ハーレー「ロードグライド3」を試乗したからこそ感じる トライクの安全性と現実

ところでオクタン価って何?

 ではそのオクタン価とは何ぞや、ということを改めて説明すると、これは「ガソリンの自然発火のし難さ」を示すパラメーターであり、この数値が高ければ高いほど自然発火が「ガマンできる」ということになります。

アメリカのガソリンスタンド(イメージ写真)
アメリカのガソリンスタンド(イメージ写真)

 ガソリンエンジンはスパーク着火式であるため、最適な着火タイミング以前にガソリンが自然着火することがないよう、コントロールする必要があるのですが、当然、エンジンのピストン上昇による圧縮発熱によって自然着火してしまうことを避ける必要があります。それを防ぐのが、いわゆるハイオクガソリンなのです。

 そして、この『自然発火』はカムタイミングや点火時期(遅角)で防げる類のものではありません。ゆえに日本のガソリンオクタン価事情を考えると燃焼室加工やピストンの変更による圧縮比の適切化が必要になります。

 基本的にはアメリカという市場を見据え、生産されているハーレーを、そのまま日本で走らせると明らかな過剰圧縮なのですが、コストや市場規模の問題を考えると、いちいち日本仕様を生産することが出来ないのも現実なのでしょう。重量のあるトライクの場合、エンジンの熱を顕著に感じたのも気になったポイントです。

適切な圧縮比を実現するサンダンス製のピストン「Sundance-Omega T-Spec Hyper Pistons for TC」
適切な圧縮比を実現するサンダンス製のピストン「Sundance-Omega T-Spec Hyper Pistons for TC」

 もちろん、筆者個人としては、こうしたことを書いてネガティブなことを伝えたいわけではなく、少しでも注意喚起になればと思うのも本音です。幸いにもハーレーにはドレスアップパーツのみならず、エンジンを日本仕様に適正化するピストンやシリンダーヘッドなども市場に流通しているので、改善の余地は必ずあります。

 たとえば「トライクは転倒の心配がない」「普通自動車免許で乗れる」などをテーマにし記事にすることも簡単ですが、独特の操作感覚や車体重量とエンジン圧縮比の関係などの現実を伝えることもメディアの使命なのではないかと個人的に考えます。

全長2,615mm、ホイールベース1,670 mm、そして車両重量528kgを誇る車体の存在感は数あるハーレーの中でも随一。トライクならではの姿は、やはり迫力です
全長2,615mm、ホイールベース1,670 mm、そして車両重量528kgを誇る車体の存在感は数あるハーレーの中でも随一。トライクならではの姿は、やはり迫力です

 そうしたことを踏まえ、バイクとは違う運転特性や重量によるエンジン負荷などを分かった上で楽しむ分にはトライクを否定する要素はありません。先日、街中でハーレーのトライクをタンデムで楽しむカップルを見かけたのですが、それはそれで微笑ましい光景でした。だからこそ三輪の特性を理解した上で多くの人が安全に楽しむことを切に願うばかりです。

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Writer: 渡辺まこと

ハーレーや国産バイクなど、様々な車両をベースにアメリカン・テイストのカスタムを施した「CHOPPER」(チョッパー)をメインに扱う雑誌「CHOPPER Journal」(チョッパージャーナル)編集長。カスタム車に限らず、幅広いバイクに対して深い知識を持つベテラン編集者。

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