意外とコツが必要? スーパーカブの走らせ方 ~木下隆之の、またがっちゃいましたVol.175~
レーシングドライバーの木下隆之さん(筆者)は、ホンダ「スーパーカブ110」のギアチェンジと乗車姿勢は独特だと言います。どういうことなのでしょうか?
自分なりに導き出した、スーパーカブの走らせ方
僕(筆者:木下隆之)とホンダ「スーパーカブ110」との生活が1カ月を過ぎて、ようやく走らせ方が板についてきたように思う。

とくにギアチェンジがスムーズになってきた。ミッションは4段リターン式で、左手のクラッチ操作が必要無いのは、蕎麦屋の出前を考えての機構だろう。左手を遊ばせたまま、左足でステップの前後に生えているペダルを、ガチャコンと踏み込めばいいのだ。
4段リターン式だから、ペダルを前に踏み込めば1速から2速に。もう一度踏み込めば2速から3速に、という具合である。シフトダウンは逆に、ステップの後ろ側にあるペダルを踵で踏み込めばいい。
気が利いているのは、停車時にはロータリー式になることだ。4速で信号停止、後ろ側のぺダルを踵でわざわざ3回も踏み込まなくても、前に2回踏めばいい。ニュートラルを経由して1速になる。
と言えば簡単だが、意外にコツが必要なのだ。変速はちょっと渋い。ペダルを蹴りつぶすように、やや乱暴に踏まねばならないのだ。ガシャコンと派手に音がする。振動も伴う。だがそれが、確実にエンケージしている感覚が残る。
これがちょっと力を必要とする。踵に力が加わるように足首を器用に捻るのは、関節の硬くなった世代には少々困難なのだ。仕方なく、左の股を開いて、空き缶を潰すような姿勢で、ガンガンとやる。

ライディングの正しい姿勢は、股を閉じたニーグリップであろう。だが、スーパーカブの場合は、ガニ股が正式なライディングフォームのような気がする。さらに身体を左側に、斜に構えると都合が良い。邪道かもしれないスタイルがむしろカッコ良く思えるのだから、僕は患っているのかもしれない。
スーパーカブを颯爽と走らせる蕎麦屋の出前や新聞配達員がなぜガニ股なのか、その理由がわかったのである。
思えばマニュアルミッションのスポーツカーを走らせる時にも、同様にコツがいる。先日ロードスターをサーキットアタックしていた時は、電光石火のシフトをこなすために器用に左手を捻っていた。
ギア操作のたびにアクセルを緩めるのは得策ではないから、アクセル全開のまま瞬間的にシフトする。クラッチペダルを蹴り込むような素早い操作になる。アクセルは緩めないから、もたもたしていてはオーバーレブをする。つまり、エンジンがレッドゾーンまで跳ね上がるまでの一瞬にシフトアップを完了させる必要があるのだ。
そのためにはシフトレバーの操作がもたついているわけにはいかない。「H」パターンの場合、2速から3速は左手のひらを前に向け、力士ががぶり寄りするような形でスタンバイ、3速から4速は逆に、左の掌で何かをかき集めるようにシフトする。息を止めて一瞬で……である。シフトレバーのノブを握りしめていては電撃的なシフトはできないのだ。
というようなことを「スーパーカブ110」を走らせていて思い起こした。どんな乗り物も、特性を理解した上で柔軟にスタイルを変える。それが欠かせないのだ。
ガニ股のスーパーカブ乗りを見ると、「わかってるねぇ~」と感心する。
Writer: 木下隆之
1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。







