熱中症の予防には十分な睡眠と十分水分補給しましょう!! ~ツーリング時の熱中症対策Vol.3~

炎天下のツーリングで熱中症は気になるところ。熱中症予防は如何にすればよいのでしょうか?事前の予防方法から休息時の対処方法まで解説します。

『熱中症の予防法』

 バイクの運転には高い集中力が必要です。しかし乗っている期間が長くなってくると、“慣れ”も手伝ってそれも忘れがち。長距離のツーリングでは、思った以上に疲れているのに、自分では気がつかないことがあります。特に夏場は、照りつける太陽や気温の上昇、エンジン熱や車からの排熱で発汗し、体力が奪われていきます。そんな時に襲ってくるのが「熱中症」です。

 これまで、熱中症の症状とその対応について解説してきましたが、今回は「予防」の観点で話を進めて行きます。

鈴鹿8耐レース前に各ライダーは十分水分補給を行います(Kawasaki Racing Team)

【十分な睡眠を取る】

 睡眠不足は、それだけで集中力と体力の低下をもたらします。ツーリング前には、十分な睡眠をとるようにしてください。必要な睡眠時間は個人差があるので何とも言えませんが、「疲れが取れた」と感じるくらいの睡眠を取るように心がけてください。

 しかし、単に長い時間寝ればいいというものではありません。重要なのは、その“質”です。良質の睡眠を取るには、就寝直前に食事をしないことが大切です。直前に食事を取ると、胃腸が食物の消化や吸収のために働いて、睡眠の質を低下させます。特に肉や脂質の多いものを食べると、胃腸への負担も増えてしまいます。ツーリング前日は、寝る時間の2~3時間前には食事を終えるようにしてください。

十分な睡眠を取る

 また睡眠は、単に体力を回復させるだけではなく、人間の体の機能を司る「自律神経」の働きを整える役目もしています。自律神経のバランスが崩れると、代謝機能が悪くなって熱中症になりやすくなります。

【前日の飲酒を控える】

 お酒を飲むと眠くなります。しかし、アルコールの影響による眠気は、実は神経が麻痺しているだけ。つまり、昏睡状態にあるのと同じです。人の体が本来必要とする睡眠とは違い、脳や体が休まっているわけではないのです。睡眠が浅くなってしまいます。

ツーリング前日の飲酒は控えましょう

 また、アルコールは体内の水分の排出を促進します。体内の水分量が少ないまま、炎天下のツーリングに出てしまうと、それだけで熱中症のリスクが高まるのです。体内にアルコールが残ったままの二日酔いの状態で運転するのはもっての外ですが、バイクに乗る前日の飲酒はできるだけ控えてください。

【カフェインの摂取を控える】

 コーヒーや紅茶、日本茶、そしてエナジードリンクなどに含まれるカフェインは、神経を興奮させる効果があります。しかし、同時に「利尿効果」も持っています。寝る前に飲めば脳が興奮して眠りが浅くなりますし、就寝中に尿意を感じて起きることになり、睡眠不足になる可能性もあります。

 また、ツーリング中に水分補給のつもりでカフェインを含んだ飲料を飲んでしまうと、同じく利尿効果で脱水を進行させてしまいます。

【走り出す前に十分な水分補給を】

走行前や休憩時に水分補給は常に行いましょう

 バイクは走行中に水分補給することが難しい乗り物です。気温が高い日に乗るときには、走り出す前に十分な水分補給をしておく必要があります。その際には前項で書いたように、カフェイン入りの飲料は避けてください。ミネラルウォーターやスポーツドリンク、経口補水液などを利用するといいでしょう。ミネラルウォーターの場合は少量の塩、水1リットルに対して1~2グラムを入れて飲むことが有効です。

【休息時の水分補給】

 ツーリング中の休息時は、上記の飲み物のほかに糖質が多い、果汁飲料なども利用するといいでしょう。糖質は体を動かすエネルギーです。ライディングで失われたエネルギーの補給になります。ゼリー飲料なども水分と一緒に失われた栄養を補給することができます。

走行前水分補給を行う#33 Red Bull Honda 高橋巧選手

 人の体は、成人男性で60%、女性で55%を水分が占めています。血液をはじめ、リンパ液や細胞内や内臓に溜められているのです。そして暑いところで活動すると、皮膚の血管を広げて血流量を増やし、汗をかくことで体温調整をします。つまり、体はラジエターの役割を担っているのです。

 そして、水分の約2%が失われると喉の渇きを覚えて運動能力が低下します。さらに3%なくなると、強い喉の渇きや意識がぼんやりする、食欲不振などが起こります。4~5%失われると、頭痛やめまいなど、いわゆる脱水症状があらわれてきます。それが熱中症の症状の一部です。できれば、喉の渇きを感じる前に水分の補給をするようにしてください。

 水分が不足することによって、各臓器が必要とする栄養や酸素が運ばれなくなり、症状が出るのです。8~10%が失われると、死亡する危険さえあります。夏のツーリングに出るときには、前日から十分に体調を整え、事前の水分補給と小まめな休息、そして水分補給を心がけるようにしてください。

【了】

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