バイクの話をしてナニが悪い!? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.54~

レーシングドライバーの筆者(木下隆之)から見ると、バイクは乗るのにバランスを強いられ、不便でありながら利便性に優れ、趣味性の高さゆえ誤解を招く乗り物だと言います。どういうことなのでしょうか?

まわりくどく言わざるを得ないバイクという乗り物

 ライダー(バイク乗り)が驚くほどバランス感覚に優れていることに疑いはないだろう。そもそも2輪だから、停車時は足で支えていなければコケる。“立ちゴケ”ほど恥ずかしいものはない。

原付二種のMT車(ホンダ「モンキー125」)に乗るレーシングドライバーの筆者(木下隆之)

 また、走行中であっても、絶えずバランスを取らなければならない。ある程度の速度(推進力)が加われば、バイクという乗り物は横へ傾くモーメントより直立しようという力が働く。とっても都合よく作用するのだが、教習所の一本橋走行が最高難度であることが証明するように、極低速ではまったく直立しようとしない。とっても意地悪な乗り物なのである。

 乗り物なのに乗り辛い乗り物とは、はたして乗り物と言えるのか? これはもう趣味の領域である。一輪車で通勤しようと考える人はいないのに、一輪車で楽しむ人はいる、という無意味なロジックと同様に、バイクは遊びの道具だ。竹馬乗りは楽しいが、これまた通勤には適さない。

 だというのに、通勤通学にバイクを活用している人が少なくないのだから珍妙である。車輪は縦に2輪だから、クルマよりも幅をとらない。強引に脇をかすめることには感心しないが、クルマよりも渋滞への耐性が強い。「バイクだから遅刻せずに済んだ」とホッと胸を撫で下ろした人も少なくないだろう。趣味の乗り物なのに、通勤通学に適しているのである。

 なぜこんなくだりで書き出したかというと、先日こんな“ぼやき”を耳にしたからだ。

「うちの会社、電車通勤は許されるのにバイク通勤はダメなんです。なぜでしょうね……」

 まったく切実な訴えである。遅刻回避の意味でもこれほど都合の良い乗り物はないというのに、通勤で使用してはならないとは合点がいかない。

機動力の高さと利便性、経済性に優れる原付二種スクーターは、近・中距離の通勤に最適な乗り物

 敷地の片隅に留置できるという意味でも、都合がいい。広大な駐車場などいらない。駐輪場があればそれで済むのだ。そもそも自転車通勤が許されていながらバイク通勤が制限される理由が解せない。

 おそらく総務部に問い合わせれば、大事な社員の命を事故のリスクに晒すことはできないから、と言うに違いない。

 だが僕(筆者:木下隆之)は、バイクの持つ“趣味性が誤解を招いている”のではないかと想像する。というのも、ある総務部担当だった女性からこんな話を聞いたからだ。

「喫煙室でバイク通勤している人と一緒になると、バイクの話ばかりするのよ……」 

 ……バイクの話をしてナニが悪い! とは思うけれど、なんとなく「……」である。

【了】

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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