「バイクでUターン!!」 その難易度に直結する「最小回転半径」とは? スペック表から読み解く!
バイクのカタログや、メーカーHPに掲載されている「スペック」や「仕様」、「諸元」の表には、購入時の参考やライバル車との性能比較など、役立つ情報が含まれています。取り回しの良さに影響する「最小回転半径」の大きさを紹介します。
バイクのサイズでは決まらない「最小回転半径」
「最小回転半径」とは、車体を直立させ、ハンドルをいっぱいに切った状態で1周回った際の半径を指します。国内4メーカーでは、ヤマハを除いてホンダ、スズキ、カワサキのスペック表に記載があります。

最小回転半径はハンドルの切れ角(ステアリングアングル)によって決まるイメージがあります。確かにその通りですが、軸間距離の長さによっても変わります。またキャスター角やトレール量、タイヤのサイズも少なからず影響します。
たとえば軸間距離が1695mmと長い巨体のホンダ「ゴールドウイング」の最小回転半径は3.4mですが、軸間距離が1460mmとコンパクトな「CBR1000RR-R FIREBLADE」の最小回転半径は3.8mと、「ゴールドウイング」より大きくなります。
またホンダの「ホーク11」の最小回転半径は3.4mですが、エンジンやフレームがベースとなった「CRF1100Lアフリカツイン」の最小回転半径は2.6mしかありません。これはセパレートハンドルのカフェレーサー・スタイルと、林道など未舗装路で走破性を考慮したアドベンチャーの、バイクのカテゴリーの違いが設計に影響しているからでしょう。
傾ければ回転半径は小さくなるけれど……
最小回転半径が実際のライディングシーンで大きく関係するのは「Uターン」するときでしょう。ただし前述したように、スペック表の最小回転半径は「車体が直立した状態」で計測しますが、バイクの構造上、車体を傾けると回転半径は直立時より小さくなります。

そのため乗車して車体を傾けてUターンすると、スペック表の最小回転半径より小さく回ることができます……が、これはどれくらい傾けるか、その時どれくらいハンドルが切れているかも関係し、なによりライダーのスキルが大きく影響するので、数値化しにくいのと同時に、あまり参考になりません。
そこで、乗車せずに押し歩きでUターンする場合を考えると、一般的にライダーは車体の左側に立つため、右回りする時に車体を右側に傾けられないので、最小回転半径はおおむねスペック表の数値になります。反対に左回りする際は、ライダー側に少なからず車体を傾けられるので、右回りより回転半径を小さくできる可能性があります。
3.5mを超えるとUターンは無理!?
それでは道幅と最小回転半径の関係を考えて見ましょう。1車線の幅員は道路構造令で細かく定められていますが、ザックリ言うと、センターラインのある道路の場合は2.75m、3m、3.25m、3.5mの4種類になります(一般的な国道や高速道路は3.5mが多い)。

すると自分の車線と対向車線の2車線をフルに使ってUターンしたい場合、幅員の幅よりも最小回転半径が小さければ(数字上では)一発でUターンできることになります。
たとえば道幅がもっとも狭い2.75mの場合、ホンダの「CL250」は最小回転半径が2.6mなのでUターンできます。しかし「CL250」のベースとなったクルーザースタイルの「レブル250」では、最小回転半径が2.8mなので(直立した状態では)一発でUターンすることができません。
その意味では、前出の「CBR1000RR-R」は最小回転半径が3.8mなので、もっとも広い道幅3.5mの道路でも(直立した状態では)Uターンできないことになります。

それでは小さいバイクの代名詞とも言える、ホンダ「モンキー125」はどうでしょう? 最小回転半径は1.9mと小さく、原付(50cc)スクーターの「ジョルノ」の1.8mと大差ありません。これならかなり狭い道でも、簡単にクルリとUターンすることができます。もちろん押し引きでの取り回しの良さも抜群なので、駐輪場などの出し入れも簡単です。
というワケで、普段の取り回しやツーリング先でのUターンを考えると、バイク選びの際には「最小回転半径」の大きさも、選考基準のひとつになるかもしれません。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。