国内発売は1988年!! 対向6気筒エンジン最高峰ツアラー ホンダ「ゴールドウイング(GL1500)」が日本の道へ
アメリカのライダー達の素敵なバイクライフが、ホンダのプレミアムツアラー「ゴールドウイング」を生み出しました。第4世代の「GL1500」は水平対向6気筒エンジンと豪華な装備で、13年間頂点に君臨します。
豪華な機能と高性能が生み出す、至福の快適性
1988年に登場したホンダ「ゴールドウイング(GL1500)」は、米国の研究開発拠点となるホンダR&Dノースアメリカが主体となって、デザインからエンジン、足まわりのチューニング、装備類のセレクトまで担当し、オハイオ工場で生産されました(日本国内での車名は「ゴールドウイング」です。当記事では「GL1500」と記します)。

1975年に新登場し、プレミアムツアラーというカテゴリーを開拓してその頂点を走っていたのが「ゴールドウイング」シリーズです。
しかし第3世代の「GL1200」の時期になると他メーカーも北米の高級ツアラー市場に参入し、今後ますます販売競争が激しくなることが予想されていました。
そんな中、さらなる圧倒的な存在感と、より高い次元で快適に長距離ツーリングを楽しめる高性能を目指して開発されたのが、第4世代の「GL1500」です。それをホンダ自ら日本に輸入し、このモデルから日本国内での販売が始まります。
エンジンは「ゴールドウイング」の特長である低重心低振動な乗り味を生み出す水平対向形式を継承しますが、開発陣の意見は4気筒のままか、また6気筒を新開発するかで分かれます。
試作の6気筒エンジンが思うような性格に仕上がらず、一度は「4気筒で十分」と判断されますが、「ライバルに対して優位性を確保する6気筒が不可欠」と結論が出ます。当時のホンダのもっとも大規模な開発プロジェクトにより、15種類もの試作車が製作されて何千時間ものテスト行われました。
完成した排気量1520ccの新型水平対向6気筒エンジンのクランクシャフトは、60度位相させた120度の等間隔爆発を実現し、新次元のスムースさを実現します。
コンピューターで自動制御されるPGMキャブレターを装備し、低速から高速まで豊かなトルクを発生させるロングインテークマニホールドにはラジエターから温水を回し、低温時の吸気温度を高める工夫も施されています。
高剛性のダブルクレードルフレームはGPレーサーのツインスパーのような形状で、アンダーループはサイドラジエターを守るエンジンガードのような形状で広がっています。剛性十分なフレームは低振動なエンジンをラバーマウントし、さらに快適性を向上させています。
フルカバーのボディパネルはメカ部分を極力カバーしたデザインで、同時に大型カウリングによりゆったりした乗車姿勢で走行風による疲労を軽減できる空力特性を追求しています。
この他にも、前後連動ブレーキや内蔵されたコンプレッサーで空気圧が調整できるエアサスペンション、手動で上下調整可能なウインドスクリーン、走行風やラジエターから温風を送るベンチレーション機構、クルーズコントロール、大容量のトップケースとパニアケースは集中ロックシステム式など、様々な機能を満載しています。

もうひとつ紹介しておきたいのは、電動リバース(後退)システムです。それまで2輪車をリバース(バック)させるという発想はありませんでしたが、ホンダには皇宮警察用のサイドカーでバックギア+スロットル操作で交代させる機構を開発した経験がありました。
しかし2輪でハンドルを切ると車体が傾く、また足を着きながら後退させるという不安定になりやすい特性があります。それらを踏まえ、唐突な速度変化の無いセルモーターを活用した電動リバースシステムを開発しました。
ちなみに変速機は4段変速(+後退)です。
「GL1500」では特別な機能が多数開発され、「ゴールドウイング」シリーズの中でも大きな節目となったのです。
北米の工場で生産されて日本へ輸入された「GL1500」は、1990年にはさらに快適な機能や装備を施した「ゴールドウイングSE」も登場します。
当初から完成度の高かった第4世代「GL1500」は大きなモデルチェンジもないまま13年間生産され、2001年に第5世代の「ゴールドウイング(GL1800)」へバトンタッチされました。
ホンダ「ゴールドウイング(GL1500)」(1988年型)の当時の販売価格は175万円です。
■ホンダ「GOLD WING(GL1500)」(1988年型)主要諸元
エンジン種類:水冷4ストローク水平対向6気筒SOHC
総排気量:1520cc
最高出力:97PS/5000rpm
最大トルク:15.2kg-m/4000rpm
全長×全幅×全高:2630×955×1525mm
シート高:770mm
始動方式:セル
燃料タンク容量:23L
車両重量:391kg
フレーム形式:ダブルクレードル
タイヤサイズ(F):130/70-18 63H
タイヤサイズ(R):160/80-16 75H
【取材協力】
ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
Writer: 柴田直行
カメラマン。80年代のブームに乗じてバイク雑誌業界へ。前半の20年はモトクロス専門誌「ダートクール」を立ち上げアメリカでレースを撮影。後半の20年は多数のバイクメディアでインプレからツーリング、カスタムまでバイクライフ全般を撮影。休日は愛車のホンダ「GB350」でのんびりライディングを楽しむ。日本レース写真家協会会員















