知ってた? バイクの車体ってかなりの「左右非対称」だって!! それでも真っすぐ走るのはナゼ?

バイクは重心移動で操る乗りものです。だからこそ左右対称でバランスよく作られている……と思いきや、部品の配置や形状が左右でかなり違っています。それでも真っすぐ走るので、ちょっと不思議かもしれません。

いまどきマフラーは、車体右側のみ

 バイクは身体でバランスを取りながら乗っている、と感じている人が多いのではないでしょうか? もちろんその通りですが、それならバイク自体はキッチリ左右対称に作られているかというと、そうでもありません。たとえ装着されている部品がアンバランスでも、重量は左右で揃えているのでは、と感じますが……実際はどうなのでしょうか。

重量のあるマフラーが片方だけに装備されていると、重量的にバランスが悪い気もするが……。画像はカワサキ「エリミネーター」を真上から見たところ
重量のあるマフラーが片方だけに装備されていると、重量的にバランスが悪い気もするが……。画像はカワサキ「エリミネーター」を真上から見たところ

 まず左右非対称の代表的なものと言えば「マフラー(サイレンサー)」です。単気筒はもちろん、近年はエンジンが2気筒以上でも、マフラーは1本出しが主流です。そしてその多くが車体の右側に出しています。

 車体から外して手で持つとわかりますが、ノーマルのマフラーのサイレンサーはかなり重量があります。これは騒音規制や排出ガス規制に対応するために構造が複雑なのと、強度や耐久性を確保するのが理由ですが、こんなに重いモノが片側だけに付いていたらバランス悪いのでは? と思ってしまいます。

 とはいえ多くのバイクはサイレンサーと反対側にチェーンやスプロケットなどの駆動系パーツ(これらもけっこう重い)を配置しているので、それでバランスをとっているのかとも思いますが、駆動系パーツとサイレンサーが全く同じ重量というワケではなさそうです。

そもそも、エンジンは左右対称じゃない!?

 じつはマフラー以前に「エンジン」が左右対称ではありません。たとえばカムシャフトを駆動するカムチェーンは、昔は並列2気筒エンジンなら1番と2番シリンダーの間、並列4気筒なら2番と3番シリンダーの間に配置していましたが、近年の多気筒エンジンはシリンダーの左右のどちらかの端に配置する「サイドカムチェーン方式」が主流です。こうなるとエンジンの外観はもちろん、内部パーツや重量のあるクランクシャフトなども左右非対称になります。

 さらに言えば、クランク軸のどちらかの端にジェネレーター(発電機)が配置されたり、クランク軸からトランスミッションに駆動力を伝える(一次減速)側にクラッチがあり、その反対側にドライブスプロケットやチェーン(二次減速)があるので、エンジンを真上(または真下)から見ると、かなり左右非対称な形状をしています。

 その点では、BMWモトラッドの水平対向2気筒エンジン(フラットツインもしくはボクサーツインとも呼ぶ)は、車体の前後から見ると横に突き出たシリンダーがまるでヤジロベエの腕のように左右均等で、非常にバランスが良さそうに見えます。

BMWモトラッドの水平対向2気筒エンジンは、2023年型からの「R 1300」系以前のモデルは真上から見ると驚くほど前後にズレている。画像は2015年型の「R 1200 R」
BMWモトラッドの水平対向2気筒エンジンは、2023年型からの「R 1300」系以前のモデルは真上から見ると驚くほど前後にズレている。画像は2015年型の「R 1200 R」

 ところが! 車体の真上から見るとシリンダーが驚くほど前後にズレています。これは水平対向エンジンの構造ならではの特徴です。

 じつは1990年代頃までのOHV時代のモデルだと、シリンダーの後ろにあるキャブレターとライダーの足の干渉を避けるために、シリンダーのズレに合わせてステップ位置も左右で5cm以上もズレていました。ところが実際に乗ると気にならない、というより気が付きませんでした……。

 ちなみにBMWの最新のフラットツインは、完全刷新された「R 1300 GS」(2023年~)だと真上から見たときにシリンダーのズレが(ほとんど)ありません。その理由は……少々難解なのでここでは割愛させて頂きますが、もちろん技術の進歩によるものです。

サスペンションやスイングアームだって左右非対称!!

 ほかにも左右非対称なモノとしては、リアサスペンションの「モノショック」も、意外と車体の中心からズレていて、左右どちらかに配置している場合が多いです。これは吸気のためのエアボックスや、エンジン形式によってはエキゾーストパイプを避けるためだったり、バッテリーや電装部品の配置の影響もあるようです。

 また、ショックユニットが見えるように敢えてどちらかに寄せてデザイン要素としている場合もあります。とはいえ、ショックユニットもけっこう重量のあるパーツなのですが……。

 そして「片持ち式スイングアーム」は、もはや説明不要なほどの左右非対称です。かつてレースでも大活躍したホンダの「RVF/RC45」(1994年)などは、太いスイングアームやチェーンやスプロケットなどの駆動系、そしてサイレンサーも左側に配置され、右側には何も無い……なルックスです。

 片持ち式スイングアームは時代によって流行り廃りがあり、現在は少数派のように感じますが、それはスポーツバイクの話です。

 じつはスクーターの多くが、エンジンとスイングアーム及び後輪の駆動系を一体化した「スイングユニット式」を採用しており、この方式は大抵が片持ち式スイングアームになります。カバーで隠れているのでわかりにくいですが、スクーターのリアまわりはかなり左右非対称な構造です。

 ……と、ここまで挙げたようにバイクは左右対称には作られておらず、左右の重量バランスが均等でない車両も少なくありません。しかし真っすぐ走ってくれます。

 じつは走行中のバイクは、ヤジロベエのように左右でバランスして直立・直進しているワケではなく、ライダーも常に完璧な左右バランスに気を配ってはいないハズです(横を向いたり、停止前にステップから片足を外しても真っすぐ走る)。

 バイクが真っすぐ走る、すなわち直進安定性を生み出しているのは後輪の駆動力=トラクション(減速時はエンジンブレーキによるマイナストラクション)と、前輪まわりに設定されたキャスターやトレールの作用があるからです。そのため、極端に左右の重量バランスが異なっていなければ、影響なく真っすぐ走れるのです。

 とはいえバイクはライダーの重心移動で曲がる乗りものなので、車体の左右の重量差によって左右のカーブで曲がりやすい・曲がりにくいといったフィーリングの違いが出ることはあるでしょう。

 しかしこれは、どちらかと言うと車体の構造やエンジンのレイアウト(縦置き配置やクランク軸の回転方向)などの方が大きく影響すると思われます。

 したがって、もし愛車が「真っすぐ走らない」「勝手に曲がっていく」と感じたら、それは左右非対称な作りや重量バランスの差ではなく、何らかの故障やトラブルが原因なので、速やかにバイクショップで点検してもらいましょう。

【画像】左右で全然違う!? 非対称にもほどがあるバイクの車体をあらためて見る(15枚)

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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