ホンダの赤い除雪機、開発者が語るこだわりとは? ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.73~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、ホンダの赤い除雪機の開発担当者に話を聞いて、いささか“オタク”だと言います。どういうことなのでしょうか?

こだわりを持った開発はバイクのみならず、除雪機にも詰まっていた

 いよいよウインターシーズン到来である。ツーリングを趣味にするライダーにとっては寒く厳しいシーズンなのかもしれないけれど、ウインタースポーツが大好物な僕(筆者:木下隆之)にとって冬の訪れは大歓迎。雪の便りを待ちわびているのである。

白い雪の中でひと際目立つホンダの赤い除雪機(小型除雪機「HSS970n」)

 なんといっても雪は美しい。強い日差しに照らされた残雪が、キラキラと光を反射して輝く。大気に舞う粉雪は、さらさらと優しい音を伴う。雪は様々に、表情を変えるのである。

 そして雪にはたくさんの呼び名がある。淡雪は今にも消え去りそうなほど薄い雪のことである。小米雪は小さな米粒を連想させる。細雪のか弱そうなイメージは、演歌の歌詞に馴染む。花弁雪は花弁のように美しく開いた雪の結晶を思い浮かべる。一方、玉雪はどこか溌剌としているし、餅雪は水分を含んでずっしりと重たそうだ。雪にも様々な種類があるのだ。

 季節や状態によっても、雪は様々に名称を変える。風花は風に待ってやってきた雪のことだし、残雪は春になっても消えない雪を表す。三白は正月に降る雪のことであり、終雪はその冬最後に降った雪を意味する。決まって12月8日に吹く雪を八日吹きと呼ぶそうだ。雪には季節の移ろいを感じさせる風情がある。

 というように、雪の表情は豊かだから見ていて詩人のような気持ちになれる。白銀の世界に包まれているだけで、心洗われたような気になるのはそのせいであろう。

 ホンダの汎用機開発者と話す機会があった。場所はホンダの寒冷地テストコース、北海道の「鷹栖プルービンググラウンド」である。除雪機の開発を担当しているという。

 木下「ホンダの除雪機はすべて赤いのですね」

 僕のそんな質問に、ハキハキと快く答えてくれた。

 担当者「はい、伝統にしています。ホンダといえば赤なんです」

 木下「除雪性能は?」

 担当者「もちろんナンバーワンでありたいと思って開発しています」

 木下「除雪機を開発するうえで、拘っていることは?」

 担当者「雪の吹き上げ方です」

 木下「吹き上げ方?」

 担当者「吹き上げる雪が美しく舞うように開発しているのです」

 木下「花吹雪ならぬ雪吹雪?」

 担当者「だから、たとえ本体が見えなくても、吹き上げられる雪の舞い方で、ホンダの除雪機なのか他社なのか、判断できます」

吹き上げられる雪の舞い方にもこだわって開発される、ホンダの赤い除雪機(中型ハイブリッド除雪機「HSM1590i」)

 いささかオタクゾーンである。こんなメーカーが作るバイクにも、素敵なこだわりがあるはずなのだ。

【了】

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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