ノンビリ走っても気分は最高! ホンダGB350の開発陣に話を聞いた

話題のホンダGB350に試乗し、ロングストローク単気筒エンジンの味わい深さにすっかり魅了されたバイクライターの青木タカオさんが、開発責任者をアレコレと質問攻め。心地よいと感じる鼓動とはいったい何か? またそれを乗り手へ伝える奥義を聞き出しました。

かつてない“クリアパルス”を乗り手へ

 飛ばすことなく、ゆっくりノンビリ走っているだけで満足できてしまうホンダGB350。最高出力はわずか20PS。バイクの魅力はスペックではないことをホンダは改めて証明してみせましたが、ライダーが“心地良い”と感じるために、開発陣はあらゆる手を尽くしています。開発責任者である山本堪大(かんた)さんに教えてもらいました。

GB350開発陣(左から)完成車設計PL 井口貴正氏/筆者(青木タカオ)/開発責任者 山本堪大氏/エンジン設計PL 若狭秀智氏

青木:なによりまず聞きたいのは、エンジンの開発にあたってです。

山本:一発ごとの燃焼プロセスまで、ありありと感じられるようなかつてない“クリアパルス”を生み出すロングストローク空冷シングルエンジンを新設計しました。

青木:不快に感じる微振動は打ち消しつつ、パルス感を鮮明に、ダイレクトに乗り手へ伝えていますね。

山本:日本での正式発表を前に、一部のお客様の受け止めとして、2つのバランサーによってシングルエンジンの魅力である鼓動感が抑えられているのではないかと予想されましたが、それは誤解でして、鼓動を際立てるための仕組みなのです。

GB350の開発責任者 山本堪大氏

青木:“鼓動”と僕らもよく表現しますが、実態はなんなのでしょうか?

山本:開発初期段階で「鼓動=心地よい振動+排気サウンド」と定義しました。まず振動は、燃焼ごとの0.5次振動。ピストンの往復ごとに発生する1次振動、エンジンの回転の2倍で発生する2次振動に分けられます。

 燃焼ごとの0.5次振動は低回転であるほど高く、1次/2次振動は回転が上がるにつれて立ち上がっていく性質を抑えた上で、0.5次振動を際立たせ、余計な1次/2次振動を抑えることを狙いました。

 それを達成するためにロングストローク、低回転・高トルクエンジン、そして不快な一次振動を消し去るメインシャフト同軸バランサーを採用しました。

1室構造マフラーでGBならではのサウンドを

青木:排気音も素晴らしいと感じました。

山本:排気サウンドは重厚感とパルスを求めた結果、このクラスでは極めて稀な1室構造マフラーを採用しています。通り過ぎただけでGBと分かるような、重低音とパルスの相まった迫力のサウンドを実現しました。

GB350の迫力あるサウンドに高評価をつけた筆者(青木タカオ)

青木:ヘルメット越しにもよく聴こえます。

山本:走行中にライダーの耳にも排気音がよく聴こえるように、重低音だけでなくあえて高周波も残すような細かいチューニングも実施されています。

 排気サウンドを際立たすため、マフラー音以外での静粛性を徹底追求しました。ドライブチェーンはシールチェーンを専用開発しましたし、シリンダーのフィンも風切り音がならないよう設計しています。

マフラー音以外での静粛性を徹底追求し、排気サウンドには重低音だけでなくあえて高周波も残すような細かいチューニングも実施された

青木:排気サウンド以外の音は徹底的に消したのですね。

山本:ロングストロークエンジンとバランサー機構、最新のサウンドマネージメントにワイドレシオなトランスミッション、質量の大きなフライホイールなどの組み合わせによって、GB350は市街地での日常シーンから気持ち良さ全開です!

青木:停車中にさえ鼓動感が心に響きました。

山本:エンジンを掛けた瞬間から心が踊り、信号待ちでも、なにもない直線路でも退屈とは無縁でしょう。

主役はライダー、ライポジはスーパーカブに近い!?

青木:オーソドックスなスタイルも好評です。

山本:モーターサイクルの印象を決定づけるのは、マシンそのものより、むしろライダーたちであり、私たちはライディングしている姿をもっとも美しく際立たせたいと考えました。ライダーとバイクの一体感を見据えながら、市街地からツーリングまで幅広いシーンでライダーの存在が際立つ車体構成を目指しました。

 すっと伸びた上半身と、タンク側面に自然とヒザがくる堂々としたライディングポジションにしています。これは多くの人に受け入れられているスーパーカブやスクーターに近く、積極的にニーグリップしなくても安心して扱えるよう車体重心を設定しています。

ライディングポジションは、スーパーカブやスクーターに近い設計にしている

青木:フレームは鋼管セミダブルクレードル式。

山本:スチールのしなやかさを存分に引き出すため、最新の解析技術によって強度と剛性を高い次元でバランスさせ、節目のない一様な剛性分布とすることで、予見性の高い車体挙動、ゆったりとしたスムーズなハンドリングを実現しました。

青木:一歩先を行くこれまでのホンダ車とは違うアプローチですよね。

山本:既成概念や先入観にとらわれず、経験やスキルに大きく左右されずに楽しさを100%味わっていただけるモデルになったと確信しています。GB350でモーターサイクルの変わらぬ豊かな世界に出会っていただけることを願っています。

【了】

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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