【マン島TTレース2024】アライヘルメット公式パートナー40周年を記念してパレードが開催される
1907年から始まり、現存する世界最古のバイクレースとして知られる「マン島TTレース(Isle of Man TT Races)」が2024年で118年目を迎え、5月27日に開幕しました。そこではアライヘルメットが公式パートナーとして携わってきた40年を記念して、パレードが行なわれました。
マン島TTレースとアライヘルメットのつながり
1907年から続く「マン島TTレース(Isle of Man TT Races)」の長い歴史の中で、日本のメーカーが果たした役割は小さくありません。アライヘルメットも例外ではなく、TTレースの公式パートナー40周年を祝うパレードランが、TTレースウィークの開幕に合わせて6月1日(土)に行なわれました。

パレードは、アライヘルメット取締役副社長の新井章仁さんがTTレースのスタートフラッグ台に登り、公式スタート方式に則って赤い三本脚徽章のマン島国旗を振り降ろして始まりました。
マン島と日本の関わりで良く知られているのは、ホンダの創業者・本田宗一郎が1954年に「マン島TTレース出場宣言」をし、1959年の初参戦からわずか3年後の1961年には優勝を飾ったことです。それをきっかけに、日本のバイク産業は戦後の復興をも担う世界のバイク産業とモータースポーツ界を牽引する存在になる一因となりました。
創業明治35年(1902年)の日本を代表するヘルメットメーカー、アライヘルメットは、1986年に往年の名ライダーであるジョーイ・ダンロップとブライアン・リードをサポート。以来、TTレースの公式パートナーとしてトラベリング・マーシャル(走行中にバイクで走りながらレースの行方を見守る元TTライダーで構成される組織)へのヘルメットの提供、選手へのレーシングサービスや、グランドスタンド裏のパドックに出店して一般客へのヘルメットメンテナンスなどを40年にわたり行なってきました。
2007年のTTレース100周年では記念デザインのヘルメットを発売。この年限りの発売予定でしたが反響が大きく、それから毎年TTレースのイヤーモデルを発売しています。

パレードに参加したのは、アライヘルメットと縁があるTTレース経験者と、現役のサポートライダーたちです。道路はレースと同じく完全に閉鎖されて開催されました。
パレードに参加したブライアン・リードは、1992年にジュニアTTで優勝したマシンを持ち込みました。現在、ジョン・マクギネス選手がコレクションしている当時のヤマハ「ロックタイトTZ250」で出発。残念ながら途中マシントラブルでリタイヤとなりましたが、久しぶりに2ストロークのエキゾーストノートと、2ストロークオイルの匂いでコースが満たされました。
2017年に日本のチーム無限の電動バイク「神電」で、TT Zeroクラス優勝を飾ったニュージーランドのライダー、ブルース・アンスティも登場。彼は癌の治療のためレース活動を休止していて、嬉しい再会となりました。
普段はデザインペイントを施していない真っ黒なヘルメットにニュージーランドの象徴であるキウイ鳥の黄色いイラストをあしらったヘルメットを被る彼ですが、今回のパレードではTT記念モデルを被りました。

また、2018年のTT Zeroでチーム無限の「神電」で3位になったリー・ジョンストン選手は、今年は怪我でTTレースを欠場していますがパレードには参加しました。
2002年ライトウェイト400TTの優勝者で、現在はTTライダーリエゾン(ライダーと主催をつなぐ役割)責任者のリチャード“ミルキー”クエールは、今年のトラベリング・マーシャルが使用するホンダ「CBR1000RR-R」でパレードに参加しました。
現役TTライダーからは、若手最速のデイビー・トッド選手、現役最多勝利中のマイケル・ダンロップ選手、2010年に全てのレースで優勝した記録を持つイアン・ハッチンソン選手、サイドカーの現役選手で、ベンとトム・バーチャルの兄弟選手、2度の英国スーパーバイク選手権チャンピオンのジョシュ・ブルックス選手、地元マン島在住でカフェを経営する実業家でもあるコナー・カミンズ選手などもパレードに参加しました。
「パレード」と言っても、TTレースでは伝統的にレーシングアベレージで走るライダーがほとんどで、今回もトップで戻ってきたライダーはラップタイム17分ほどと、レースと同じ勢いで走行していました。

パレードのスタートフラッグを振った新井さんは「選手の方に、40周年をパレードという形で祝っていただくなんて、なかなかないことなので本当に光栄に思っております。携われて本当に良かったです」とコメント。
世界でもっとも過酷なバイクのロードレースと言われるマン島で支持され続けてきたアライヘルメットが、TTレースの長い歴史にその名を刻みました。
Writer: 小林ゆき(モーターサイクルジャーナリスト)
モーターサイクルジャーナリスト・ライダーとして、メディアへの出演や寄稿など精力的に活動中。バイクで日本一周、海外ツーリング経験も豊富。二輪専門誌「クラブマン」元編集部員。レースはライダーのほか、鈴鹿8耐ではチーム監督として参戦経験も。世界最古の公道バイクレース・マン島TTレースへは1996年から通い続けている。