オープンエアの解放感はライディングフィールに近い、が!? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.70~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、常磐自動車道をクルマで移動中、ふとバイクのことを考えて肝を冷やしたと言います。どういうことなのでしょうか?

オープンエアの爽快な解放感は、ライディングフィールに近いものがある

 以前『ツインリンクもてぎ』(栃木県)から『スポーツランドSUGO』(宮城県)に移動せねばならず、常磐自動車道を使った。ダラダラと下道を走って東北自動車道を経由するよりも、太平洋沿いを北上した方が早いように思えたからだ。

長い移動時間も気持ちを切り替えれば爽快なドライブ気分を味わえる、ハズだったが……。キャンバストップのロードスターを運転する筆者(木下隆之)

 東日本大震災で寸断された常磐自動車道も、いまでは全線が結ばれていることは耳にしていたし、常磐自動車道北上は初めての経験。道中の刺激になるのだろうと期待していたことも理由のひとつだ。

 僕(筆者:木下隆之)は仕事柄、日本各地のサーキットへ頻繁に移動する。レーシングドライバーが仕事に費やしている時間のほとんどは、サーキットで戦うより移動時間の方にあるかのように思う。だから、同じ道は飽きる。飽きると眠くなる。そんなだから、今回は気分の良いドライブになるはずだった。

 だが、雰囲気は物々しかった。常磐富岡あたりから不穏な電光表示が表れたのだ。

「〇〇μSv/h(マイクロシーベルト/時)」

 空間放射線量を表示するモニタリンクポストが点在しているのである。そう、そこはメルトダウンした東京電力福島第一原子力発電所をかすめる。世界を震撼させたメルトダウンの震源地なのだ。モニタリンクポストは、帰宅困難区域のある南相馬まで続いていた。

 あの事故は、まだ収束していない。人が安全に住めるようになるまでには、まだ長い時間が必要なのだ。常磐自動車道が開通したのだから安全だろうなんて甘く考えていたら、現実はそうではなかった、という話である。

 とくに肝を冷やしたのは、2輪車の乗り入れや下車が禁止されているゲートがあることだ。慌ててネットで調べると、自動車とバイクでは被曝線量に差がある。コクピットに包まれているクルマの方が、体がむき出しのバイクよりも被爆が少ないって事だろう。バイクに乗る人間の危険に関して明確な情報があるわけではないが「こりゃヤバイぞ」と身を固くしたのも事実。

オープンエアの爽快な解放感は、ライディングフィールに近いものがある

 それでも胸部X線の被曝線量の30分の1だという。その発表が真実かどうかはともかく、すぐさま人体に害があるわけではない。いたずらに不安を煽る気持ちもない。だが、爽快なドライブ気分に水を差す状況であったことも事実なのだ。

 ちなみにその日、僕が移動に使ったクルマは、キャンバストップのカブリオレだった。

【了】

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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