初心者向けで参加料200円 なのに初心者が来ない!? 二普協主催バイク・スキルアップ講習の悩み
日本二輪車普及安全協会が主要地域で開催するバイクのスキルアップ講習「グッドライダーミーティング」が見直しを迫られています。運転初心者のスキルアップで交通事故減少を狙うはずが、参加者の大半が、いわゆる「常連」で埋め尽くされているからです。
2023年の開催予定公開中、好評の裏にある主催者の悩み
2023年に全国主要地域で開催される「グッドライダーミーティング」の日程が公表されました。そのポスターのキャッチコピーが『ビギナー向け 二輪車安全運転講習会』となっています。

主催の日本二輪車普及安全協会(以下、二普協)の各地開催ページを見ると、特別にビギナーを狙ったかのような募集内容です。
・U39(39歳以下)限定
・レディースday
・初心者(過去一度も参加したことない人)優先受付
ビギナーが参加しやすい条件設定になっています。サーキットの体験走行では入場料金や走行料金が必要ですが、グッドライダーミーティングの参加費は格安の200円(傷害保険料)で、急制動、パイロン走行などを盛り込んだ半日の講習を受けることができます。
ライダーにとって、スキルアップ講習は運転の不安を減らしてくれるので好評です。また、バイクメーカーや販売店にとっても、事故防止につながるので、開催が増えています。
二普協は、活動の柱に交通安全を掲げているため、事故防止には敏感です。とくにビギナー向けの講習を打ち出してきたのかと思いきや、そうではありませんでした。担当者は困惑気味にこう話します。
「グッドライダーミーティングは、もともと初心者向けの安全運転講習会なのです」
2023年のプログラムでは、なぜビギナー向けを強調したのでしょうか。グッドライダーミーティングならではの悩みがありました。
想定を超えるいつもの顔ぶれ……新しいライダーに届かない?
グッドライダーミーティングは、開催地の交通安全協会やバイクショップの協力を得て、20年以上にわたって毎年開催されています。協会の公式ウェブページではこう説明します。

「基本のライディングから安全に乗るためのテクニックをベテランの指導員がクラス別にアドバイスしますので、運転経験の浅い初心者や久しぶりにバイクに乗るリターンライダーの方でも安心して参加できます」
指導員は、この講習会の悩みをこう指摘します。
「熱心な参加者が腕を競えるレベルにまで成長し、初心者向けに思われなくなっている。レベルが高い人が行くという感じ」
参加者の硬直化は、データに顕著に現れています。関係者は次のように指摘します。
「全国的に見ると、参加者の30%以上は、10回以上の受講経験者です。年齢的に見ると、50歳以上が約60%を占める。これに対して29歳以下は約8%に留まり、いかにして初めての参加者を増やすかは深刻な課題です」
講習会を支える熱心な参加者を維持しながら、新しいライダーを受け入れる環境を整えられることが理想ですが、指導員や会場の手配などで開催できるのは全国で年間100回程度。チャンスは限られています。
Writer: 中島みなみ
1963年生まれ。愛知県出身。新聞、週刊誌、総合月刊誌記者を経て独立。行政からみた規制や交通問題を中心に執筆。著書に『実録 衝撃DVD!交通事故の瞬間―生死をわける“一瞬”』など。