レーシングカーには専用のエアコンがある、バイクには? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.59~

レーシングドライバーの木下隆之さんから見ると、酷暑の夏、バイク用のエアコンが無いことが不思議だと言います。どういうことなのでしょうか?

バイク用エアコン、なぜ無いのか?

 最高気温25度以上が夏日、30度で真夏日、35度で猛暑日、最低気温が25度以下にならなければ熱帯夜という。つまり、温暖化の影響とおぼしき日本列島は、日中が猛暑日であり夜中でも熱帯夜という、およそ人間が生息するには無理がある環境に襲われている。

『BMW Team Studie』のドライバーを務める筆者(木下隆之)。上海国際サーキットで開催されたブランパンGTアジアに参戦(2019年)

 こんな環境で長袖のライディングジャケットを纏ってツーリングするなど、平常な人間のすることではない。それでもライディングは楽しいというのだから、いかにバイクという乗り物が魅力的なのかを物語っているわけだ。

 そこで思うのは、なぜバイク用エアコンが開発されていないか? という素朴な疑問である。ジリジリと肌を焼くような直射日光にさらされ、体温を上回る熱風を浴びながら走るのに、エアコンが無いという事実は明らかに不自然である。一刻も早くバイク用エアコンを開発して欲しいものである。

 というような提案をすると、担当編集者が無表情でこう言う。

「バイクは“車内”じゃないので……オープンエアーですから、効かないですよね、エアコン……」

 確かにクルマのように車内を冷やすわけにはいかないだろう。そもそも密閉された空間がない。

 だが、僕(筆者:木下隆之)が日頃戦っている4輪レースで使用しているレース用エアコンが流用できるような気がした。

 レース用エアコンとて、さすがにコックピットを快適に冷やすほどの効果はない。だが、エアコンの冷気をヘルメットに導き、小さな穴から頭部に導くだけでささやかな涼を得ることができる。シートバックの小さな穴から冷風をあてるだけでも快適さに差がある。

ホンダのスポーツツーリングモデル「VFR800F」と筆者(木下隆之)。エアコンが無いバイク、酷暑のツーリングでは暑さ不可避……

 クールスーツなる装置を活用することもある。大きなクーラーボックスにキンキンに冷えた氷水を蓄える。その冷水をジャケットに巡らせた細い管に循環させるのである。するとヒヤッとするほどの効果があるのだ。

 バイクにはクーラーボックスを積むほどのスペースなど無いと指摘するならば甘んじて受けよう。ならば冷媒でもいい。エアコンの冷気を巡らせればいいのだ。僕の論調には一寸の落ち度もないと確信する。

 というようなアイデアを提案したら、くだんの担当編集者はまた無表情でこう言った。

「そもそも熱源であるエンジンが股下にあるので、熱いのは大前提です」

 余計な提案だったようだ……。

【了】

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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