自由の象徴=ハーレーダビッドソンに乗ってどこまでも…… ラナ・デル・レイ「Ride」

シンガー・ソングライターのラナ・デル・レイの2012年に発表したデビューアルバム「Born To Be Die」は、ハーレー・ダビッドソンのチョッパーが自由の象徴としてMVの中に登場します。

自由への渇望と光り輝くチョッパーが神々しいMV

 自分のスタイルを「ギャングスタ・スタイルのフランク・シナトラ」と称し、ハリウッド・サッド・コアという新しい音楽ジャンルを確立した、シンガー・ソングライターのラナ・デル・レイ。人生の悲哀を独自のスタンスで表現する彼女の2012年に発表したデビューアルバム「Born To Be Die」は全英1位、全米2位を獲得し、一躍時の人となった。

ラナ・デル・レイのミュージックビデオ「Ride」は、10分以上の壮大な作品です

 今回ご紹介するのは、その大ヒットデビューアルバムに続いて発表された企画盤「Born To Be Die ―The Paradise Edition」に収録されており、今なおライブなどでも根強い人気を誇る「Ride」。この曲のミュージックビデオはショートムービー仕立てで、プロローグ、エピローグを含む10分以上の壮大な作品となっている。

 3分半以上にもおよぶプロローグのなかでは、ラナがもともと変わった子で、どこにも自分の居場所がなかったこと、不幸の連続で夢が破れ、自分の人生は冬だったと告白する。そして、売れない歌手をしながら出会った男性たちと過ごした時間だけは、夏のようにあたたかく、自分を支えてくれるものだったと語る。

 そしてラナはビール腹の中年男性とピンボール台の上でおイタしたり、初老の男性とモーテルでビールを飲んで酔っ払ったり、スキンヘッドにバンダナを巻いた巨体の男性とチークダンスをしたり……。中年男性たちのあいだを渡り歩きながら、バイクギャングたちと危険な遊びに興じる姿を演じる。小説「ロリータ」を連想させるような年の差恋愛かつ、複数との同時進行が売春婦をイメージさせ、また、銃をこめかみに当てたり、バイクギャングたちとの退廃的な娯楽に興じたりするさまに、批判的な意見も多くあがった。しかし、MVの脚本も自ら手掛けたラナはインタビューで、「私は自由恋愛を信じている。特定の男性の好みもないの。曲には何のメッセージも込めていない、これはただの私のストーリーよ」と語り、MVに登場するラナは創作ではなく自分の半生を表現したものだとしている。

自分の半生をMVの中で表現したラナ

 そして、この自伝的MVの中で重要な役割を果たしているのが、“自由”の象徴として描かれている、ハーレー・ダビッドソンのデンバー・スタイルのチョッパーだ。星条旗に身を包み、バドワイザーのTシャツを着てチョッパーにまたがるラナが「いくら頑張っても、頭の中が戦争状態になってしまったら、私はただ“Ride”するの」と繰り返し歌うほどに、生きづらいラナの心を開放するチョッパーの存在感が増していく。その格好よさは、60年代のアメリカを代表する名画「イージー・ライダー」で表現された、チョッパー=ドロップアウトした人たちの乗り物=“自由の象徴”というイメージと重なる。“古き良きアメリカ”が大好きだと公言している、ラナならではのこだわりなのだろう。

 エピローグではさまざまな葛藤の末に、「私は自由よ」と高らかに宣言するラナ。自由を渇望するラナとともに、夕日を受けてキラキラとかがやきながら走るチョッパーは実に刹那的で神々しい。

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