「ライド・バイ・ワイヤ」ってナニ? スロットル操作が電気信号で?

日々進化するバイクのメカニズム。英文字やカタカナで表記される最新機構も数多く、いったいどんな機構で、バイクに乗る上でドコに役立つのかいまひとつ解らない「コレってナニ?」という装備が盛り沢山です。今回はその中から「ライド・バイ・ワイヤ」について解説します。

電気信号でスロットルを開閉

 バイクはハンドル右側のアクセルグリップ(スロットル)をひねって開けると、エンジンの回転が上がってスピードが出ます。反対に、ひねる力を抜いてアクセルを閉じると、回転が下ってスピードも落ちます。このアクセルの開け閉めを、かつてはすべてのバイクが機械式のケーブルで行なっていましたが、近年は電気配線で開け閉めの信号を伝える機構が登場しました。これが「ライド・バイ・ワイヤ」と呼ばれる方式で、電線=Wire(ワイヤ)を介することから、この名前が付きました。ちなみにホンダは「スロットル・バイ・ワイヤ」と呼んでいますが、機構としては基本的に同じものです。

ホンダ「CBR250RR」のスロットル・バイ・ワイヤ(ライド・バイ・ワイヤと同義)のアクセルグリップ。機械式のケーブルが無いのでスッキリした外観
ホンダ「CBR250RR」のスロットル・バイ・ワイヤ(ライド・バイ・ワイヤと同義)のアクセルグリップ。機械式のケーブルが無いのでスッキリした外観

 なぜ機械ケーブルではなく電気配線でアクセル(スロットル)の開け閉めを伝えるのか? どんなメリットがあるのか? それを知るには、バイクの燃料供給の仕組みを、少し歴史を遡って理解するのが早道です。

キャブレターも既存のFIも、機械ケーブルでスロットル操作

 バイクのエンジンは、ガソリンと空気を混ぜた「混合ガス」を吸い込み、点火プラグで着火して爆発することでエネルギーを生み出します。この混合ガスを作って、エンジンに供給する量を調整するのに、かつては(バイクが登場した19世紀末から、おおむね100年間くらい)キャブレターと呼ばれる装置が使われていました。詳細な構造は割愛しますが、アクセルと繋がった機械ケーブルがキャブレター内のピストンを上げ下げして、混合ガスの量をコントロールすることでエンジンの回転数が変わります.

キャブレターの構造の概念図。エンジンが空気を吸い込む際に生じた負圧を利用して、物理現象で混合ガスを作り出す。アクセルグリップ(スロットル)と繋がった機械ケーブルがキャブレター内の吸気通路を大きくしたり小さくしたりする構造
キャブレターの構造の概念図。エンジンが空気を吸い込む際に生じた負圧を利用して、物理現象で混合ガスを作り出す。アクセルグリップ(スロットル)と繋がった機械ケーブルがキャブレター内の吸気通路を大きくしたり小さくしたりする構造

 そして1980年代の初頭に、電子制御式燃料噴射装置(フューエル・インジェクション=FI)が登場します。こちらはキャブレターに替わってスロットルボディと呼ばれる筒状の吸気通路をバタフライバルブで開け閉めして空気の量を調整し、ガソリンをインジェクターで噴射して混合ガスを作ります。噴射するガソリンの量は、その時点のエンジン回転数やスロットル開度などの情報を元にECU(エンジントロールユニット=コンピュータ)のプログラムによって決めています。

 フューエルインジェクション化は動力性能の向上もありますが、バイク全体でみると「排出ガス規制」への対応が主目的と言えます。そのため、2010年頃には公道用の市販バイクのほとんどがフューエルインジェクション仕様になりました。

コンピュータが最適の開度に操作!

 動力性能、環境性能に長けたフューエルインジェクションですが、その進化版が「ライド・バイ・ワイヤ式」です。既存のフューエルインジェクションとの違いは、アクセルグリップには開度を検出するセンサーが組み込まれており、電気信号で開度をECUに伝え、スロットルボディのバタフライバルブをサーボモーターで開閉している点です。吸気量も燃料を噴射する量のコントロールも、すべてをECUが行なっています。

「ライド・バイ・ワイヤ式」のフューエルインジェクションの概念図。空気の流量を調整するバタフライバルブの開閉を、ECUからの電気信号でサーボモーターが行っている
「ライド・バイ・ワイヤ式」のフューエルインジェクションの概念図。空気の流量を調整するバタフライバルブの開閉を、ECUからの電気信号でサーボモーターが行っている

 それではサーボモーターでバタフライバルブを開閉するライド・バイ・ワイヤは、何がメリットなのでしょうか?

 じつは、ライダーが操作するアクセル(スロットル)の開度と、スロットルボディのバタフライバルブの開度は比例していません。ECU(エンジンコントロールユニット)に書き込まれたプログラムによって、ライダーが操作するアクセル開度の他にも、スピードやエンジン回転数、使用ギアなど多くの情報を元に最適な開度を決め、その電気信号でサーボモーターがバタフライバルブを開けているからです。

 そのため、ライダーの右手がアクセルを全開にしても、スロットルボディのバタフライバルブが全開とは限りません。

「ライド・バイ・ワイヤ式」のフューエルインジェクションのスロットルボディ。中央上部の筒状の部分がサーボモーターで、ECUからの電気信号でバタフライバルブを開閉している
「ライド・バイ・ワイヤ式」のフューエルインジェクションのスロットルボディ。中央上部の筒状の部分がサーボモーターで、ECUからの電気信号でバタフライバルブを開閉している

 前述したように、ECUはフューエルインジェクションの燃料噴射量や、点火プラグの点火時期も制御しています。さらにはIMU(慣性計測装置)装備のバイクでは、検出した車体の姿勢も加味したうえで、最適なスロットルバルブの開度と開き方(スパッと素早く開いたり、ジワ~ッとゆっくり開いたり)をコントロールしています。

 近年のバイクはライディングモード(パワーモード)やトラクションコントロールなど、ライダーをサポートしてエンジン出力を自動的に調整する様々な電子デバイスを装備していますが、ライド・バイ・ワイヤの登場以前は、基本的にフューエルインジェクションの燃料噴射量と点火タイミングでコントロールしていました。

 しかしライド・バイ・ワイヤ式のバイクは、それらの制御に加えて「スロットルの開け方そのもの」までもコントロールしているワケです。言うなれば、スキルの高いライダーが繊細に最適なスロットル操作を行なっているような状態なので、よりスポーティで安全なライディングをサポートしてくれるのです。

【画像】キャブレターからライド・バイ・ワイヤまでを見る(20枚)

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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