美味しいアジフライを求めて走る旅 ラスベガスでは日本の居酒屋文化が根付いていた!?
アジと言えばアジフライ! というライダーのために、美味しいアジフライを味わえる店を紹介します。日本を離れ、米国ラスベガスの『TAKUMI IZAKAYA』を訪れました。
異国の街にもあった、日本の居酒屋とアジフライ
いつだって美味しいアジフライを求めて走る筆者(増井貴光)は、毎年8月にアメリカのユタ州にあるボンネビル・ソルトフラッツで開催される、最高速を競うレース(ランドスピードレース)の撮影、取材を行なっています。昨年(2022年)はレース2週間前に降った雨で水が溜まってしまい、レースは中止。今年は2年ぶりのレースだ! と張り切って日本を後にしました。

ロサンゼルスに着いてからはラスベガスまでの国内便に乗り換えるのですが、ハリケーンがカリフォルニアに迫っていて飛ばないかもしれないとのニュースが入ります。結果的には大雨の中、飛行機は無事ラスベガスに到着しました。
しかし、この雨雲はラスベガスから北上してボンネビルにまで雨を降らしてしまったのです。ボンネビルは塩の平原で、雨が降るとウユニ塩湖のように水が溜まります。水面に空や周りの山々が映り込んで美しい景色になるのですが、レースはできません。
この日から1週間後に始まる予定だったレースは、水が乾く見込みが無く中止との連絡がありました。筆者がラスベガスに着いた翌日のことでした……。
2008年からこのレースに挑戦し、いくつもの最高速記録を持つ日本人がいます。ラスベガス在住のヒロ・コイソさんです。ハーレー・ダビッドソンのダイナを最高速レース用に改造し、2021年には時速400キロを超え、排気量3000ccのプッシュロッドエンジン、カウリング付きのクラスで世界最速の記録を獲得しています。
今年も自らの記録を塗り替えるべくレースの準備をしていたところで中止の連絡。サーキットとは違い、自然の地形を利用したレースなので致し方ないところです。

落胆していても仕方がないので、コイソさんファミリーと食事に行くことになりました。日本から来たばかりなのに、なぜか到着したのは居酒屋、ラスベガスのチャイナタウン近くにある「TAKUMI IZAKAYA」という店です。
店内に入って黒板に書かれたメニューを見て納得しました。コイソさんの奥さんであるエリンさんが「AJI FRY(アジフライ)」のある店を探してくれたのでした。
ラスベガスは、チャイナタウン近辺をはじめ多くのIZAKAYAがあります。また寿司屋も多く「TAKUMI IZAKAYA」でも寿司のメニューが豊富でした。しかも日本では見たこともないような巻物がいろいろあります。筆者は「AJI FRY」のみオーダーし、後はコイソさんファミリーにお任せしました。
見回すと、客は日本人だけでなく、当然ながらアメリカ人が多いです。日本における中華料理のように、日本的IZAKAYA文化も根付いているようですが、食事と一緒にアルコールを飲んでるお客さんが少ないのもアメリカらしいです。

などと考えていると料理が続々と出来上がってきました。PHILLY ROLLにJAPANESE LASAGNA……日本では見たこともない創作寿司です。PHILLY ROLLは、一番外側が海苔ではなくご飯、中に海苔、牛肉とキュウリが入っている巻物です。穴子のタレのような甘いソースがかけてあります。JAPANESE LASAGNAは、チーズと玉ねぎ、ホワイトソースっぽい味もします。ドリアの具をご飯に乗せている感じです。
そして主役のAJI FRYが登場です。小さめですが、ちゃんとアジフライです。あまり脂が乗っていないアジですが、日本で食べるアジと遜色はありません。サクッとした揚げ具合も完璧です。
後日、オクラホマで和食店のシェフをしている友人に訊いたところ、アメリカで流通しているアジは小ぶりだそうです。真鯵と形も味も似た魚が稀に手に入ることがあり、その魚で作ったフライは日本のアジフライと変わらないのだとか。

「TAKUMI IZAKAYA」では、ホテルなどの寿司レストランでチーフシェフを務めた中村さんという方がオーナーシェフです。アメリカ人向けの寿司ではありますが、日本人も美味しいと思える料理ばかりでした。
ほかにもいくつかの料理を食べて、デザートはオレオの天ぷらを添えたアイスクリームでした。既にビールを飲んでいた筆者はパスしましたが、美味しかったそうです。
この日に飲んだ生ビールはキリン。アジフライを肴に日本の生ビールをラスベガスで飲む……という行為が、日常なのか非日常なのか、分からなくなってきた筆者でした。
Writer: 増井貴光
旅をライフワークにバイク専門誌などで活躍するカメラマンでコラムニスト。国内だけでなく、アメリカでランドスピードレースやドラッグレースの撮影を続けている。著書としてユタ州ボンネビルで最高速に挑戦するライダーを撮影した写真集『bonneville』と、ルート66を実際に走って撮影した『movin’on』がある。また撮影だけでなく、イベント等の企画・運営にも携わるなどその活動は幅広い。愛車はハーレーFLTRXS、ホンダXR250とCT110