奈良県「助人トンネル」ケーブル垂れ下がりバイク転倒死亡事故 現場写真が物語るのは「ケーブルの網」 工事施工に問題か?
2022年5月2日正午過ぎ、奈良県内を走る国道168号の工事中のトンネル内でバイクが転倒、ライダーの死傷事故が発生しました。発生直後に撮影された写真には、何本ものケーブルが網のようにバイクを絡めとっていた様子が伺えます。捜査は進展のないまま10カ月目を迎えました。
衝突と言うより、バイクを絡めとったような事故
2022年5月2日正午過ぎ、奈良県内を走る国道168号の工事中のトンネル内でバイクが転倒、ライダーの死傷事故が発生しました。発生直後に撮影された写真には、何本ものケーブルが網のようにバイクを絡めとっていた様子が伺えます。捜査は進展のないまま10カ月目を迎えました。写真は国道168号、奈良県十津川村川津の「助人トンネル」(すけっとトンネル)で発生したバイク転倒死亡事故の発生直後の写真です。

この事故で普通自動二輪を運転していた53歳男性が死亡、大型自動二輪を運転していた31歳会社員が頸部打撲の軽傷。死亡した男性は、ほぼ即死でした。
改めて事故現場の写真を見ると、垂れ下がった1本のケーブルにバイクが衝突したと言うより、何本ものケーブルがクモの巣のようにライダーを絡めとって、バイクを引き倒したことが分かります。トンネル内は明確な中央線はありませんが、ケーブルは進行方向の左側をほぼ塞ぐような形で広がっています。
死亡したライダーは障害物に気が付く間もなく衝突し、軽傷の男性は、前を走るバイクの不穏な動きを見たことで、大きなダメージを免れることができたようです。軽傷の男性と一緒にツーリングをした後続の男性は道路右側、反対車線に避けることで転倒を免れました。
直接原因の車両は特定
電源ケーブルの固定が外れて、死傷事故に。通常では考えられない事故に、警察の捜査は事故発生から10カ月目を迎える今も継続中です。「助人トンネル」を通行した路線バスなどの記録から、ケーブルが垂れ下がった直接原因は、トンネル内のすれ違いで路肩に寄った大型車が、天井から地面に向かって垂直に敷設された電源ケーブルをひっかけたことだと、ほぼ特定されています。

しかし、原因究明を難しくしているのは、事故が約1年の工期で進められていたトンネル補修工事中に発生したことです。工事期間中はトンネル坑口に向かって、地上からの1.2mほどの高さで誘導灯が設置され、天井照明は消えていました。トンネル工事のために天井照明を壁面誘導灯に変えたことで、電源ケーブルは、最も高さがある天井から壁面へと移設されていたのです。
「助人トンネル」は1959年(昭和34年)に完成した古いトンネルで、大型車がすれ違う十分な余裕がありません。路肩からほぼ垂直に側壁が立ち上がり、車体が接触する可能性もあります。なぜ車両と接触するような場所に電源ケーブルが敷設されていたのか。直接原因の背後には、道路管理に対する疑問が残ります。
トンネルは国道ですが、奈良県が管理します。事故当時から奈良県は、警察の捜査終結後に、道路管理のあり方を報告するとして、工事と事故の因果関係の究明を先送りしてきましたが、荒井正吾知事は2022年12月12日の会見で、これを変更しました。
「年が明けて、できるだけ早い間にもその事故の教訓をどう捉えたかというような報告を、その捜査と別にやればいいかと思います」
しかし、道路保全課がまとめた中間報告は内部に留まり、知事の目指す1月中の公表はありませんでした。
明確な再発防止策が示されないまま時間だけが過ぎていきます。
Writer: 中島みなみ
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。





