スズキ二輪が対応する「E10ガソリン」ってなに? レース現場での挑戦が市販車に活かされている!?
スズキが2026年春に発売した「V-STROM800」シリーズは、同社の国内向けモデル初の「E10ガソリン対応車」になります。……が、そもそも「E10ガソリン」とはどんなガソリンで、どこで売っているのでしょうか?
国内向け「E10ガソリン」対応バイクが登場
スズキは2026年3月25日発売の「V-STROM800」シリーズの2026年モデルを、日本国内向けスズキ二輪車初の「E10ガソリン対応車」と発表しました。その後に発表された「GSX-8S」や「GSX-8R」の2026年モデルも、E10ガソリン対応車としてリリースされています。
ガソリンの種類と言えば、すぐにハイオク(無鉛プレミアム)やレギュラーが思い浮かびますが、E10ガソリンはあまり馴染みが無いのではないでしょうか? そもそも、ガソリンスタンドで売っているのでしょうか?

そもそもE10ガソリンって、なに?
E10ガソリンとは、従来のガソリン90%にバイオエタノール10%を添加したガソリンのことで、エタノール(Ethanol)の頭文字と「10」%が名称の由来です。
そしてバイオエタノール(バイオマスエタノールとも呼ぶ)とは、サトウキビやトウモロコシなど植物由来の原料を発酵させ、それを蒸留して生産するアルコールの一種であるエタノールのことを指します。
バイオエタノールは再生可能な自然エネルギーであり、燃焼によって大気中の二酸化炭素(CO2)を増やさない点から、従来のガソリンと混合することで、脱炭素化に貢献します。
すごく簡単に言うと「環境にやさしいガソリン」になり、将来が期待されています……というか、海外ではすでにE10ガソリンが一般化している国も少なくありません。
前述したように、「E10」はガソリンに対するバイオエタノール比率を名称にしていますが、欧州では「E5」(バイオエタノールが5%)がメジャーで、E10ガソリンも増えつつあるようです。またアメリかではE10ガソリンの販売が義務付けられる州もあるそうです。
またサトウキビ生産などが盛んなブラジルは、1970年代の石油ショックの影響もあり、バイオエタノールの普及が国策として進み、現在は「E27.5」が標準になり、他にも「E85」や「E100」(バイオエタノール100%)も販売されているそうです。
そして日本でも、バイオマス由来の燃料の普及を目指して様々な取り組みを行っていますが、現時点ではほとんど普及していないのが実情です。
しかし資源エネルギー庁は2024年の11月に、2030年度までにE10ガソリンの供給を始める方針を固め、2040年度からはE20ガソリン供給も検討しています。
とはいえ諸外国に比べ、なぜ日本ではE10ガソリンの普及が遅れているのでしょうか?
理由は定かではありませんが、クルマやバイクのEV化の促進によって、ガソリンの供給量自体が減少していくことや、E10ガソリンの製造や販売に対するインフラの整備コストも問題になっているようです。
そもそも日本は、ガソリンの元となる重油はもちろん、混合するバイオエタノールも輸入に頼っているのが現状なので、それも普及を遅らせている一因かもしれません。
外国車や輸出モデルは対応車が多いけど……
スズキの新型「V-STROM800」シリーズなどが「E10ガソリン対応車」と言いますが、これまでと何が違うのでしょうか?
E10ガソリンに使われるバイオエタノールはアルコールの一種のため、エンジンや燃料系統に使われるゴム系のパーツを傷めたり、アルミを腐食させる可能性があると言われます。
しかし近年は日本でもE10ガソリンの販売を考慮して自動車メーカーは対応を進めており、クルマに関しては多くの現行車両がE10ガソリンを使用しても問題ないと言われています。
バイクにおいても、海外メーカーのバイクの多くはE5やE10ガソリンに対応しており、燃料タンクの給油口付近に、それを示すステッカーが貼られていたりします。コレは「E10(エタノール10%)までは使用可能で、それ以上のエタノール比率の燃料は不可」という意味です。
そして日本メーカーも、輸出仕様のバイクはすでにE5やE10ガソリン対応にしているパターンが多いようです。スズキが「日本国内向けスズキ二輪車初のE10ガソリン対応車」と表記しているのはそのためです。
……こう書いてしまうと、「従来モデルと大差ないのでは」と思われそうですが、果たしてそうでしょうか?
トラブルを防ぐことはもちろんですが、「ガソリンの性能」はエンジンの性能に少なからず影響するのは事実で、E10ガソリンもその可能性は否めません。
その点スズキは、2024年から鈴鹿8時間耐久レースの実験的クラスである「エクスペリメンタル」クラスに、「チームスズキCNチャレンジ」で参戦を続けています。

これは同社のスーパースポーツモデル「GSX-R1000R」をベースに、様々なサステナブルアイテムを採用したマシンで、2024年は「エルフMoto R40 FIM」という40%バイオ由来原料の燃料を使用しました。
さらに2025年の鈴鹿8耐では、100%サステナブル燃料の「トタルエナジーズ Excellium Racing 100」という燃料を使用しており、2026年の鈴鹿8耐も同じ燃料で戦います。
もちろんこの燃料とE10ガソリンは異なるモノですが、性能最優先のガソリンではなく、環境負荷の少ないサステナブル燃料という点は共通しており、その挑戦の知見を市販車にも活かしていると考えられます。
国内ではE10ガソリンの普及はまだしばらく先になりそうですが、それを見据えたE10ガソリン対応車ならば、「長く乗り続けられる安心が手に入る」と言えるのではないでしょうか。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。










