子供のうちに自転車がオススメな理由 興味を持ち始めたらチャレンジの機会を
子供の発育と自転車運転の関りはあまり明確になっていませんが、早い段階から自転車のトレーニングをすることは、子供の発育に良い影響を与えると考えられています。ただの移動手段と思われがちな自転車ですが、じつは運動神経の強化に必要な要素が詰まっているのです。
自転車で“運動神経”を整える
子供の発育と自転車運転の関りはあまり明確になっていませんが、早い段階から自転車のトレーニングをすることは、子供の発育に良い影響を与えると考えられています。ただの移動手段と思われがちな自転車ですが、じつは運動神経の強化に必要な要素が詰まっているのです。

もちろん個人差はありますが、子供が初めて補助輪無しで自転車に乗れるようになるのは5歳頃が多いようです。「小学生になる頃には自転車に乗れるようになっていて欲しい」と思っている保護者も多いのではないでしょうか。
早い段階から自転車のトレーニングすることは子供の発育に良い影響を与えると考えられており、「まだ早いかも……」と保護者に不安があったとしても、子供が「やってみたい!」と思った時がチャレンジのタイミングです。
アメリカの医学者・人類学者であるリチャード・エバーリンガム・スキャモン氏が1928年に発表した「発育・発達曲線」は、身体の各組織を4つに分け、それぞれが20歳で100%の状態を迎えるとしたときに、0歳からどのようなスピードで発育・発達していくかをグラフ化しており、現在でも多くの研究書などで引用されています。
このグラフによると、身長や体重などの一般的な組織は乳幼児期と思春期に急速に発達し、20歳で100%を迎えますが、脳や脊髄などの中枢神経、いわゆる「運動神経」は5歳頃までにおよそ80%成長し、12歳頃にはすでに100%に達すると考えられています。
このことから、5歳頃までにさまざまな運動や活動を通じて神経系に刺激を与え、運動神経を整えておくことが重要だと分かります。
この神経系の強化で重要になってくるのが「コーディネーション能力」と言われる力です。「バランス能力」「リズム能力」「連結能力」「定位能力」「識別能力」「変換能力」「反応能力」といった7つの能力に分けられ、それぞれを高めることで「身体を上手く操る方法」を習得し、どんなスポーツにも対応できる基礎を得ることができると言われています。

子供は日常の遊びを通じて、高いところからのジャンプしたり、鬼ごっこや木登りなどで自然とトレーニングしていますが、自転車に乗ることは、これらの能力強化に最適とも考えられています。
まず、ハンドルを掴んだ手とサドルに乗せたお尻で身体を支えながら、倒れないよう常に重心を移動させることは「バランス能力」を高めますし、一定のテンポでペダルを踏み続けることは「リズム能力」を養ってくれます。
また、手でハンドルやブレーキを操作しながら足でペダルを漕ぐことは、2つ以上の動作を同時に行う「連結能力」に繋がり、走行中に障害物や信号に気づくことで「識別能力」を鍛え、そこまでの距離感を掴むのは「定位能力」の強化になります。
そして走りながら変化する周囲の状況に応じて動作を変えることは「変換能力」に、とっさの判断が「反応能力」を向上させてくれます。
なにより、上記以外にも重要なのが「恐怖心の克服」です。自転車は乗れるようになるまで練習を繰り返し、転ぶことは低年齢の子供にとってはなかなかハードな状況が続きます。
それを乗り越え、初めて自転車にひとりで乗れた時の感動は格別です。その成功体験は新しく何かに挑戦する時の自信になってくれるのです。
自転車だけですべての能力が十分に強化できることはありませんが、能力を高める手助けにはなってくれるでしょう。
もちろん、自転車は外を走る乗り物なので、事故などに巻き込まれる可能性はゼロではありません。その点にはくれぐれも注意して、自転車に興味を持ち始めた子供にはチャレンジの機会を与え、また自転車に乗る楽しさを伝えることができれば最高ではないでしょうか。
ちなみに、12歳以降は大きな成長が見込めないとされている運動神経には、加齢による衰えがあります。しかし「コーディネーション能力」を強化するトレーニングが成人にも効果があることは証明されています。いまある運動神経を維持するために、自転車を利用することも良いのではないでしょうか。