「金」とか「黒」とか超・カッコ良い!! バイクのフロントフォークのインナーチューブは「銀」だけじゃない!?
バイクのフロントフォークのインナーチューブは、シルバーのメッキ仕上げが一般的です。ところがゴールドやブラック、その他の色のインナーチューブも(たまに)見かけます。なんだかカッコいいしカスタム車にも多いようですが、ルックス以外にもメリットがあるのでしょうか?
インナーチューブは硬質クロムメッキをかけている
バイクのフロントサスペンションは、太さが異なる筒を重ねて上下に伸縮する「テレスコピック式フロントフォーク」が一般的です。かつては正立式が主流でしたが、近年は上下を逆さまにした「倒立式」が増えています。
そんな構造の違いはありますが、重ねた筒の細い方の「インナーチューブ」の色は、たいていが艶々したシルバーです。これは金属のパイプ(インナーチューブ)の表面に、硬質クロムメッキをかけているからです。
路面の凹凸を吸収するために、テレスコピック式フロントフォークは外側の筒(アウターチューブ)と内側の筒(インナーチューブ)が常に伸縮を繰り返していますが、そこで大きな摩擦抵抗(摺動抵抗)が生じると、当然ながらタイヤの路面追従性が落ちてしまいます。
また常に伸縮しているため、擦れ合う部分が摩耗してしまいます。

そこで摺動抵抗を抑えてスムーズに伸縮し、かつ摩擦による摩耗を抑えるために、頑丈で摩擦抵抗の少ない硬質クロムメッキをかけており、クロムメッキは基本的に艶のあるシルバーの色になります。
それでは、たまに目にするゴールドやブラックのインナーチューブは、硬質クロムメッキと何が違うのでしょうか?
じつはゴールドやブラックのインナーチューブも、下地には一般的なシルバーのインナーチューブと同じように硬質クロムメッキがかけられていて、その上に「コーティング」を施しているのです。
そのコーティングには、代表的なもので「チタンコーティング」と「DLCコーティング」があります。
「チタンコーティング」とは?
まずゴールドの場合は「チタンコーティング」を施したものが多く、バイクのインナーチューブの場合は主に「イオンプレーティング」と呼ぶ方法でコーティングしています(他の製法もアリ)。

イオンプレーティングは「PVD」と呼ばれる真空蒸着法の一種です。真空中でチタンやクロムなどの金属素材を蒸発・イオン化し、プラズマ状態にして対象となる基材表面(硬質クロムメッキを施したインナーチューブの表面)に高速でぶつけて皮膜を生成する表面処理技術です。
チタンコーティングを施すと、インナーチューブの表面の面粗度(超簡単に言うと表面の凸凹の度合い)が向上するため、伸縮する際の摩擦抵抗が大幅に軽減されてフロントフォークの動きがスムーズになります。
またチタンコーティングを施すと表面硬度が硬質クロムメッキより2~3倍も高くなるため摩耗しにくくなり、飛び石などによる傷つきも軽減されます。また防蝕性(サビにくい)も高まります。
ちなみにチタンコーティングの色はゴールドが主流ですが、蒸発・イオン化させる素材の種類によって、色と硬度が変わります。
そのためブルーやパープル、ピンクやブラックなどの色も可能ですが、色によってはチタンではない素材を使うこともあるため、その場合は厳密にはチタンコーティングではありませんが、この表面処理技術の総称として、チタンコーティングと呼んでいます。
「DLCコーティング」とは?
次にブラックのインナーチューブですが、これは多くの場合が「DLCコーティング」になります(チタンコーティングでもブラックが可能なので見分けにくいかも……)。
DLCは「Diamond-Like Carbon」の略で、「ダイヤモンドのように硬い炭素被膜」のコーティングという意味になります。

DLCコーティングには様々な製法がありますが、チタンコーティングと同様のイオンプレーティングが用いられることが多いようです。
チタンコーティングより表面硬度が高いDLCコーティングは、高潤滑性や摺動性の高さ、耐摩耗性でもチタンコーティングを凌ぐと言われています。
デメリットとしては、チタンコーティングより加工コストが高くなるところでしょうか。
ちなみにDLCコーティングはフロントフォークのインナーチューブだけでなく、近年は性能を重視するスーパースポーツ系のエンジンのカムシャフトやフィンガーフォロワー、コンロッドなどにも施されています。
これも摩擦抵抗(フリクションロス)を抑えてパワーの向上やレスポンスを高めるのが目的です。

というワケで、ゴールドやブラックなどのインナーチューブは、バイクの運動性能を高めるためにレース技術から生まれた表面処理加工です。とはいえルックス的にもカッコ良いので、カスタムしたいと思うライダーもいるでしょう。
じつはサスペンションチューニングに長けたショップやメーカーでは、チタンコーティングやDLCコーティングを受け付けている場合もあります。
加工費だけでなく、フロントフォークの着脱や分解・組み立て費用も掛かるので手軽なカスタムとは言えませんが、スポーツ性が大きく向上するので一考の価値はある、と言えるでしょう。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。










