素直に嬉しい!! 世界最高峰クラスで小椋藍選手が見せた笑顔。MotoGPデビュー戦で5位とはっ!!
2025年シーズンのMotoGPが開幕しました。第1戦タイGPが2月28日から3月2日にかけて、タイのチャン・インターナショナル・サーキットで行なわれ、MotoGPクラスに参戦する唯一の日本人ライダーにしてルーキーである小椋藍選手(トラックハウス・MotoGP・チーム)は、スプリントレースを4位、決勝レースを5位という衝撃的デビューを果たしました。
ルーキーにして初戦、決勝5位の衝撃的デビュー
2025年シーズンのMotoGP開幕戦の舞台となったタイGPは、今シーズンからMotoGPクラスに参戦する小椋藍選手(トラックハウス・MotoGP・チーム)にとって、デビュー戦でした。タイGPは、2024年シーズンにMoto2クラスで小椋選手がチャンピオンを獲得したグランプリです。小椋選手にとってそういう意味での特別な思い入れはないものの、好きなサーキットであり、慣れ親しんだコースです。また近年、開幕戦が開催されてきたカタールはなぜか緊張するので、タイでの開幕戦はプラスだったそうです。

「カタールって、雰囲気があるじゃないですか。あの緊張感がないというか。カタールでの開幕戦よりも、緊張はしないですね」
小椋選手は、木曜日にそう言って笑っていました。その翌日から、小椋選手はその走りで、大きな注目を浴びることになるのです。
ひとつ目のセンセーションは、金曜日午後のプラクティスでした。プラクティスをトップ10で終えることができれば、翌土曜日の予選2(Q2)にダイレクトで進出が決まります。
Q2は、予選1(Q1)のトップ2名を加えた12名のライダーによって行なわれる予選セッションで、Q2進出が決まれば、その時点で12番手以上のグリッドが確定します。
プラクティスでトップ10に入ることは、とても重要なのです。こうした状況から、プラクティス終盤は予選さながらのタイムアタック合戦となります。
このプラクティスで、小椋選手は9番手のタイムを叩き出したのです。見事、ダイレクト進出を決めたのでした。
ルーキーにとって、この結果を出すことは簡単ではありません。MotoGPクラスの週末のスケジュールは2024年シーズンまでのMoto2、Moto3クラスのそれとは異なっていたため(※2025年シーズンからはMoto2、Moto3クラスも同様のタイムスケジュールとなった)、昨シーズンまでのMoto2では、金曜日と土曜日午前中にかけてセッティングや走りを詰めていき、予選、決勝レースを迎えていました。小椋選手にとっては初めて、金曜日からアタックを強いられたわけです。
「金曜日にこんなに急かされることはいままでなかったので、考えることが多くて、やっぱり、いつもよりも大変ですね。作り上げていくだけの金曜日ではなく、結果を残さなくちゃいけない金曜日になっちゃった。そういう面では、もう少し難しいですね」
9番手を獲得したにもかかわらず、小椋選手はそう語っていました。しかし、その影響は土曜日に至っても感じさせることはありませんでした。
ふたつ目のセンセーションは、土曜日昼のQ2でした。5番手タイムを叩き出し、2列目5番手を獲得したのです。
MotoGPクラスは土曜日午後にスプリントレース、日曜日に決勝レースが行なわれます。小椋選手は、スプリントレースと決勝レースを、2列目からスタートすることになったのです。
センセーションはさらに続きました。小椋選手はスプリントレースを4位でゴールしたのです。このレースで前を走っていたのは、2022年、2023年チャンピオンのフランチェスコ・バニャイア選手(ドゥカティ・レノボ・チーム)です。小椋選手はバニャイア選手の背後で13周のほとんどを走り、一時は0.2秒差にまで接近しました。
「期待以上でした」と、スプリントレースを終えて囲み取材に現れた小椋選手は言います。自身としても、この結果は「とても大きなサプライズ」だったそうです。そしてまた、収穫もありました。
「一緒に走っていたライダーが、世界チャンピオンを獲得した、表彰台にも立っているライダーだったので、13周、真後ろで見られたのはかなり収穫があったかなと思います。ペコ(フランチェスコ・バニャイア)がしていることをまねようとしていたんです。ペコの後ろを13周にわたって走るのは、本当に貴重な経験でした」
最後のセンセーションは、決勝レースでした。小椋選手は26周で行なわれた決勝レースで、5位でフィニッシュを果たしたのです。
レースを戦った22名のライダーのうち、ルーキーは小椋選手を含む3名のライダーでした。つまり、それ以外の19名は、MotoGPクラスで戦ってきた猛者たちなのです。小椋選手は、そのうち15名の前方でゴールしたことになります。

MotoGPクラスは、前述のタイムスケジュールだけではなく、タイヤ(※Moto2クラスはピレリだが、MotoGPクラスはミシュラン)、電子制御、ライドハイトデバイス(車高調整機構)、空力デバイスによる走行への影響など、適応しなければならないことがたくさんあります。そんな中にあって、デビュー戦の決勝レース5位は、間違いなく注目に値する結果です。
チェッカーを受けたあと、クールダウンラップを終えてピットに戻ってきた小椋選手は、チームに向かってガッツポーズを見せました。そしてメカニックたちとタッチを交わします。トラックハウス・MotoGP・チームは、拍手で小椋選手を迎えていました。
レース後、囲み取材にやって来た小椋選手の表情は、いつもと変わりません。けれど、多くの海外ジャーナリストに囲まれて始まった取材で、小椋選手は「(スプリントレースよりも)満足しています」と語りました。
「スプリントレースのあと、クルーと話をしたんです。“今日は13周だけだったけど、明日はもっと複雑になる”ってね。でも、決勝レースでもこの順位を獲得しました」
小椋選手は前日のスプリントレースでバニャイア選手の後ろを走り続けましたが、このときの学びを生かして、決勝レースを走っていたそうです。
「最も大変だったのはタイヤマネジメントですが、昨日、ペコからたくさん学びました。リアタイヤにできるだけ負荷をかけない走りを心掛けて、決勝レースでもペースは最後まで良かったと思います」
素晴らしい結果で初戦を終えた小椋選手ですが、次戦も目指すところは変わりません。
「もちろん、良ければ嬉しいですし、僕はどんなリザルトでも受け入れる態勢はできています。自分のベストを尽くすことができれば、それ以外は気にしていないんです」
結果は「自分のベストを尽くした」上でのもの。いまの小椋選手には、目指す順位はないと言います。小椋選手が追い求めるのは、具体的なリザルトではないのです。その姿勢が、今回のようなルーキーらしからぬ結果を生んだのかもしれません。
次戦もまた、小椋選手は自分のベストを尽くすことだけを求めて走るのでしょう。第2戦アルゼンチンGPは、3月14日から16日にかけて、アルゼンチンのテルマス・デ・リオ・オンド・サーキットで開催されます。
Writer: 伊藤英里
モータースポーツジャーナリスト、ライター。主に二輪関連記事やレース記事を雑誌やウエブ媒体に寄稿している。小柄・ビギナーライダーに寄り添った二輪インプレッション記事を手掛けるほか、MotoGP、電動バイクレースMotoE取材に足を運ぶ。





