あらゆるサイズに合わせられる「モンキーレンチ」 1本あると便利だけど“万能”ではない!?
ボルトやナットには様々なサイズがあるので、メンテナンスやカスタムに、それぞれのサイズに合った工具を揃えるのはけっこう大変です。それをひとつでこなせる万能工具が「モンキーレンチ」……というワケでもなさそうです。
「猿の横顔」に似ているから「モンキーレンチ」
バイクに限らず、機械類の整備でメジャーな工具のひとつに「モンキーレンチ」があります。
一般的なスパナやメガネレンチは、ボルトやナットのサイズ(二面幅)に合ったモノを、それこそボルトやナットの種類に合わせて用意しないと作業ができません。
しかしモンキーレンチは「ウォーム」と呼ばれるネジを回すことで二面幅を調整できるので、様々なサイズのボルトやナットを回すことができて便利に感じます。
英語だと「調整式レンチ」という意味で「アジャスタブルレンチ」と呼ぶことが多いですが、工具の形が「猿の横顔」に似ていることからモンキーレンチと呼ばれるようになったそうです。
ちなみに日本のJIS規格では「モンキレンチ」という呼称になっています。
便利そうだけど、いまどきは……
モンキーレンチは「二面幅を自由に調整できるので便利」ですが、近年のバイク(1990年代後半くらいから?)だと、従来の六角ボルトではなく、「六角穴付きボルト」、いわゆる「キャップスクリュー」が各所に使われるようになったので、モンキーレンチの出番は減ったように感じます。

とはいえ、ナットは従来通りの六角形です。またホイールの車軸(アクスルシャフト)などには大きなサイズのナットが使われており、車種によってけっこうサイズが異なるため、ホイールを着脱する際にモンキーレンチは便利な存在といえます……が、「意外と使い方が難しい」ということを知っておいた方が良いでしょう。
ボルトやナットを傷めたり、外れてケガすることも……
まず一般的なスパナとメガネレンチの場合ですが、口の開いたスパナは作業時に外れる危険がありますが、メガネレンチはその心配が少ないです。
またスパナはボルトやナットを2点で捉えますが、メガネレンチは6点でとらえるので、力が入りやすいうえに、ボルトやナットの頭の角を傷めにくいメリットがあります。
そのため、口の開いたスパナでないと回せない場所(例えばネイキッド車のミラーをハンドルのホルダーに締め付けているナット)を除けば、基本的にメガネレンチを使うのがセオリーです。
そしてモンキーレンチですが、スパナのように口が開いているのでボルトやナットを2点でとらえており、やはり作業時に外れる危険もあります。
そこで作業時には、まずウォームを調整して、上アゴと下アゴをボルトやナットの二面にピッタリと接触させることが重要です。ここで少しでも隙間があると、ボルトやナットの頭の角を傷めてしまったり、ともすれば作業時に外れてケガをする危険があります。
そして緩めるときも締めるときも、やはり外れる危険を減らすために、下アゴの方向に回すのが決まりです。

……と、文字にすれば簡単、というか「隙間なくピッタリに」と言われると「そんなの当然だろ!」と感じるかもしれません。
ところが実際に作業すると、ウォームで上アゴと下アゴをピッタリと接触させると、(作業スペース的にレンチの振り幅が無いときなど)モンキーレンチを差し替えようとした時に、ともすればボルトやナットを噛み込むような感じになって抜けなかったりします。
もちろんそんなときは、ウォームを回してアゴを緩めれば良いだけです。
つまり、締める際も緩める際も「ウォーム調整(アゴを閉じる)→レンチを振る→ウォーム調整(アゴを少し緩める)→レンチを差し替える→ウォーム調整(アゴを閉じる)→レンチを振る……」を繰り返す必要があります。
これがけっこう面倒で、ともするとアゴが少し緩い状態のままで作業しがちになります。するとボルトやナットの角を傷めたり……以下同文、という感じです。
様々なサイズに対応できるモンキーレンチですが、万能工具というよりも、サイズの合うスパナやメガネレンチが無い時の「代替工具」、と捉えた方が良いかもしれません。
モンキーレンチを1本持っていると便利ですが、相応に頻繁に使うサイズなら、スパナかメガネの入手をオススメします。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。








