内燃機関のエンジン始動時に感じる、ちょっとした所作 ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.113~

レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、内燃機関のエンジン始動時に感じるほんのわずかな“タメ”が良いと言います。どういうことなのでしょうか?

内燃機関のエンジン始動、ほんのわずかな“タメ”が良い

 久しぶりに日産「GT-R」をドライブした。国内最強のスーパーウエポンであり、暴力的な加速力と圧倒的なコーナリング性能は、他の追随を許さない。内燃機関の権化、和製スーパーカーだ。

日産「GT-R」(写真はPremium edition T-spec)

 アクセルペダルを床まで踏み込むには、サーキットに限るだろう。2トンにもおよぼうとする鉄の塊が、発進から3秒後には100km/hに達するというのだから、これはもう暴力である。脳内の髄液が置き去りにされそうになる。

 とはいうものの、僕(筆者:木下隆之)が「GT-R」で気に入っているのはその速さではない。まるで機械式時計のような精緻なメカニズム感が萌えポイントなのである。

 現代のマシンだから、制御系は全て電気の力に頼っている。だが、エンジンやミッション、もちろんデファレンシャルは金属のギアとギアが複雑に絡まっているわけで、それがいちいち噛み合いながら駆動している感覚が強く意識できるのだ。

 とくに印象的なのは、始動の時のノイズだ。イグニッションボタンはコンソールボックスの中央にある。赤く色分けされ「START」の文字が記されている。

 そのボタンを押した瞬間から儀式が始まる。すぐにはエンジンに火が入らない。コンピューターに通電したノイズがカチカチと響き、様々な機能のコンディションを確認する音を伝えたのち、ようやくセルモーターが回転する。そしておもむろに「ブォン」とエンジンが目覚める。その時間はわずか数秒なのだが、その数秒がまるで、モンスターを呼び起こす呪文のように感じるのである。

 その瞬間に思い出されるのはホンダが誇る優等生バイク「CB400スーパーフォア」の始動だ。

ホンダ「CB400 SUPER FOUR」に試乗する筆者(木下隆之)

 右の親指あたりのセルボタンを押すことで並列4気筒エンジンを呼び起こすのだが、すぐさまエンジンは始動しない。キュルキュルキュルと、セルモーターがクランクを回転させ、ちょっとした“タメ”を経たのちに「ブォン」と目覚める。まさに内燃機関らしい所作であろう。

 電気自動車ではこうはいかない。スイッチを押しても無音であり、始動も無音、というより始動というプロセスがない。味気ないものだ。やはりクルマもバイクも、ちょっとした儀式を経て走り出すのが粋だと思う。

【了】

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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