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女性ライダーが挑むドラッグレース最速の座 年間総合優勝を目指したその軌跡に迫る~後編~

0-400mの直線で競われるドラッグレースは、米国で高い人気を誇るモータースポーツの一つです。この記事ではそんな競技に挑む女性ライダー大杉夕奈さんの挑戦を追ってみました。

ドラッグレース年間優勝を目指し戦いを続ける女性ライダー

 日本のモータースポーツ・シーンにはVDA(V-Twin Drag Association)というハーレー・ダビッドソン、そしてビューエル(ハーレー製のエンジンを搭載したスポーツバイクメーカー)のみで行われるドラッグレースがあります。

ドラッグレースに単身で乗り込む大杉夕奈さん。前日入りしたためゆったり準備します

 VDAは東京都杉並区のMAIDS motorcycles(メイズモーターサイクルズ)の斎藤正さんが発起人となり、2012年12月に全国の13店舗の加盟店で発起、今年で7年目を迎えました。現在は9つのクラスが用意されており、年間4ラウンド、計測タイムの早い3戦分のタイムで順位を付けそのポイントを争います。

 神戸のカスタムショップSHIUN CRAFT WORKS (シウン・クラフトワークス)で働く大杉夕奈さんはVDAに参戦して5年目を迎えました。ドラッグレースに魅せられ、着々と成績を上げ、今年の第1戦はわずか0.001秒差で2位、第2戦は念願の初優勝を果たしています。

参戦マシンが一気にコースイン。エキゾーストノートがあちこちで響き渡ります

 しかし第3戦はSHIUN CRAFT WORKSも実行委員に名を連ねる「ニューオーダーチョッパーショー」と同日の8月18日。しかし、優勝するためにはこのラウンドを外せない、とボスの松村さんに直談判。今回は一人きりでの参戦となりました。

 サーキットでは茨城のNAVY’S Custom cycle (ネイビーズカスタムサイクル)の紺野さん、そして昨年まで同じ「STOCK STREET/吸排気のみモデファイ制限なし」で戦った安斎さんがバイクの積み下ろしを手伝います。
 
 さすがに女性一人でハーレー1台(250kgほど)を車から降ろすのは大変ですが、「筋力的にできないことを手伝うのは仲間だから当然ですよ」と、紺野さんは言います。年齢や性別を超え仲間になれるのもレースの魅力の一つかもしれません。

運命のレース本番、果たしてその結果は……

 レースは7時30分より1本目、10時40分より2本目が行われ、計測タイムの早い方が有効となります。その後15時30分よりフリー走行。つまり、この日のレースは事前走行なしの一発勝負です(各レースによって順番は変わります)。

タイヤのグリップを高めるために行うバーンアウト。気持ちがどんどん高まります

 ドラッグレースの醍醐味はやはり音、そしてスピードにあります。走行前、タイヤを空転させ白煙があがる“バーンアウト”は他のレースでは味わうことはできない迫力です。

 夕奈さんの乗る1999年式FXDX(1450cc)は、もともと勤め先のSHIUN CRAFT WORKS がレースのために作った車両で、エンジンは2004年式FXD用が使用されています。以前より車高が高いFXDXのデザインが好きだった夕奈さんは、昨年、思い切って2012年式FXDCからこの車両に乗り換えました。その際大好きな「ビール色」にボディを塗り替え、ビールを飲み干す自身の姿もペイント。見た目もすっかり自分のバイクらしくなりました。

 スタート時間を迎え、いざ1本目のレースに挑みます。自分の思った通りのタイムが出ず、戻るなりキャブレターのメインジェットの番数を落とし、紺野さんにアドバイスを受けプラグをチェック。マシンセッティングの判断を自分でするのも初めての経験でした。
 
 合っているかの確証も持てないまま2本目へ。結果は1本目よりタイムが少し落ち、終わってから車載カメラで撮った動画を見てスタートが良くなかった、と反省しきり。しかし、集計が終わると結局クラス1位。前回に続き2本目の「最速」のトロフィーを手に入れました。

 感想を聞くと「ほっとしました」と一言。その顔はとても嬉しそうです。

 これで優勝するには十分すぎるポイントを得た夕奈さん。でも「勝つこと」ではなく「勝ち抜くこと」が彼女にとっては大切なのだろうな、自分自身がどこまでやれるか、そこに挑戦しているのではないかな、と今回一緒にいて感じました。

 2本走りきった後に降り始めた雨は激しさを増し、ドラッグレースは路面が濡れてしまうと走れないので練習走行は中止。一人っきりのレースチャレンジは無事終了。優勝商品のビールを抱え、夕奈さんは帰路につきました。

神戸で開催された「ニューオーダーチョッパーショー」ビルダーズチョイス(参加したビルダーが選ぶアワード)で1位を獲得したシウンクラフトワークスのチョッパー(撮影:渡辺まこと)

 所変わって神戸で開催された「ニューオーダーチョッパーショー」ではSHIUN CRAFT WORKS の松村さんが搬入前夜に仕上げたショーバイク「Purple Jerry」がビルダーズチョイス(参加したビルダーが選ぶアワード)で1位を獲得したとのニュース。二人揃って1位とは! 出発前夜の握手から、最高の再会を果たせたことでしょう。

【了】

ドラッグレース挑む女性ライダーの軌跡

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