「バイク事故は必ず防げる!!」 クイーンスターズ白バイ隊員が明かす“危険回避の3原則”とは?

バイク事故は、単独事故に次いで交差点での右直事故が多くなっています。「どちらもライダーの注意で防ぐことができる可能性が大きい」と、事故現場に臨場し、被害者の無念を知る警視庁交通総務課・巡査部長は、すべてのライダーに共通する「危険回避の3原則」を熱く語りました。

「神様でも止められない」空走距離、反応時間と右直事故の関係

 警視庁交通総務課・交通安全教育係の木田美里巡査部長は、ライダーのための危険回避の原則を熱く語りました。警視庁女性白バイ隊「クイーンスターズ」に所属すると同時に、数々の交通事故現場を見てきました。

 2026年5月24日、「二輪車安全運転東京大会」の中で開催された交通安全教室で、一般ライダーが参加した競技会の結果集計を待つ約30分間で語られたその内容は、ライダーの手拍子から始まりました。

「私が手を叩きます。できれば、遅れないように一緒に叩いて下さい」

 等間隔でリズムよく手を叩き始めた木田氏ですが、しばらく続けた次の瞬間、ふいに手を止めます。あとに続くライダーは手が止まらず叩いてしまいます。

「今、私が止めたんですけれども、皆さん叩いてしまいましたよね。じゃあ次、2回目。また私がどこかで手を止めます」

 2度目は、ライダーの多くが手を止めることができました。木田氏が種明かしをします。

「音が聞こえてないのに、手を叩いてしまいます。これは人間の反応時間によるものなんです、っていうお話をさせていただきたくて、やりました」

 認識し、脳で判断し、手足を動かすまでには一定の時間が必要になります。反応時間とはこのブランクのことで、人の平均的な反応時間は0.75秒だそうです。

 例えばこの間に、時速40kmでは約8mも進んでしまいます。年齢差や訓練で多少の違いはあっても、危険回避のために反応時間を短縮することは難しいでしょう。そこで対策が必要になる、と木田氏は語ります。

技能走行、法規走行の終了後に実施された安全教室。危険回避の原則を熱く語る、警視庁交通総務課「クイーンスターズ」の木田美里巡査部長(写真=中島みなみ)
技能走行、法規走行の終了後に実施された安全教室。危険回避の原則を熱く語る、警視庁交通総務課「クイーンスターズ」の木田美里巡査部長(写真=中島みなみ)

「この0.75秒という反応時間を0秒にすることはできないのです。では、その危険が伴う反応時間というのをどうやってカバーしたらいいと思いますか? 最初は手を叩き、2回目は手を叩かなかったことで分かると思うのですが、予測をすることが非常に大切になってきます。運転では危険予測をすることで、反応時間=空走距離をカバーすることが可能になってきます。言い過ぎかもしれないですけれども、危険予測をしていれば、事故は防げるくらい大切なことなのです」

それはブレーキレバーに指をかけることから始まる

 バイクと四輪車の「右直事故」は、2026年の段階では四輪車が持つ衝突被害軽減ブレーキの技術では防ぐことができないとされています。

 現在の先進安全技術では、ふいに飛び出す歩行者の検知はできても、右折しようとする四輪車が、直進するバイクの衝突を技術的に予測することはできないのです。

 つまり、すべては運転者の判断に委ねられているのですが、残念ながら、人はバイクが四輪車より小さいために、遠く、遅く見える、という目の錯覚を起こしてしまいます。

 ドライバーは「曲がれる」と誤判断してしまうのです。しかし、この右直事故も危険予測で防ぐことができる、と木田氏は語ります。

「この運転者の目の錯覚と、直進するバイクの反応時間をどうカバーしていくか、最低この3つの危険予測はやっていただきたいなっていうのをご紹介します」

(1)構えブレーキの徹底

 交差点に近づいたら加速せず、ブレーキレバーに指をかけたまま進入する。いつでも減速できる状態を保つことで、いざというときの対応時間を短縮できる。

(2)充分な車間距離の確保

 時速40kmなら最低でも車2台分以上(約8m)の車間距離が必要。速度に比例して空走距離も伸びるため、スピードが上がるほど車間を広く取る意識が重要。

(3)早めの減速

 相手は自分に気づいていないかもしれない、という前提で交差点に進入する。減速によって選択肢が増え、判断の余裕が生まれる。

「危険予測って人それぞれなので正解ってないんですよ。これだけは絶対やってほしい、というポイントをお伝えしました」

 木田氏の話は、これだけでは終わりませんでした。

「いつもは一時停止するけど今日は急いでいた」は許されない

 30分の話の中では、四輪車に存在する死角の広さを実感するために、実際のクルマを使った実験も行われました。ライダーがクルマの後方、助手席側、ピラー周辺の側方に立って、ドライバーから見えるかを問います。

 止まっている状態でも、死角は想像以上に広く、視界が確保できない場合は、運転者自身が移動する方向に首を振るなどして、確認することが必要であることを訴えます。この重要な行為が他車任せにされていることが、事故を誘発します。

 木田氏の語気も強くなります。

「私は事故の結果をすごく見ています。こういう運転がよくできるな、という人をよく目の当たりにします。交通事故を扱っていた時に、よく言われました。『いつもは一時停止しているけど、今日は急いでた』とか。その自分本位の運転、よそ見してました、居眠りしてました、スマホを見てました……それって全部防げることなんです。事故を起こしたら、そんな理由は通らないんですよ。防げる事故で失われる命を、私は本当になくしていきたいと思っています」

法規走行に立ち会うのは、運転免許試験の担当でもある警察官。厳しい目が向けられる
法規走行に立ち会うのは、運転免許試験の担当でもある警察官。厳しい目が向けられる

 木田氏はライダーに訴えます。

「本当に皆さん、バイクといういい乗りものに乗っていると思うんです。私も白バイに乗ってて、いい乗りものだと思います。ただ、皆さんは四輪車と違って鉄の塊で覆われてないですよね。だからもうその命の大切さっていうのを改めて考え直していただいて、今日の帰りからでも、構え、ブレーキ、車間距離を取る、早めの減速! それで少しでも事故が減らせたら本当に嬉しいと思います。災害、病気、生きたくても生きられない状況と比べれば、交通事故は簡単に防ぐことができる。交通事故は絶対に防ぐことができるのです」

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Writer: 中島みなみ

1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。

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