ハーレー「ロードグライド3」を試乗したからこそ感じる トライクの安全性と現実

トライクだから浮き彫りになった問題点とは?

 そうした部分を考えてもトルクを重視したハーレーのエンジンはトライクという乗り物に最適と思われがちですが、しかし、残念ながら車重があるトライクだからこそ浮き彫りになる問題があるのも正直なところです。

排気量1868ccのミルウォーキーエイト114エンジン。最大出力87hp/5020rpm、最大トルク159Nm/3000rpmのスペックは申し分ないですが、トライクの巨体で圧縮比が10.5:1という設定ゆえ、かなりの熱を感じたのが正直なところです
排気量1868ccのミルウォーキーエイト114エンジン。最大出力87hp/5020rpm、最大トルク159Nm/3000rpmのスペックは申し分ないですが、トライクの巨体で圧縮比が10.5:1という設定ゆえ、かなりの熱を感じたのが正直なところです

 それがハーレーの圧縮比と日本のガソリンオクタン価の問題なのですが、まず空冷の大排気量、2気筒のOHVツインであるハーレーは日本のガソリンオクタン価に適した圧縮比に改善しなければ、多くの場合、トラブルを引き起こします。

 ちなみに空冷のハーレーでは理論上、1800ccまでは8.5以下、2000ccまでは8.2以下が圧縮安全値となるのですが、スペック上のロードグライド3は排気量1868ccで圧縮比は10.5:1。実際に今回の試乗でも思ったのですが、まだ春先の肌寒い季節だったにも関わらず、エンジンの熱をかなり感じたのも正直な感想です。

ノッキングによってダメージを受けたクランクピンとピニオンシャフト。ピストンのみならずクランク周りにも大きなダメージを及ぼします(写真・イラスト提供 サンダンスエンタープライズ/ハーレーダビッドソンダイナミクス(株式会社マガジンマガジン刊)
ノッキングによってダメージを受けたクランクピンとピニオンシャフト。ピストンのみならずクランク周りにも大きなダメージを及ぼします(写真・イラスト提供 サンダンスエンタープライズ/ハーレーダビッドソンダイナミクス(株式会社マガジンマガジン刊)

 排気量が大きいから、それだけ熱量があり、エンジンもヒート気味になると考える人も多いかもしれませんが、しかし、多くの場合はエンジンの過剰な高圧縮による「プレイグニッション」(プラグが点火する前にシリンダー内の空気と燃料の混合気が着火する現象)と「ノッキング」(異常燃焼によるエンジンからの異音等)が原因です。

 ノッキングの原因は、不適切に低いオクタン価のガソリン使用や早すぎる点火時期、高すぎる圧縮化、ガソリンの希薄な混合気セッティング、燃焼室形状の悪さ、オーバーヒート、車重とギア比の選択ミスによる高負荷時などがあるのですが、これらによって異常燃焼が起こると燃焼室内の圧力は圧縮上死点前でありながら最大値まで上昇してしまいます。それがピストンやクランクに物凄い衝撃の負荷を与え、致命的なトラブルにつながるのです。

燃焼室内の異常燃焼により圧縮上死点前でありながら圧力が最大値まで上昇することでおきるノッキング(イラスト提供:サンダンスエンタープライズ)
燃焼室内の異常燃焼により圧縮上死点前でありながら圧力が最大値まで上昇することでおきるノッキング(イラスト提供:サンダンスエンタープライズ)

 バイクでもハーレーなどの空冷大排気量車の場合、上り坂などでエンジンから「キンキン」という音を感じたという方も多いと思いますが、これがノッキングであり、サイドカーやトライクなど牽引負荷の大きい重量のある車両の場合、それが顕著に表れます。実際、この日に試乗したロードグライド3は同時に乗ったストリートグライドやロードグライドといった「単車」より明らかにエンジンからの熱を感じたのですが、そうした部分を改善するにはやはり圧縮比の適正化が必要となります。

 ちなみにガソリンオクタン価の規定には「低速アンチノック性」を表す尺度であるリサーチオクタン価(RON)と「高速アンチノック性」を表す尺度であるモーターオクタン価(MON)の二つの測定法があり、それに準じて世界各国ではガソリンオクタン価が表記されています。

 アメリカはRONとMONの平均をオクタン価として表記し、対して日本のオクタン価表記はRONが採用されています。この問題に関して詳細まで書くと、かなりの文字数になってしまうゆえ、ここでは割愛させていただきますが、つまりはアメリカでの100オクタンは日本では実際には93.55となっており、同じ100オクタンでも実際には6.5近く低いのが現実です。

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