帰ってきた道先案内人シェルパ! フレンドリーだけど頼りになる相棒
一時はほぼ絶滅状態にまで追い込まれた軽二輪クラスのデュアルパーパス。カワサキが新型KLX230シリーズのラインナップを充実させるのは、オフロードバイクファンにとってはたいへん嬉しいところ。2007年に生産終了となっていたスーパーシェルパの後継が待望の復活です。ナンバー付きトレール(ホンダCRF250L<S>MD47)を愛車に持つ青木タカオさんが乗りました。
デュアルパーパスだけど背が高すぎない
トレイルライドで扱いやすい、穏やかさを持つ空冷SOHC2バルブ単気筒エンジンは従順なキャラクター。ゆっくりトコトコ走っても、スロットルレスポンスが過激しすぎないからギクシャクしません。フレンドリーで機能的、新型シェルパです。

前後サスがソフトに動くから、スロットルのオンオフだけで軽快に車体がピッチングし、意識を向けなくてもバイクの挙動を把握しやすい。手の内にある安心感は、デュアルパーパスでありながらもサスストロークが極端に長くないことも影響しています。

シート高が低く抑えられ、いつだって地面に足が届くという余裕もまた持ち味と言えるでしょう。シート高は845mmありますが、体重66kg(身長175cm)の筆者がまたがると乗車1G’で車高が沈み込み、両足が地面に余裕を持って届きます。
軽量で剛性の高いアルミテーパードハンドルが、ツーリングでも疲れにくいゆったりとしたライポジをもたらします。フューエルタンクからスリムな形状のシュラウドになめらかにつながる車体は下半身でホールドしやすく、前後移動もしやすくなっています。
最後発の隠し玉
1997年に発売したKLX250スーパーシェルパで、その名をカワサキは世に放ちました。ヒマラヤの山麓に住むチベット系ネパール人の少数民族で、登山における道先案内や荷物の運搬を行う人たちのことをシェルパと言います。
道なき道を進むマウンテントレイルは、スプリンターのような瞬発的なスピードよりも着実に歩を進め、道中の雄大な景色な自然を楽しむことに重きを置きます。
スーパーシェルパのベースとなったのは、1993年に「闘う4スト」のキャッチコピーでデビューしたKLX250SR。同年登場のエンデューロレーサーに灯火機類を備えた過激な公道バージョンで、パワーや走破性はピカイチ。スーパーシェルパは一線級のオフロード性能を持ちつつ、トレッキングバイクとして仕上げられていました。

今回デビューする新型もまたKLX230シリーズとしています。昨秋のジャパンモビリティショーでスタンダードのKLX230が発表され、今春の大阪モーターサイクルショー2024にてKLX230SやKLX230SMも展示。そのとき、シェルパの存在は明かされていませんでした。
隠し玉として最後発として発表されたのが、KLX230シェルパです。新型KLX230Sをベースにしています。
オンロードも俊敏
信頼性と扱いやすさを両立する単気筒エンジンは、ボア67×ストローク66mmで232ccの排気量。小径化された吸気ポートと径33mmの吸気バルブ、スロットルボア径32mmのフューエルインジェクションが、低中速域で十分なトルクとライダーの意思に忠実なレスポンスを実現。

ギヤ駆動のバランサーを採用し、エンジンの振動を低減。全回転域でスムーズなパワーデリバリーをもたらし、快適性と乗り心地の良さにも配慮されています。
ワインディングも軽快で、中高速域も元気よく回っていきます。6速トランスミッションのギヤレシオはつながりがよく、街乗りから高速道路まで幅広くカバー。トレイルで遭遇する長い登り坂も苦にしません。
ダートを想定したタフな装備
手の内にあると冒頭で述べましたが、タフで頼りがいのある走破性を持ちます。フロント21/リヤ18インチのホイールがセットされたフルサイズボディであることはもちろん、インナーチューブ径37mmのフロントフォークは200mm、リヤサスは223mmのストローク量を持ちます。

最低地上高240mmを確保し、オフロード専用モデルKLX230Rと同様の軽量なアルミスイングアームを採用。不足のないホイールトラベル量で、オフロード走行に対応します。
ローター径がフロント265mm/リヤ220mmのペタルディスクブレーキはコントロールがしやすく、ハンドル左のスイッチで前後ブレーキのABSをオフにすることもできます。
内側に金属プレートが入るハンドガードや、ヘッドライト下のパイプガード、オイルパンを幅広くカバーするアルミ製のスキッドプレートを標準装備。コンパクトに凝縮された親しみやすいデザインの中に、タフさを感じられます。



















