘酒とうぐいす餅で、心も体もほっこり
旧街道沿いの中間地点に位置する甘酒茶屋は、江戸時代から続く旅人の憩いの場です。畑宿からの急登を越えた旅人たちは、ここで一息ついて体力を回復させていました。かつては4軒あった甘酒茶屋も、今では1軒のみ。その佇まいは当時の雰囲気そのままです。

店内に足を踏み入れると、立派な梁と柱が支える広々としたランプが灯る空間があります。寒い季節、ストーブの暖かさが冷えた体を包み込んでホッと一息です。
筆者(才田直人)が注文したのは、看板メニューの甘酒と力餅「うぐいす」です。「うぐいすがいち、甘酒が一杯です!」と元気の良い掛け声が店内に響きます。
砂糖を添加していない甘酒は麹の優しい甘さが特徴で、疲れた身体に染み渡ります。添えられた「ふきのとう」の醤油漬けが、甘酒の風味をより引き立たせてくれます。
力餅は青大豆を使用したきな粉「うぐいす粉」がたっぷりとまぶされ、控えめな甘さが絶妙です。付け合わせのしば漬けで口直ししながら、ゆっくりと味わいます。
平日でも多くの観光客で賑わうこの茶屋は、サイクリストにとっても特別なひと時を提供してくれます。
ヒルクライムの醍醐味と、歴史の融合
甘酒茶屋を出たら、もう一踏ん張りです。旧街道はさらに標高を上げ、お「玉ヶ池」を通ってフィニッシュ地点へと向かいます。
旧街道のヒルクライムは、歴史の重みと自然の美しさを感じられる特別な体験になるでしょう。当時の旅人が歩いた道を辿りながら、自転車でその厳しさと魅力を体感してみてはいかがでしょうか。
Writer: 才田直人
1985年生まれ。学生時代に通学用に購入したロードバイクをきっかけにトレーニングを開始。サイクルロードレースの全日本選手権参戦やフランスでの選手生活、国内での社会人兼選手生活を経て2023年に引退。日本だけでなく東南アジアなど自転車旅をこよなく愛し、現在はワーケーション自転車旅を続けている。専門的な知識と経験でTV出演やヒルクライムイベントのアテンド、講師なども務める。













