人気のサイドカークラスが中止に 【マン島TTレース2026】現地では何が起きているのか?

1周約60kmの公道を使用して行われる、現存する世界最古の公道バイクレース「マン島TTレース(Isle of Man TT Races)」が2026年も開催されました。今年は期間中に、サイドカーTTレースが中止となりました。

公道サイドカーレースとして高い人気を維持

 なんとも残念なニュースが飛び込んできました。2026年も開催された世界最古の公道レースとして知られる「マン島TTレース(Isle of Man TT Races)」(以下、TTレース)で、サイドカーTTクラスの以降の予選および決勝をすべて中止することを主催者が発表しました(5月28日)。

 今回の中止判断には、予選3日目に有力チームであるクロウ兄弟組がクラッシュしたことが大きく影響したとみられます。

 目撃情報によれば、車体が浮き上がりひっくり返る事故でした。

マシンがまくれて横転してしまったクロウ兄弟チーム。新たなる若手トップスターだっただけに、怪我の回復を祈りたい(写真/小林ゆき)
マシンがまくれて横転してしまったクロウ兄弟チーム。新たなる若手トップスターだっただけに、怪我の回復を祈りたい(写真/小林ゆき)

 マン島のサイドカークラスは今年、最高速度抑制を目的に吸気リストリクターを導入。安全性向上と性能の均衡化が期待されていましたが、結果的に各チームはレギュレーションの範囲内でカウルの空力特性を向上するための形状変更や、車体の軽量化などを進めました。

 事故原因は現時点で明らかになっていませんが、車両構成や技術規則との関連性を含めた検証が必要と判断された可能性があります。TTウィーク期間中にレギュレーションを見直すことは現実的ではなく、主催者は残るセッションの中止を決断したものとみられます。

 主催者によれば、「サイドカークラスのイベントへの継続的な開催について評価するため、直ちに技術的および運営上の見直しを開始した」とのこと。

 マン島のサイドカーレースは1923年に始まり、1926年に中断しますが、第2次世界大戦後は1954年からソロ(2輪クラス)と同様、世界グランプリ選手権シリーズの1戦として開催されてきました。

 世界グランプリから外れてからも、世界最長の公道サイドカーレースとして高い人気を維持しており、特にサイドカーレースが盛んなヨーロッパ大陸からのエントリーが多いクラスです。

 TTレースのエンジンのレギュレーションは何度か変更されていますが、それまでの750ccや1000ccクラスだったF1カテゴリーから、現在は速度抑制の観点から、600ccエンジンを中心としたF2カテゴリーで競われています。

マン島TTレース、プラクティス初日の走行直前のサイドカー。残念ながら、今年のサイドカーTTレースは中止になってしまった(写真/小林ゆき)
マン島TTレース、プラクティス初日の走行直前のサイドカー。残念ながら、今年のサイドカーTTレースは中止になってしまった(写真/小林ゆき)

 コロナ禍によるTTレース中断から再開された2022年には、同じ場所で2回のクラッシュにより合計4人が死亡しました。これを受け、翌年から2輪クラスも含めて事前のカンファレンス等で安全についての周知を強化したほか、デジタルフラッグシステム(コントロールタワーの判断を従来より迅速にコースへ反映できる)、マーシャルの事前教育の強化、無線システムの強化など、毎年、安全性向上のための施策が実施されてきました。

 そして今年、開催に先駆けてTTレースの主催者は「BUILDING FOR THE FUTURE(未来への構築):TTレースはいかに進化を続けてきたか」という声明を発表しました。

 ポール・フィリップス氏(マン島TTレース・モータースポーツ部門責任者)によれば、「マン島TTレースは常に特別な存在であり続けてきましたが、その未来を守るためには、現状維持が選択肢ではないことを認識する必要があります。近年、私たちはTTレースの特別な要素を変えるのではなく、現代のグローバルな環境の中でTTレースが繁栄し続けるために、イベントを取り巻くシステム、構造、基準の強化に尽力してきました。重点的に継続的な改善、プロ意識の向上、そしてTTレースの持続可能な未来の構築をしていきます」と述べています。

 2022年には有料ライブ配信サービスも開始され、コロナ禍以降のTTレースは従来以上に運営体制の強化が進められている印象があります。

 フランスやベルギー、イタリアなど、マン島やイギリス以外の国からのエントリーも多いサイドカークラス。なんとも残念なニュースではありますが、安全性のさらなる検証と改善を経て、将来的にクラスが復活することを期待したいところです。

 サイドカーのマシンの違いがわかる写真をたっぷり撮影してきましたので、写真も合わせてご覧ください。

【現地画像】独特のフルカウルマシン!! 「マン島TTレース2026」中止となったサイドカークラスを画像で見る(26枚)

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Writer: 小林ゆき(モーターサイクルジャーナリスト)

モーターサイクルジャーナリスト・ライダーとして、メディアへの出演や寄稿など精力的に活動中。バイクで日本一周、海外ツーリング経験も豊富。二輪専門誌「クラブマン」元編集部員。レースはライダーのほか、鈴鹿8耐ではチーム監督として参戦経験も。世界最古の公道バイクレース・マン島TTレースへは1996年から通い続けている。

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