不動車のホンダ「ベンリイC92」をエンジンのプロがレストア!遂にエンジン組み立て作業スタート【vol.7】
老舗内燃機屋「井上ボーリング」で、年間700台ものヘッド再生を行うベテランヘッド技師が、不動車となったホンダ「ベンリイC92」の再生とモディファイを行う連載。第7回目は、部品単位でのオーバーホールが完了し、エンジンの組み立て作業を行います。
ダイナモ側(左側)が手強いエンジンの組立
まずは5速ミッションに合わせた加工が完了したアッパーケースにシフトドラムを差し込み、3本のシフトアームを取り付けてからプライマリーシャフト、カウンターシャフト、キックシャフト、クランクを載せていきます。
シール類はベンリイC92用の物を用意しましたが、カウンターシャフトはシール部にスリーブが付いていて径が大きくなっている為、ホンダ「CB125」用のものでなければなりません。
しかし今回は、ちょうど良い部品が見つからなかった為、サイズが同じヤマハの純正品を流用する事に決めました。

ロアケースの合わせ面に液体ガスケットを塗り、カムチェーンテンショナーロッドを取り付けてから被せたら、ケース上下のボルトナットを締め付けていきます。
次にクラッチカバー内(右側)の組み付け。
キックシャフトのリターンスプリングとチェンジシャフト、シフトドラムストッパーを取り付けたら、クラッチバスケットとコンロッドでつながったオイルポンプを同時に挿入するのですが、プライマリーシャフトのスプラインが違う為、ベンリイC92用のクラッチは付かないので、こちらもCB125の方を使うことになります。

後は遠心フィルターを差し込んでクラッチカバーを被せておきます。
このエンジンはダイナモ側が面倒です。まずカムチェーンが一番奥なので先に腰上を組付けてカムチェーンを張らなければなりません。
バルブタイミングを合わせる為に仮組したジェネレーターコイルとマグネットローターの刻印を合わせますが、ここでCB125のローターを使用すると上死点の刻印がずれてしまう為注意。
ベンリイCD125でもOKですが今回はジェネレーターコイルと同じベンリイC92用を使います。
ジェネレーターコイルの繋ぎ変えによる12V化
ここで12V化に向けたジェネレーターの加工を忘れていた事に気が付き、コイルの繋ぎ変えを行いました。
ジェネレーターコイルはベンリイC92からベンリイCB125まで大きな変更は無く、6個のコイルを2個ずつ直列に繋いだ3並列になっています。
これを3個直列に繋いで2並列にする事で、走行時には13V強の電圧を確保することができ、これに全波整流レギュレーターを組み合せます。

ちなみに、このベンリイC92というバイクは、ホンダが本格的に大量生産に取り組む事になる過渡期に作られた車両で、今では考えられない程にコスト度外視の構造やメンテナンス性が悪い構造が、そこかしこに見られる事も特徴のひとつ。
後年式車では、それらが如何に改善されていったかがよくわかりますが、それと同様にサービスマニュアルも如実に進化している事を思い知らされました。
ベンリイC92は細かい仕様変更が何度もあった為、仕方がない部分もありますが、実物と違うところや明らかな誤記載も多い上に、写真が少なく、作業手順の説明が箇条書きの文章で、メンテナンスとは無関係な仕様の説明が多い割に肝心な事が載っておらず、ほぼばらした時の記憶頼りの作業というのが実感です。
この事実に気付いた後に、同じホンダで20年後に作られた「CB250RS」を見ると、ほんの1時間程度でフレームもエンジンも単体にバラせる程の整備性の良さや頼りになるサービスマニュアルなど、素晴らしい技術の進歩に改めて感心します。
次回は、高性能キャブレターのマウントとそれに伴うフレームカバーの加工を紹介します。
Writer: 市川信行(井上ボーリング ヘッド技師)
川越で創業70年の老舗内燃機加工屋「(株)井上ボーリング」で多種多様な4ストロークエンジンのシリンダーヘッドに関するオーバーホール作業を担当する加工技師。プライベートでもバイクのレストアを趣味としており、趣味を仕事に生かしてるのか仕事を趣味に生かしているのかよく判らないこの状況を楽しみながら、年間700台前後のヘッド再生をこなしている。










