兄弟車とは完全な別物 KTM「890 SMT」は旅が楽しめるスーパーモタードだ!?

日本市場では2023年8月に発売されたKTM「890 SMT」は、排気量889ccの並列2気筒エンジンを搭載する「890アドベンチャー」をベースに前後17インチホイールを装備し、専用チューニングが施された「スーパーモトツーリング」モデルです。どのような特徴があるのでしょうか。試乗しました。

初代とは異なる、誕生の経緯

 2023年から発売が始まったKTM「890 SMT」は、KTMにとっては2009年から2010年代中盤に販売した「990 SMT」以来となる、「旅:TRAVEL」が楽しめる「スーパーモタード(スーパーモト):SM」です。

KTM「890 SMT」(2023年型)に試乗する筆者(中村友彦)
KTM「890 SMT」(2023年型)に試乗する筆者(中村友彦)

 ちなみに、かつての「SMT」が「950/990アドベンチャー」→「950/990 SM」→「990 SMT」(3車は基本設計の多くを共有)という段階を踏んで生まれたのに対して、「890 SMT」の開発ベースは「890アドベンチャー」です。

 つまり新世代の「SMT」は、「SM」をスッ飛ばして、と言うより、「SM」が存在しない状況で生まれたのですが、十数年前と比較すると近年のミドル以上のスーパーモタード市場は縮小傾向ですから、その事実に違和感を抱く人はあまり多くはないでしょう(かつてはKTMに加えて、ドゥカティやBMWも大排気量スーパーモタードを販売していた)。

 もっとも、「ミドル以上のスーパーモタード市場が縮小傾向なのに、ナゼいま?」という疑問を持つ人はいるかもしれません。その疑問に対する私(筆者:中村友彦)の回答は、「アップライトな乗車姿勢+豊富なサスペンションストローク+前後17インチタイヤのスーパーモタードでしか実現できない世界があるから」です。

 端的に言うなら、このモデルのキャラクターは悪路走破性を重視した「890アベンチャー」や、オンロードでのスポーツ性に注力した「890デューク」とは完全な別物で、試乗後の私はスーパーモータードというジャンルに対するKTMのこだわりを、改めて実感することになりました。

兄弟車との、共通点と相違点

 前述したように、「890 SMT」の開発ベースは「890アドベンチャー」で、クロモリ素材のフレームやオープンラティス構造のアルミスイングアーム、75度位相クランクのパラレルツインエンジンといった主要部品は共通です。

KTM「890 SMT」(2023年型)
KTM「890 SMT」(2023年型)

 その一方で、外装やライディングポジション関連パーツは各車各様で、「890アドベンチャー」を基準にして考えると、スクリーンとハンドルが低くて燃料タンク容量が少なく、前後タイヤが小径の「890 SMT」はコンパクトな印象です。

 ただし気軽さやフレンドリーさという点では、シート高を見ると820mmの「890デューク」の方が優位でしょう。「890アドベンチャー」は840/860mm(2段階調整可能)で、「890 SMT」は860mmです。

 続いてスーパーモタードの要となる足まわりの説明をすると、まず前後タイヤのサイズは、「890デューク」やかつての「990 SMT」と同じ、フロント120/70ZR17、リア180/55ZR17です。ちなみに「890アドベンチャー」は、フロント90/90-21、リア150/70R18です。

 そしてサスペンションのストローク量は、「890アドベンチャー」の前後195mm、「890デューク」のフロント140mm、リア150mmに対して、「890 SMT」は前後180mmです。となれば、そのキャラクターはアドベンチャーとデュークの中間……のような気がしますが、実際はそんな安易な言葉では語れない資質を備えていました。

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