ヨーロッパで一般的な「3輪スクーター」 日本では普及が進まない理由とは?

ヨーロッパの街では当たり前のように見かける前2輪・後1輪の3輪スクーター。日本ではヤマハ「トリシティ」シリーズがその代表格ですが、海外のように広く普及していくのでしょうか?

日本で前2輪・後1輪の「3輪スクーター」の存在感は?

 ヨーロッパ、とくにフランスやイタリアに行くと、前2輪・後1輪の3輪スクーターが市街地の移動手段として、とても普及していることを実感します。場所によっては停まっているバイクのほとんどが3輪スクーター、ということも珍しくありません。

EICMA 2018で公開されたピアッジオの最新型「MP3 300 hpe」

 3輪スクーターの先駆けはイタリアのピアッジオ「MP3」シリーズ(2006年から)で、日本のヤマハも「トリシティ」(2013年発表)で追随しました。これにより、「LMW(リーニング・マルチ・ホイール)」の市場が一気に広まるかに思われましたが、まだまだシェア拡大の余地はありそうです。

 ヨーロッパでここまで3輪スクーターが普及したのはなぜなのか? 「PMV(パーソナル・モビリティ・ビークル)」の研究者で、ご自身もMP3に乗られている名古屋大学未来社会創造機構・客員教授、日本大学生産工学部・上席研究員の原口哲之理先生にお話しをうかがいました。

───3輪スクーターがヨーロッパで普及しているのはなぜなのでしょうか?

 普及が進んだ理由はいくつかあります。ひとつは、前輪が滑ったら即転倒につながるバイクに対して、前2輪にすることでダブルセキュリティとなり、横滑りに強くなります。これにより、石畳など路面状況の悪い道路が多いヨーロッパのニーズにマッチしたことです。

 また、そもそもバイクですから、渋滞対策や駐車スペース問題が解決できる点です。

 それにスクーターはスーツ姿で通勤に使うビジネスマンも多く、それを見た人たちは、雨でも真冬でも渋滞対策になり、駐車スペースが節約できる乗りものとして、温かく見守る文化ができたのでしょう。

 さらに、バイク用の駐車場所が増えて利便性も高まったことなど、普及していった背景には十分な要因が揃っていると思います。

EICMA 2018でヤマハが発表した排気量300ccの3輪スクーターのプロトタイプ「3CT」

───今後、日本では3輪スクーターがもっと普及していくのでしょうか?

 まず現状そこまで普及していない理由は、バイクそのものが社会から“いじめられている”状況だからだと思うんですよね。

 それまで黙認されていた路上駐車が厳しく取り締まられることになりましたが、合法的に停められる駐車スペースが劇的に増えたわけではないのが大きいと思います。

 そして現在普及している3輪スクーターはハンドリングが“鈍”ですから、趣味のバイクにはあまり向かないんです。日本のバイク文化は「趣味」か、配達など「実用」かのどちらかしかない。その中央にある「日常のバイク」の分野が欠けています。その点が解消されれば、バイク全体としてもっと普及するでしょうし、その選択肢のひとつとして、3輪スクーターも普及していくと思います。

【了】

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Writer: 小林ゆき(モーターサイクルジャーナリスト)

モーターサイクルジャーナリスト・ライダーとして、メディアへの出演や寄稿など精力的に活動中。バイクで日本一周、海外ツーリング経験も豊富。二輪専門誌「クラブマン」元編集部員。レースはライダーのほか、鈴鹿8耐ではチーム監督として参戦経験も。世界最古の公道バイクレース・マン島TTレースへは1996年から通い続けている。

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