じつは少数派!? 忘れたころに登場するレーシーでお洒落な「ロケットカウル」を装備するバイクとは
バイクのカフェレーサー系のカスタムで目にする「ロケットカウル」は、現代的なレーシングマシンとは異なりどこかレトロな佇まいが魅力で、多くはありませんがメーカー純正のロケットカウル装備車も人気です。
レーシングマシンを模したカスタムが源流
バイクには様々なカテゴリーがありますが、オンロードモデルの中ではクラシカルかつスポーティな「カフェレーサー」も根強い人気があります。低いセパレートハンドルや後退したステップ、シングルシートなどのスタイルが特徴で、「ロケットカウル」を装着するバイクも少なくありません。
読んで字のごとく、ロケットのように尖った形状のカウル(Cowl=覆い)ですが、元々は1950~1960年代頃のロードレース用のレーシングマシンが装備していたカウリングが源流で、それを市販車のカスタム、いわゆるカフェレーサーに取り入れたと言われます。
当時の本格的なレーシングマシンは、すでに空力性能を考慮したエンジンまで覆うフルカウルが主流でした。しかし市販レーサー(プロダンクションレーサー)や市販車ベースのレーシングマシンには、エンジン剥き出しのハーフカウル状のロケットカウルを装備するパターンもあったようです。

たとえば英国のノートンは、1971年にノートンコマンド750プロダクションレーサーを発売しますが、ハーフタイプのロケットカウルを装備していました。
またイタリアのドゥカティは、1972年のイモラ200マイルレースにおいて、このレースのために開発した「750 Imola Desmo」で劇的な勝利を遂げました。そして翌1973年に、通称「イモラ・レプリカ」と呼ばれる「750 Super Sport Desmo(750SS)」を発売します。ベースとなったレ―リングマシンはフルカウルでしたが、市販車ではハーフタイプのロケットカウルでした。
「750SS」は限定モデルでしたが、1975年に同スタイルで排気量を拡大した「900SS」を発売します。この頃から、ロケットカウルはカフェレーサーのカスタムでも人気が高まりました
ちなみに、ドゥカティは1978年のマン島TTレースで優勝したことを記念して、ライダーの名を冠した「900マイク・へイルウッド・レプリカ」を発売し、こちらはレーシングマシン同様にフルカウルを装備していました。
日本でも純正ロケットカウル装備車が登場
レトロなカフェレーサーのカスタムで人気を得たロケットカウルは、日本メーカーも採用しました。代表的なのがホンダ「GB400TT(ツーリストトロフィー) MKII」(1985年)でしょう。1960年代にマン島TTなどで活躍した英国車をモチーフに、空冷単気筒エンジンを搭載したクラシカルなスタイルの「GB400」の派生モデルとして登場しました。

またスズキは、1989年に美しいパイプワークのフレームに4気筒エンジンを搭載するネイキッドスタイルの「バンディット400/250」を発売し、翌1990年にロケットカウルを装備した「バンディット400リミテッド/250リミテッド」をラインナップします。
それまでロケットカウルと言えば、英国旧車風のカスタムやカフェレーサーと相場が決まっていましたが、4気筒+ロケットカウルは新時代を感じさせるスタイルでした。
それから30年余り、国内メーカーのロケットカウル装備車は存在しませんでしたが、ホンダが2022年にロケットカウルを装備する「ホーク11」を発売しました。このロケットカウルは継ぎ目の無い美しいスタイルを生み出すために、一般的なABS樹脂の成型ではなく、FRP(繊維強化プラスチック)の一体成型で作られているのが特徴です。
海外は新世代のロケットカウルを模索
ロケットカウルは元々は欧州のレースやカフェレーサーから人気となりましたが、メーカーの純正装備だと前出のドゥカティ「900SS」や、同じくイタリアのラベルダの旧車などを除けば、意外なことに海外メーカーでは長らく存在ませんでした。
しかしドゥカティが2000年に、かつてのマイク・ヘイルウッド・レプリカをリスペクトした「MH900e」を発売し、ロケットカウルと燃料タンクが連続した面で構成する意匠が、21世紀のネオクラシックを感じさせました。

さらに2006年には「スポーツクラシック」と銘打ち、ロケットカウル装備の「ポールスマート1000LE」と「スポーツ1000S」を発売します。車名の「ポールスマート」は、1972年のイモラ200マイルレースでドゥカティに勝利をもたらした優勝ライダーの選手名です(LEはリミテッド・エディションの意)。
フレームや外装パーツのカラーリングから、1973年のイモラ・レプリカこと「750 Super Sport Desmo」をオマージュしていると思われます。
この2台も登場から20年ほど経過していますが、2026年2月にアーバンカフェレーサーというコンセプトで「Formula 73(フォーミュラ73)」を世界限定873台で発売すると発表しました。
このモデルも一見して1973年の「750 Super Sport Desmo」を現代的な解釈で構築したと分かります。いわゆる旧車的なカフェレーサーとは趣が異なりますが、これもロケットカウルの新形態と言えるのではないでしょうか。
他にも欧州メーカーでは、モトグッツィが2014~2015年にロケットカウル装備の「V7 Racer limited Edition」をリリース。またBMW Motorradは2017年からヘリテイジシリーズの「R nineT」シリーズにロケットカウル装備の「R nineT Racer」をラインナップしました。この辺りは世界的なカフェレーサー人気に呼応したものでしょう。
そしてカフェレーサーで外せないのが、英国のトライアンフです。2気筒のモダンクラシックシリーズに近年までラインナップされていた「THRUXTON 1200」には、純正アクセサリーでロケットカウルが用意されていました。中古車検索サイトなどでは、ロケットカウル装備車が数多くヒットします。

また3気筒スポーツの「スピードトリプル」シリーズには、2022年にロケットカウル装備の「SPEED TRRIPLE 1200 RR」がラインナップされました。
そして2026年の最新モデルとして「THRUXTON 400」が登場します。こちらはモダンスポーツシリーズの「SPEED 400」をベースに、かつての「THRUXTON」に通じるカフェレーサーのスタイルと、「SPEED TRRIPLE 1200 RR」の流れを汲むロケットカウルを装備しており、普通自動二輪車免許で乗れるのも大きなメリットです。
旧来からのロケットカウルは現在ではカスタムアイテムとなっていますが、ドゥカティ「Formula 73」やトライアンフ「THRUXTON 400」のように、現代風にアレンジされたロケットカウルを標準装備するモデルも存在します。
少数派ではありますが、独自のスタイルを楽しめるロケットカウルに魅力を感じるファンも多く、今後どのようなスタイルのバイクが登場するのか、期待は膨らみます。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。


















