向かい風を味方に!? 世界最高クラスのトライアスロンバイク「Felt IA」シリーズとは

アメリカンブランドの「FELT(フェルト)」は、自転車競技の世界でもトップクラスの実績を誇り、トライアスロン用バイクにおいてはハワイで行なわれるコナ・アイアンマン世界選手権で、コースレコードを含む6連覇という偉大な結果に貢献しています。そのバイクこそが「IA」シリーズです。どのような特徴があるのでしょうか。

トップクラスのバイクを開発したのは、元モトクロスライダーだった

 アメリカンブランドの「FELT(フェルト)」は、自転車競技の世界でもトップクラスの実績を誇り、トライアスロン用バイクにおいてはハワイで行なわれるコナ・アイアンマン世界選手権で、コースレコードを含む6連覇という偉大な結果に貢献しています。そのバイクこそが「IA」シリーズです。

FELT「IA Advanced Ultegra Di2」カラー:サーフミスト
FELT「IA Advanced Ultegra Di2」カラー:サーフミスト

 ブランド名にもなっている設立者のひとり、ジム・フェルトはモーターサイクル業界出身で、かつて日本メーカーのモトクロスマシンのテストライダー兼エンジニアとしての実績を持つ人物です。ハードな仕事で自身の身体を鍛えるため、トライアスロン黎明期に自転車競技と出会い、もっと速く走れるフレームを自身で試作したことが始まりと言います。

 FELT「IA Advanced Ultegra Di2」は、IAシリーズのミドルグレードに位置するモデルです。ロングディスタンスのトライアスロンは、ルール上、他者の補助を受けず単独走で風圧に立ち向かわなければなりません。そこでバイク形状に工夫を凝らし、空気抵抗を削減しています。

 FELTの研究では、トライアスロンのバイクパートにおいて、5〜15度のヨー角が重要との結果から形状設計を導き出し、デザインに採用されています。走行速度40km/hで、ヨー角5〜15度の風を揚力に変え、バイクを前に送り出すことができると言います。

 特徴的とも言える低い位置に設置されたシートステーは、前方投影面積を極限まで小さくし、エアロダイナミクスが向上しています。また横剛性を保ったままパワー伝達性能を高める一方、垂直方向に振動を吸収し、ゴール直前の最後のランに脚を残せるという最高レベルの快適性を実現しています。

低い位置に設置されたシートステーは前方投影面積を極限まで小さくし、エアロダイナミクスを向上
低い位置に設置されたシートステーは前方投影面積を極限まで小さくし、エアロダイナミクスを向上

 補給食やパンク修理セットなどを収納するふたつのストレージスペースはフレームと一体化しており、トップチューブに配したカルパック2.0は補給食にすばやくアクセスしてタイムロスを防ぎます。またシートチューブ後部のBTSパックには、工具やチューブをスマートに収納します。もちろんどちらもCFD解析を重ねた形状設計で、IAのエアロダイナミクスを阻害することはありません。

 IAのフレームに使われるカーボン素材は、スウェーデンのOxeon社の高度な技術によるTeXtremeを採用しています。これは最高峰カテゴリーのレーシングマシンや航空宇宙産業などに使用される最新素材です。カーボン繊維を「糸」ではなく「テープ」に成形する特殊な技術により、整形時の密着が高まり、より強く、より軽い構造体を作り上げることが可能です。

 上位モデルの「IA FRD」はフレームセットで106万4000円(消費税10%込み)であるのに対し、「IA Advanced Ultegra Di2」はフレームのカーボン素材のグレードを調整することで、完成車で110万円(消費税10%込み)と、上位モデルと比較してバリュープライスを実現しています。

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Writer: 山本健一

サイクルジャーナリスト(人力バイクのほう)。ジャーナリスト歴20年、自転車競技歴25年の公私ともに自転車漬け生活を送る。新作バイクレビューアー、国内外レースイベントやショーの取材、イベントディレクターなど、活動は多岐にわたる。

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