ハーレー・ダビッドソンが生み出した名車「FXSローライダー」 1977年から始まった「ローライダー」の歴史とは

1977年に初代が登場して以来、ハーレー・ダビッドソンのラインナップの中でも根強い人気を持つ『ローライダー』シリーズですが、その歴史はどのようなものだったのでしょうか。

名車「FXS」から始まったローライダーの歴史

 2019年8月末に、32種類のライナップを誇る2020年ニューモデルを発表したハーレー・ダビッドソン社(以下:H-D)ですが、その中で特に注目を集めたのが、待望の復活を遂げた『ローライダーS』でしょう。116年続くH-Dというメーカーの中で、確かにこの『ローライダー』というモデル名は、マニアにとって特別な響きをもって捉えられています。

1977年に登場した初代ローライダー。ガンメタのタンクに描かれた20年代のモデルを彷彿とさせるレタリングはウイリーGのコダワリとのこと。ロッカーカバーやプライマリーカバーなどに施されたペイントも初期型の特徴です(写真は本国仕様車)

『ローライダー』の初代モデル、ショベルヘッド搭載の『FXSローライダー』が登場したのは1977年のことです。H-Dの王道である『FL』系モデルにスポーツスター『XL』系モデルのフロント周りを掛け合わせた『FX』モデルは、すでに1971年登場の『スーパーグライド』から歴史の一歩を踏み出しているのですが、それをよりゴージャスにした『FXSローライダー』は、当時のマニアたちに熱狂的に迎え入れられたといわれています。

 そんな時代をオンタイムで知り、『FXSローライダー』を所有していた過去を持つ東京都八王子のショップ“テイスト・コンセプト・モーターサイクル”の河内山智(アキラ)氏に、このモデルについて伺ったところ、彼曰く「新しさを求めたH-Dというメーカーの姿勢が如実に表れたモデルがローライダーだった」と、その当時を振り返ります。

 日本車がまだスポークホイールのみだった頃(日本で自動二輪車用軽合金ホイール技術基準の認可が降りたのは1978年4月1日)に市販車で採用されたキャストホイールやフロントにダブル、リアにシングルで装備されたディスクブレーキ、角型のスイングアームや純正で備えられたロックハート製オイルクーラーなど、確かに当時として豪華な装備の数々が『ローライダー』には与えられていたのですが、その中で『スーパーグライド』との大きな違いが2インチ延長されたフロントフォークでしょう。

 巷では『スーパーグライド』と『ローライダー』のフレームはネック角が違うと言われていますが、河内山氏によると、実際に両車のフレームの実寸を比較してみるとネック角に相違点は感じないとのことで、おそらくは「フォーク長の違いによるキャスターアングルの差が『ネックの角度の違い』として認識されているのではないか」といいます。

 確かに短いフロントフォークなら必然的にネックが立ち、その逆は寝るということを考えれば、この説は合点がいくものです。ちなみに初代ローライダーではフレームのネック角は30度、キャスター角は34度といわれています。
 
 また、純正で装備されたホースバックライディングを実現するハイウェイ・ペグ(巡航時に足を前になげだして載せられるステップ)やオプションとして用意されたシッシーバー(パッセンジャー用の背もたれ)も、まさに『ファクトリー・チョッパー』というムードを強調するものです。

ショベルからEVO、そしてツインカムへと受け継がれた『ローライダー』ブランド

 H-D社のデザイナーであり、創始者直系の孫にあたる、かのウイリーGダビッドソンが生み出した傑作である『ローライダー』は、その後、1979年には74cu-in(1200cc)と80cu-in(1340cc)の異なる排気量が同年にリリースされ、1981年には排気量を80cu-inに統一。初代のドラッグバーはプルバックハンドルに変更され、よりチョッパーらしい仕様となるのですが、83年からはモデルの型式名称が『FXSB』にチェンジ。

1979年には74cu-in(1200cc)と80cu-in(1340cc)の異なる排気量が同年にリリースされたFXS『ローライダー』。1981年には排気量を80cu-inに統一しています(写真は本国仕様車)

 1984年にオールアルミ製エンジンのエボリューションを搭載したソフテイルが登場した際は、ショベルヘッドも同時に販売されていたのですが、翌85年は1年間のみショベル時代と同様の『4速フレーム』にエボリューション・モーターを搭載した『FXSBローライダー』をリリース。このモデルは現在の中古市場でもあまり見かけることのない希少なモデルとなっています。

 1986年になると『ローライダー』のフレームはラバーを介してエンジンをマウントする「FXR」に移行するのですが、H-D社は、レギュラーモデルである『FXRSローライダー』の他、前後サスペンションを延長しストローク量を稼いだ上で、ハンドルのセンター部にメーター類をマウントした『FXRS-SPローライダー・スポーツエディション』も販売。

メーターダッシュを持たないプレーンなデザインのタンクやフロントの21インチホイールが特徴的な1987FXLRローライダー・カスタム。その名のとおりチョッパーライクな雰囲気を強調します(写真は本国仕様車)

 1987年にはそのバリエーションを広げ、フロントに21インチ・ホイール、リアにディッシュホイールを装備した『FXLRローライダーカスタム』が登場することになります。ちなみにこの時代、『FXRSローライダー』は『FXRスーパーグライド』と同じくスポークホイールとなっており、『キャストホイール=ローライダー』という方程式は消滅。エンジンのクロームパーツの有無やシート形状がスーパーグライドとの相違点になっています。

 また90年にはダイナシリーズの限定モデルとして『FXSBダイナ・スタージス』が登場し、その流れから1992年には『ローライダー』もダイナシリーズの『FXDL(ダイナ・ローライダー)』に移行しました。

1999年当時の最新エンジンTC88は、先行してダイナシリーズに搭載。サス・ストロークを伸ばした『FXDX』は『ダイナ・スーパーグライド・スポーツ』となり、『ローライダー』は『FXDL』のみになります(写真は2003年の100周年記念モデル/本国仕様車)

 1999年にはダイナで先行採用されたツインカムモーター搭載の『ダイナローライダー』が誕生し、その流れは2007年に排気量がそれまでの88cu-in(1450cc)から96cu-in(1573cc)インジェクション仕様に変更された後も継続されました。2014年にローライダーの血統は一度途切れますが、2015年モデルからは再びその歴史を刻んでいます。

 さらに2016年には、1801ccのスクリーミン・イーグル・110モーターを搭載した『FXDLS ローライダーS』が登場し、高い人気を博したのも記憶に新しいところでしょう。

カスタム・シーンとの連鎖で生まれた「FXシリーズ」

 ちなみにFL系の車体にスポーツスター系のフロントフォークを移植する手法は、そもそもユーザー間で行われていたもので、当時の「チョッパー」や「カスタム」の世界が「FX系」モデルを生み出した由来となることは容易に想像出来るでしょう。

 また、アウトローバイカーたちが走らせる『クラブ・スタイル』のカスタムバイクを参考に生み出されたミルウォーキーエイト搭載の『ローライダーS』2020年モデルにも、同様の理念が感じ取れます。奇しくも新型のローライダーSのガソリンタンクにあしらわれたレタリングも初代ローライダーと同じものです。

ソフテイルシャシー使用した『FXDLS ローライダーS』2020年モデル

 ここまで駆け足で『ローライダー』の系譜について書かせて頂きましたが、改めて感じるのが『カスタムの世界』と『マニュファクチャーたるメーカー』の連鎖こそが、刺激のある魅力的なモデルを生み出すということです。「FX系」モデルの生い立ちに代表される過去の歴史が、そんな事実を証明しているのではないでしょうか。 

【了】

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Writer: 渡辺まこと

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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