女性ライダーが挑むドラッグレース最速の座 クラス優勝を目指したその軌跡に迫る~前編~

0-400mの直線で競われるドラッグレースは、米国で高い人気を誇るモータースポーツの一つです。この記事ではそんな競技に挑む女性ライダー大杉夕奈さんの挑戦を追ってみました。

5年目の参戦で初の年間クラス優勝を目指す

 大杉夕奈さんは、神戸のハーレーカスタムショップ「SHIUN CRAFT WORKS(シウン・クラフトワークス)」で事務の仕事をしながら、VDA(V-Twin Drag race Association)というハーレー・ダビッドソンとビューエル(ハーレー製のエンジンを搭載したスポーツバイクメーカー)のみで年間4戦行われるドラッグレース(400mでの最速を競うレース)にこの5年間参戦し続けています。

ドラッグレースに参戦する大杉夕奈さんのマシン「BRAIN SHAKER」号

 大杉夕奈さんは2019年、岡山県笠岡ふれあい空港で開催された第2戦で初めて参加クラス(STOCK STREET/吸排気のみモデファイ制限なし)で念願の初優勝を果たしました。

 しかし第3戦は勤務先のSHIUN CRAFT WORKSも実行委員に名を連ねる、関西最大のカスタムイベント「ニューオーダーチョッパーショー」と同日の8月18日。通常なら夕奈さんもスタッフとして参加するのが当然です。

神戸市にあるカスタムショップ「シウンクラフトワークス」

 しかし初優勝を手にした夕奈さんはボスの松村さんに直談判。松村さんはVDAはもちろん、2017年にはアメリカで行われた「ボンネビル・モーターサイクル・スピードトライアル」(最高速に挑む伝統あるレース)に参戦するなど、レーシングライダーとしても大先輩。
 
 レースに魅了された者同士、彼女のチャレンジを認め応援してくれたのでした。とはいえ、松村さんたちはレース前日の17日はショー会場への搬入、翌18日はイベント運営があります。夕奈さんのレースを手伝える人は誰もいません。かくして、夕奈さん一人でのドラッグレース参戦が決定したのです。

男性、女性と関係なく、「最速」が1位

 0―400m、たった11秒だけの「非現実」。トルク、スピード、煙、音、におい、振動……ドラッグレースにはスタートラインに立って、走りきった人にしか味わえない世界が広がっています。もっと速く、速く……0.001秒で順位が変わるこのレース、5年かけてやっと掴めるかもしれない年間の総合優勝が見えた今、夕奈さんはこのチャンスを逃したくなかったのです。

 今年から自分でマシンセッティングもするようになり、格段にタイムが伸びたと夕奈さんは言いますが、今回も営業が終わった後、一人黙々とレース準備に取り掛かります。

公道仕様のバイクをレース仕様へ。作業はすべて自分で行います

 体を固定するために手作りしたパットをシートに装着し、灯火類やマフラーのサイレンサーを外します。シフトレバーの調整、ポジションの確認など、時折ボスの松村さんのアドバイスを受けながら、手際よく作業を進めます。

 最後に仕上がった車両にまたがり、シフトチェンジのイメージトレーニング。その真剣な眼差しは、今まだ遠い、富士スピードウェイのホームストレートの400m先を見据えます。

たくさんの仲間の援護を受け、いざ決戦の地へ

 出発前夜、SHIUN CRAFT WORKSでは「ニューオーダーチョッパーショー」に展示するショーバイクの仕上げの真っ只中。その合間を縫い夕奈さんの車両の積み込みが行われます。夫の利平さん、友人の修平さんも手伝いに来てくれました。現地ではレース仲間がバイクを下ろすのを手伝ってくれる予定。参戦は一人かもしれませんが、たくさんの仲間の想いが彼女を援護しています。

搬入前夜のショーバイク。怒涛の追い込みで仕上げにかかる

 利平さん、修平さんはニューオーダーチョッパーショーのスタッフのため翌朝早く夕奈さんをお見送り。さあ、「BRAIN SHAKER」(脳振とう)と名付けられた相棒FXDXスーパーグライドスポーツといざ決戦の地、富士スピードウェイへ。最速への挑戦がいよいよ始まりました。

ドラッグレース挑む女性ライダーの軌跡

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