ありそうでなかった!? KTM“初”のアンダー400ccオン/オフモデル 悪路走破性より親しみやすさを重視した「390エンデューロR」と「390アドベンチャーR」

KTMのモデルラインナップの中で、ありそうでなかった「中免」で乗れる親しみやすいオン/オフモデル「390 ADVENTURE R」と「390 ENDURO R」に注目します。

KTMが新ジャンルへの挑戦?

 2025年秋から、日本市場での発売が始まったKTM「390エンデューロR」と「390アドベンチャーR」に対して、私(筆者:中村友彦)は画期的という印象を抱いています。何と言ってもこの2台は、KTMのアンダー400ccクラスでは初となる、本格的なオン/オフモデルなのですから。

 などと書くと、アレ、KTMは以前からそういうモデルを作っていなかったっけ? と疑問を抱く人がいるかもしれませんが……。

KTM「390 ENDURO R」(左)と「390 ADVENTURE R」(右)。いずれも排気量400cc以下の「中免」で乗れるオン/オフモデル
KTM「390 ENDURO R」(左)と「390 ADVENTURE R」(右)。いずれも排気量400cc以下の「中免」で乗れるオン/オフモデル

 確かにKTMは、2020~2025年に車名の末尾に「R」が付かない「390アドベンチャー」を販売していましたし、保安部品を装備するコンペティションモデルとして、古くから150~350ccの「EXC」シリーズを生産しています。

 ただし、「390アドベンチャー」はオフロードもそれなりに走れるオンロードバイク、という雰囲気でしたし(タイヤサイズはフロント19/リア17インチで当初のホイールはアルミキャストだった)、「EXC」シリーズは日常域やツーリングでの使い勝手をほとんど考慮していません。

 そういった事実を考えると、一般公道での使用を大前提にしながら、オフロード車の定番であるフロント21/リア18インチタイヤを履く「390エンデューロR」と「390アドベンチャーR」は、やっぱりKTMにとって新ジャンルへの挑戦と言うべき画期的なモデルなのです。

 なお、2機種の価格(消費税10%込み)は「390エンデューロR」が85万9000円、「390アドベンチャーR」が97万9000円です。

 同時期にスズキが新発売した「DR-Z4S」の119万9000円と比べればかなり安いですが、インド生産であることや、他の390シリーズと基本設計を共有していることを考えれば、妥当と言っていいのかもしれません。「DR-Z4S」は日本生産で、基本設計を共有するのは「DR-Z4SM」のみです。

車体寸法がKTMらしくない?

 クラス最強の45psを発揮する水冷単気筒エンジン、オン/オフモデル用として刷新された鋼管トレリスフレーム、新規開発の外装やスイングアームなど、この2機種には注目するべき要素が数多く存在します。ただし、私が最も興味を抱いているのは、前後ホイールトラベルとシート高です。

最新のKTM「390」シリーズが搭載する水冷単気筒エンジンは、ボア×ストロークが89×64mmで、排気量は398.7cc。最高出力は45ps/8500rpm、最大トルクは39Nm/7000rpmを発揮
最新のKTM「390」シリーズが搭載する水冷単気筒エンジンは、ボア×ストロークが89×64mmで、排気量は398.7cc。最高出力は45ps/8500rpm、最大トルクは39Nm/7000rpmを発揮

 その2つの要素は悪路走破性の指針で、2026年型の「EXC」シリーズは300/310mm・963mm、「390エンデューロR」の兄貴分に当たる「690エンデューロR」は265/250mm・935mmという数値を公表しています。

 ところが「390エンデューロR」と「390アドベンチャーR」は、ホイールトラベルが229/230mmしかなく、シート高は「390エンデューロR」が890mm、「390アドベンチャーR」が870mmと、900mm以下に抑えているのです。

 そういった数値に対して、世の中には「KTMらしくない」と言う人がいるかもしれません。とはいえ私は、悪路走破性がある程度犠牲になるのを承知で、親しみやすさを重視し、あえて控えめとしたホイールトラベルとシート高に、自社のオン/オフモデルの魅力をより多くのライダーに知って欲しいというKTMの強い意志を感じました。

意外に多い2機種の相違点

 ここまでは両車に通じる資質の話をしてきましたが、実際の2台は似て非なるモデルです。具体的な話をするなら、トレールバイクの王道的なスタイルの「390エンデューロR」は運動性や日常域の扱いやすさを、そしてレーサーを彷彿とさせるラリータワーと「390エンデューロR」より+5Lとなる容量14Lのビッグタンクを装備する「390アドベンチャーR」は、快適性や安定性を重視しているのです。

車名はレーシーなKTM「390 ENDURO R」だが、このモデルを競技に使う人は、世の中にはほとんどいないだろう。何と言ってもこのモデルの車重は、エンデューロレーサー「EXC」シリーズより50kg以上重い165.75kgなのだから
車名はレーシーなKTM「390 ENDURO R」だが、このモデルを競技に使う人は、世の中にはほとんどいないだろう。何と言ってもこのモデルの車重は、エンデューロレーサー「EXC」シリーズより50kg以上重い165.75kgなのだから

 もちろん、2台の相違点は外装だけではありません。前後ショックやタイヤ、TFTメーターは各車各様で、ファイナルレシオやホイールベース、フロントブレーキディスクも、車両の特性に合わせた最適化が行われています。

【ファイナルレシオ・ホイールベース・フロントブレーキディスク径】

「390エンデューロR」14/48・1475mm・285mm

「390アドベンチャーR」14/46・1481mm・320mm

 では各車がどんなライダーに向いているのかと言うと、まず「390エンデューロR」は、ホンダ「CRF250L」シリーズや、カワサキ「KLX230」シリーズなどからのステップアップに最適でしょう。ちなみにそういう観点だと、スズキ「DR-Z4S」という選択肢もありますが、レーサー的要素が控えめな「390エンデューロR」の方が、軽二輪から乗り換えた際の違和感は少ないような気がします。

 一方の「390アドベンチャーR」も、ホンダ「CRF250ラリー」やスズキ「Vストローム250」「Vストローム250SX」などからのステップアップに向いていますが、このモデルの場合は、ミドル以上のアドベンチャーツアラーからの乗り換えもアリだと思います。

 と言っても、「390アドベンチャーR」にはミドル以上のアドベンチャーツアラーのような余裕は備わっていないのですが、日本の道路事情を考えると、45psの馬力や175.5kgの車重をちょうどいいと感じるとライダーは少なくないでしょう。

KTM「390 ADVENTURE R」の最大の特徴は、ラリーマシンの「450 RALLY」を彷彿とさせるフロントマスク。Vツイン・パラレルツインを搭載する兄貴分より、同社のレーサーに近い印象だ
KTM「390 ADVENTURE R」の最大の特徴は、ラリーマシンの「450 RALLY」を彷彿とさせるフロントマスク。Vツイン・パラレルツインを搭載する兄貴分より、同社のレーサーに近い印象だ

 いずれにしても両車は、KTMユーザーの増加に大いに貢献しそうなモデルです。逆に言うなら、これまでのKTMに一般公道に特化したアンダー400ccのオン/オフモデルが存在しなかったことが、私としては不思議な気がするのですが、「READY TO RACE」をポリシーとするKTMとしては、フレンドリーさを前面に打ち出した車両を製作することに、何らかの逡巡があったのかもしれません……。

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Writer: 中村友彦

二輪専門誌『バイカーズステーション』(1996年から2003年)に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。年式や国籍、排気量を問わず、ありとあらゆるバイクが興味の対象で、メカいじりやレースも大好き。バイク関連で最も好きなことはツーリングで、どんなに仕事が忙しくても月に1度以上は必ず、愛車を駆ってロングランに出かけている。

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