セグウェイは日本の公道走行不可! 電動キックボードは何故問題ないのか?

電動の乗り物の先駆けともいえるセグウェイは、ヨーロッパを中心に普及しており、観光客向けツアーなどにも使用されています。しかし、なぜ日本では走行することができないのでしょうか。

セグウェイはなぜ日本で走行不可なのか?

 昨今、次世代モビリティとして「電動キックボード」が注目を集めており、原付バイクと同じようにナンバーを付けて、公道を軽快に走る光景を見かけるようになりました。二輪で立って乗る電動の乗り物といえば、かつて話題になった「セグウェイ」を思い浮かべる人も多いかもしれません。

現在ヨーロッパを中心に観光客向けツアーなどで使用されている「セグウェイ」
現在ヨーロッパを中心に観光客向けツアーなどで使用されている「セグウェイ」

 電動の乗り物の先駆けともいえるセグウェイは、現在ヨーロッパを中心に観光客向けツアーなどで使用されています。しかし、日本では走行することができません。なぜ、日本では走行できないのでしょうか。

 そもそもセグウェイは、アメリカの発明家であるディーン・カーメン氏を中心に開発され、新時代の乗り物として2001年12月に発表された乗り物です。発表前から、IT業界の著名人であるスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツなどから賞賛されたことから、世界から大きな注目を集めました。

 しかし、セグウェイはショッピングモールや空港の警備、ゴルフ場などの一部の私有地での利用にとどまり、一般に普及することはありませんでした。そして、2020年7月15日をもって生産終了の発表がなされ、ひっそりと20年の歴史に幕を閉じます。

セグウェイは日本の法律で公道を走行することは認められていません
セグウェイは日本の法律で公道を走行することは認められていません

 日本でも普及しなかったセグウェイですが、そもそも日本の法律では公道を走行することは認められていません。しかし、同じパーソナルモビリティである電動キックボードは、公道の走行が認められています。セグウェイが公道を走れない理由には、構造上の問題と日本の法律が関係しています。

 まず、法律での「二輪車」の定義が「前後にタイヤがついているもの」となっており、人が乗るプレートの両サイドにタイヤがついているセグウェイは、これに該当していません。また、公道を走行するためには法律で定められた、安全に走行するための保安部品が必要です。具体的には、物理的な制御装置であるブレーキをはじめ、ライトやウインカーのほか、ナンバープレートを取得しなければなりません。

セグウェイはモーターの制御によって発進と停止をおこなうことから、物理的にタイヤを止める仕組みがありません
セグウェイはモーターの制御によって発進と停止をおこなうことから、物理的にタイヤを止める仕組みがありません

 しかし、セグウェイはブレーキなどでタイヤを止めようとすると構造上、転倒してしまうためアクセルもブレーキも備わっておらず、モーターの制御によって発進と停止をおこなうことから、物理的にタイヤを止める仕組みがありません。

 これらの理由から、セグウェイは現状の日本の交通ルールでは、公道を走行することができないのです。そして、そんなセグウェイに変わるパーソナルモビリティとして、現在世界的に普及が進んでいるのが電動キックボードです。

日本の公道を走行可能になった電動キックボード

 電動キックボードは、セグウェイとは異なり前後にタイヤがあり、モーター出力の規格が600W以下のものがほとんどのため、原付バイクと同じように日本の公道を走行することが可能です。

電動キックボードは保安部品を装着し、ナンバープレートの取り付けと自賠責保険の加入のほか、毎年の軽自動車税の納付も必要
電動キックボードは保安部品を装着し、ナンバープレートの取り付けと自賠責保険の加入のほか、毎年の軽自動車税の納付も必要

 条件としては「道路運送車両法の保安基準」に定められた規定を守る必要があり、具体的には、前後ブレーキやヘッドライト、ウインカー、テールランプ・ブレーキ灯、バックミラーなどの装備が必要になります。さらに、原付バイクと同じ扱いとなるため、ナンバープレートの取り付けと自賠責保険の加入のほか、毎年の軽自動車税の納付も当然ながら必要です。

 その他にも、最高速度は30km/h以下の速度制限や、片側2車線以上の交差点では2段階右折をしなければなりません。また、歩道での走行は禁止で、たとえ電源を切っていても押して歩かなければ違反となってしまいます。

 このように現在、電動キックボードは原付と同じ扱いになっています。しかし、警視庁は昨年の12月に、電動キックボードを含む小型電動モビリティの新たな方向性を取りまとめ、今年の通常国会に提出する方針を固めました。

 これによると、最高速度が20km/h以下の車体については、自転車と同様に「小型低速車」として免許なしで乗れるようにし、車道のほか自転車専用レーンなども走れるようにするとしています。

特例電動キックボードの実証実験を一部地域では、ヘルメットの着用は任意
特例電動キックボードの実証実験を一部地域では、ヘルメットの着用は任意

 また、警視庁などは特例電動キックボードの実証実験を一部地域で行っています。
令和3年4月から、一部のエリアにおいて、国の認可を受けた事業者により貸し渡される電動キックボードの実証実験が行われており、ヘルメットの着用が任意等の特例が認められています。

 産業競争力強化法に基づき、令和3年1月、事業者から経済産業大臣に新事業活動区域において貸し渡される電動キックボードに関する特例措置の要望書が提出されました。これを受け、令和3年4月、国家公安委員会及び国土交通省において「道路交通法施行規則」及び「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」の適用に関して新たな規制の特例措置を講じられたことから、本特例措置の対象となる電動キックボード(以下、「特例電動キックボード」という。)の通行に関する安全性等について検証するものです。

■特例電動キックボードとは
車体の大きさ及び構造等(最高速度15キロメートル毎時以下等)を定めた基準に該当し、かつ、認定を受けた新事業活動計画に従って貸し渡されているもので、同計画に記載された当該新事業活動を実施する区域内の道路を通行している電動キックボードのこと。

■特例措置の概要「道路交通法施行規則」の特例
1.小型特殊自動車と位置付けること
2.ヘルメットの着用を任意とすること
3.自転車道を通行できるようにすること

 ただし、16歳未満の運転や歩道の走行は原則禁止ですが、最高速度が6km/hに制御された車体に限り走行可能とする方向となるようです。

※ ※ ※

「未来の乗り物」として世界中に衝撃を与えた「セグウェイ」ですが、価格や法律の問題から、ひっそりと姿を消すことになりました。現在は、電動キックボードが注目されていますが、近い将来、実用化に向けた新たなセグウェイが発明される可能性もあるかもしれません。

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