バイクとコーヒーが1セットのように感じるのは歴史的な理由があった!? デイドリップ通信Vol.36

バイク乗りのコーヒー店主、黒田悟志さんによる連載コラム。今回は、テーマである「バイクとコーヒー」の関係性について、歴史的背景も踏まえた考察のお話です。

日常と非日常を、行ったり来たり

 こんにちは、『Day Drip Coffee』のクロダです。都内で小さなコーヒー屋をやっている、バイク好きの店主です。このコラムは「バイクとコーヒー」をテーマに、2つの世界を行き来して感じる様々なトピックをお届けしています。

 今回は「バイクとコーヒーの関係性」という、本コラムのテーマそのものについてのお話です。考えてみれば、この2つは全く異なる世界のモノなのに、なぜかいつもセットで語られることが多いものです。その理由について自分が以前から考えていたことを、主にコーヒー側の視点からですが、取り上げてみたいと思います。

いつもセットで語られることが多い、「バイクとコーヒーの関係性」についての考察です
いつもセットで語られることが多い、「バイクとコーヒーの関係性」についての考察です

 僕がバイクに乗ろうとする時はいつも、準備の全てが儀式のように感じます。バイクジャケットを羽織り、ヘルメットを被る。グローブを付けたら、キーを差し込みイグニッションを回す。それら全ての動作は、まるで日常から非日常の世界へと飛び込んでゆく儀式のようです。

 その非日常感の根底にあるのは、バイクが持つ危うさ、そして危うさゆえの「緊張感」です。速度や風圧、エンジンの唸り、それらは身体を直接刺激して五感を研ぎ澄まします。そしてバイク乗りである自分の意識は、緊張の極みへと達します。

 一方で、コーヒーはバイクライドの緊張を解きほぐす存在です。コーヒーの温かさと香りは、張り詰めた気持ちを静かに優しく受け止めてくれます。コーヒーブレイクという言葉があるように、それはライディングで昂った自分の神経を鎮めてくれます。

 言うなれば、バイクがもたらす非日常の世界から、日常へと連れ戻してくれるものです。バイクが非日常の異世界へと足を踏み入れる装置だとするなら、コーヒーは現実世界へと引き戻すためのスイッチです。この緊張と緩和のコントラストが、バイクとコーヒーをパートナーたらしめ、結び付けているのだと思います。

 でも気持ちを鎮めるだけなら、紅茶でも緑茶でもいいはず。なのにどうして「バイクとコーヒー」なのか? なぜ紅茶や緑茶ではしっくりこないのか? 実はコーヒーについてもう少し掘り下げていくと、浮かび上がってくることがあります。

 それは歴史的・文化的な背景です。紅茶は王侯貴族の嗜みとして、英国を中心としてヨーロッパで発展していったのに対して、コーヒーが広く親しまれるようになったのはアメリカでした。

 その象徴的で大きな転機となった出来事が「ボストン茶会事件」です。歴史の教科書で見かけた気がする言葉じゃないですか(笑)?

「バイクとコーヒーの関係性」には、歴史的・文化的な背景があるのではないでしょうか
「バイクとコーヒーの関係性」には、歴史的・文化的な背景があるのではないでしょうか

 当時のアメリカは英国の植民地で、英国から紅茶を輸入していたのですが、ある日価格が引き上げられた上に高い関税も課されるという事態に。それに怒ったアメリカはボストン湾に到着した英国の船を襲撃、積荷の紅茶を海に投げ捨てるという出来事がありました。それはアメリカ独立の機運に繋がり、コーヒーを嗜む文化がアメリカで発展していくきっかけとなりました。

 つまり当時のコーヒーは、格式や上流階級に対する反骨精神の結果でもあったのです。その流れは開拓者の飲み物として、より野生味を帯びて西部開拓時代へと受け継がれていきました。

 アメリカの荒野を進む開拓者たちのそばには、いつもコーヒーがありました。彼らはコーヒーによって眠気と疲労を追い払いながら、新たな地平へと進んでいったのでした。

 更に時代が下がっていくと、コーヒーは戦場へと持ち込まれました。2度の世界大戦では米軍兵士たちに大量のコーヒーが供給されました。戦場においてコーヒーは束の間の休息であり、また次の戦闘へ向けた覚醒のための存在でもありました。アメリカ独立運動~西部開拓者~兵士達……。コーヒーはいつも「前へ進む者たち」のそばにあった訳です。

 そんな背景を踏まえると、バイクの持つ特殊性(常にバランスを取り続けなければならず、空間にむき出しのまま疾走するリスクを背負う)を巧くいなしながら駆けるバイク乗りもまた、「前へ進む者たち」のひとりであることが分かります。

「鉄馬」にまたがり風を切って走るバイク乗りにも、どこかそんな精神性の一端が垣間見えてくるのです。バイクで走った先で飲むコーヒーとは、もはや単なる嗜好品ではなく、緊張と安堵、非日常と日常、その境界を行き来するための大切なキーであり、「儀式」の最後に必要な魔法の液体です。

「バイクとコーヒー」、もしかしたらそれは偶然の組み合わせなんかではなく、ずっと昔から同じ鼓動を刻んできたパートナーなのかもしれません。「バイクとコーヒー」が響き合い、また寄り添う訳について、僕が思っていたことはこんな理由からでした。

 寒い季節がやって来ましたが、それでもバイクを走らせた先で一杯の温かなコーヒーに出会った時、この話をふと思い出してくれたら嬉しいです。

【画像】一体ナゼ? セットで語られることが多い「バイクとコーヒー」を画像で見る(7枚)

画像ギャラリー

Writer: 黒田悟志

世田谷の自家焙煎カフェDay Drip Coffee店主。自転車ロードバイクに20年ほど乗ってきたが、2年前オートバイに目覚めて自動二輪免許取得。両足2気筒から4スト単気筒へ。昨年はSSTRにも初参加しバイクライフを堪能中。

編集部からのおすすめ

無理せず引き出せる絶大な安心感! ブリヂストン「BATTLAX RACING STREET RS12」で味わう極上のハイグリップ【PR】

無理せず引き出せる絶大な安心感! ブリヂストン「BATTLAX RACING STREET RS12」で味わう極上のハイグリップ【PR】

最新記事