熟成された「アフリカツイン」の魅力! ホンダ「CRF1000LアフリカツインDCT」再考

2016年に新登場となったホンダ「CRF1000Lアフリカツイン」は、冒険ラリーのイメージを背負い大型アドベンチャーツアラーとなって現行モデルに復帰しました。次期新型登場を前に、その魅力をおさらいします。

大型オフロードモデルに搭載されたDCTの恩恵たるや!

 2019年10月にホンダ新型「CRF1100Lアフリカツイン」の発売日が発表されました。このタイミングで、現行モデル(2018年発表)としてはもっとも熟成の進んだ「CRF1000Lアフリカツイン」の乗り味を、復習の意味を込めてお届けします。試乗したのはDCT(Dual Clutch Transmission)搭載モデルです。

ホンダ「CRF1000L Africa Twin(DCT)」に試乗する筆者(松井勉)

「アフリカツイン」の生い立ちは、冒険ラリーを父に、舗装路と未舗装路を母に持つ冒険ツアラーであり、どんな道でも楽しみ尽くせるよう、場面を問わない高い次元での走行性能をパッケージしているのがアフリカツインの伝統です。

 車体で見ると、前輪に21インチ、後輪に18インチのスポークホイールを採用しています。さらに前230mm、後220mmという長いサスペンションストロークを持たせることで、最低地上高250mmと、オフロードでの高い走破性を確保しています。

 この性能を維持しながら、舗装路での高い俊敏性を融合させるためにフレーム剛性のバランス作りに細心の注意を払い設計されたのも特徴で、例えばツーリング先で気持ちよい峠道を走ったとしても、ロードバイクに遅れを取ることなどありません。

 私(松井勉)の経験では、ホンダのV4エンジンを搭載した「VFR1200クロスツアラー」の舗装路性能と同等以上という印象で、つまりは相当なものです。

 VFRはよりオンロードに有利とされる前19インチ、後17インチタイヤの装着や、エンジンスペック的にも一枚上手です。とくにハイペースなコーナーで全くひけを取らないことに感心したものです。

2019年10月生産終了モデルでグリントウェーブブルーメタリックを主体色としたトリコロールを新採用。コンパクトで角度の起きた形状のウインドスクリーンは「CRF450 RALLY」由来

 また、現代のラリーマシン「CRF450 RALLY」の開発で手にした技術をフィードバックした空力性能は、アフリカツインの比較的コンパクトなスクリーンにも活かされており、ライダーへの走行風圧を弱めることはもちろん、空気の渦の発生も低減させ、ライダーのヘルメットが揺すられることもありません。これは長距離移動で非常に有利です。

 身長183cmの私が跨がると、850mm/870mmと低高段階に調整できるシートを高い方に合わせても、十分な足つき性があります。ふくらはぎとステップが干渉する面もありますが、慣れの範疇だと思います。ハンドルバー、ステップで作るポジションは大柄なバイクにもかかわらずコンパクトな印象で、直感的に乗りこなせる、という気持ちにさせてくれます。

 エンジンは鼓動感を持ちながらも振動は小さく、アクセルに対するレスポンスも良いため、始動直後から“走り”を予感させます。

 右手ハンドルスイッチのDCTボタンをニュートラルからDにシフトすれば、あとはアクセルを開けるだけでするりと巨体が動き出します。DCTに乗って毎度思うのは、クラッチ操作やシフト操作をバイク任せにできることで、ブレーキングやコーナリング、市街地では周囲への注意に大きなゆとりが生まれることです。これは是非体験をしていただきたいところ。「スクーターと同じでしょ?」という未体験者の声も聞きますが、DCTは間違いなく、進化したマニュアルトランスミッション(MT)だと私は捉えています。

DCT搭載車は「N(ニュートラル)」と「D-S(ドライブ)」の切り替えをスイッチで行なう。「A/M」スイッチは走行モード(AT/MT)の切り替え

 発進でエンストしない、ギア抜けしない、シフトダウンも瞬時に決まる、ということは、タンデムでもパッセンジャーがシフト操作のたびにピッチングしてヘルメットがゴツンと当たることも劇的に少なくなります。言うなれば、スマホと固定電話ぐらい慣れると違う、と言ったら言い過ぎでしょうか。

 高速道路での快適性、ワインディングでの一体感も愉しむことができました。アフリカツインDCTには、Dレンジのほかに3段階にシフトタイミングを調整できるSモード、そしてシフト操作をすべてマニュアルで操作するMTモードがあります。

 私の乗り方では、Dレンジとハンドル左側にあるシフトダウンスイッチを組み合わせ、自分がリズムを取ってコーナーへの減速時にエンジンブレーキを引き出すことです。

 スリッパークラッチと電子制御スロットルの採用で、現行型はシフトダウン時に気持ちよいブリッピングも入れてくれます。その音を聞くだけでもライディングの楽しさが倍増します。

ホンダ「CRF1000L Africa Twin(DCT)」に試乗する筆者(松井勉)

 また、林道も短時間走りました。トラクションコントロールの介入レベルを調整して自分の乗り方と路面コンディションに合わせ込むことができ、初期モデル(2016年型)よりその調整幅がオフロードライダーの感性に近づけた設定となった現行モデル(2018年型)は、ビギナーから慣れた人まで安心してその調整を活かし、滑る路面を楽しめます。

 スタンディングで走るとき、オフロードブーツでのシフト操作は慣れを要しますが、DCTだと手元でシフトできるのも大きな強みです。また「Gスイッチ」と呼ばれる駆動力をよりダイレクトに伝えるスイッチが装備されています。絶妙なるクラッチ操作を割愛することで、ダート路でのアクセルに対する駆動力のツキをよくするのが目的です。これも効果的でパワースライドなどに持ち込みやすいものです。

 どんな場面でもブレーキ操作に集中できるのも、このDCTのおかげかもしれません。ブレーキは信頼感のある制動力と、制動時の車体姿勢の変化がわかりやすく、自信を持って減速ができます。そのときのタイヤのグリップ力も高く、車体性能の高さを実感できる部分です。

ホンダ「CRF1000L Africa Twin(DCT)」グリントウェーブブルーメタリック (トリコロール)、価格(消費税10%込)155万5400円

 余談ですが、時にオフロードでは右足しか着けない、という場面があります。路面のでこぼこや傾斜などがそうさせるのですが、そんな場面でも、手元でシフトできるDCTは大きな強みになります。何よりシビアな状況でエンストしない安心感は絶大です。コイツはオフの武器です。

 砂利道にできた轍に大きなバイクを納めながら走ることは、速度は低くてもそうとう緻密なライディングファンを楽しめます。この舗装路での楽しさとダートでの楽しさは、やっぱりどこも捨てられません。そんな欲張りなライダー(私もですが)に自信を持ってオススメできるバイク、それがCRF1000Lアフリカツインです。

【了】

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Writer: 松井勉

モーターサイクル関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行なう。海外のオフロードレースへの参戦や、新型車の試乗による記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを 日々伝え続けている。

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