北米で大ヒット!? 獲物を追う輸出用「ハンターカブ」第2世代 ホンダ「トレイル90 CT200」とは

現在でも人気の高い「CT125・ハンターカブ」ですが、そのルーツは北米向け輸出専用車でした。同シリーズの1964年モデル「トレイル90 CT200」は、ハンター向けの充実装備で人気を加速します。

ハンター用にモデルチェンジを重ねて進化

 現在でも人気の高い「CT125・ハンターカブ」ですが、そのルーツはアメリカ向け輸出専用車でした。同シリーズの代表的な1台、1964年モデル「トレイル90 CT200」です。

ホンダ「Trail 90 CT200」(1964年型)はアメリカへの輸出専用車だった
ホンダ「Trail 90 CT200」(1964年型)はアメリカへの輸出専用車だった

 ホンダは1959年にアメリカのロサンゼルスに海外現地法人を設立します。排気量305ccや250ccの「ドリーム」、125ccの「ベンリィ」と共に、「スーパーカブ」もアメリカへ輸出されました。

 アメリカで「ホンダ50」と呼ばれた50ccの「スーパーカブ」は、広告宣伝の成功もあり街中の新しい足として大ヒットします。一方、山岳地帯では「ホンダ50」がハンティング用の移動手段として重宝されていました。

 広いアメリカですが、普段は仕事に使っているトラックに「ホンダ50」を積めば、高速道路の快適性や航続距離は必要ありません。むしろ野山では軽量で扱いやすい事が重宝されました。

 しかし市街地と違って「ホンダ50」をそのまま野山で走らせると、様々な不都合もあります。例えば草木に引っかかるレッグシールドや、上り坂での力不足だったり、土の上でもグリップの良いタイヤも欲しかったはずです。

 アメリカのユーザーは「ホンダ50」に未舗装路に適した改造を施し、アウトドアで楽しんでいたと言います。これを見たアメリカンホンダは、日本へ新しい「スーパーカブ」の開発を要請します。これが「ハンターカブ」の始まりです。

 1961年には元祖ハンターカブと言える「CA100Tトレイル50」が発売されます。「CA」はベースになった輸出用スーパーカブ「CA100」の車名でした。「トレイル(Trail)」とは獣道という意味で、バイクの特徴をよく表しています。

「CA100Tトレイル50」はレッグシールドとフロントフェンダー、チェーンケースなどが外され、大小のリアスプロケットをダブルで装備していました。また山火事対策を施したマフラーやオフロード用タイヤも装備し、大型キャリやエンジンガードのオプションも用意されています。1962年には排気量がアップされた「C105Tトレイル55」も発売されました。

通常走行用と、歩くような速度で急坂を登れる大きなスプロケットをダブルで装備。後期型は1枚+副変速機に変更された
通常走行用と、歩くような速度で急坂を登れる大きなスプロケットをダブルで装備。後期型は1枚+副変速機に変更された

 写真の1964年製ホンダ「トレイル90 CT200」は、「ホンダ50」のトレイルシリーズに装備を充実したモデルで、空冷4ストローク単気筒OHVエンジンは約1.6倍の86ccに排気量アップされ、最大出力6.5ps/8000rpmを発揮します。自動遠心クラッチは4段変速となっています。

 大型ハンドルやエンジンガード、マッドフラップ付きのフロントフェンダーや滑り止め付きのキャリアなどを装備しています。

 1966年には車名が「CT90トレイル90」と変更されます。ダブルスプロケットを廃止して複変速機となり、フロントフォークもテスコピック方式に変更されるなど、モデルチェンジを経て「CT90」シリーズは15年間も生産されます。

「CT」シリーズは大規模な農園や牧場でも作業道具として受け入れられるようになり、働くバイクとしてもうひとつのカテゴリーで定着していきます。現在ハンティングや農場では4輪バギーが活躍していますが、これらのルーツに「トレイル90 CT200」などがあったと考えられます。

 その後、ハンター用のスーパーカブは105ccの「CT110トレイル110」へ継承され、日本のファンも知るお馴染みのスタイルへと変わっていきます。

 その流れは「クロスカブ」へと展開され、現在発売されている「CT125・ハンターカブ」へ継承されています。

■ホンダ「Trail 90 CT200」(1964年型)主要諸元
エンジン種類:空冷4ストローク単気筒OHV
総排気量:86cc
最高出力:6.5PS/8000rpm
車両重量:82kg

【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)

【画像】ガチのハンター用!? 現地でのニーズを受けて生まれたホンダ「Trail 90 CT200」を画像で見る(10枚)

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Writer: 柴田直行

カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員

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