バイクで最近流行りのクラッチレス その草分けはホンダ「スーパーカブ」!?

ここ最近は国内外のバイクメーカーから、AT免許でスポーツライディングを楽しめる、クラッチレバーを装備しない新型の変速システムが続々登場しています。クラッチレスのイージーライドと言えば、ホンダの「スーパーカブ」を忘れてはいけません!

クラッチ操作を省いた、革命的な自動遠心クラッチ

 1900年代初頭にイクが登場して以来、海外のスポーツバイクも日本で普及した実用車(ビジネスバイク)も「クラッチ」を装備していました。エンジンのクランクシャフトと変速機(トランスミッション)の間で、動力を繋げたり切ったりする重要な機構ですが、クラッチ操作の難しさゆえにバイクの普及(とくに実用車など)を妨げている、という部分もありました。

有名なホンダ「スーパーカブ」の広告。クラッチ操作が不要なため、出前などで片手運転が容易なこともアピール
有名なホンダ「スーパーカブ」の広告。クラッチ操作が不要なため、出前などで片手運転が容易なこともアピール

 そこでホンダは、発進や停止時はもちろん、変速時にもクラッチ操作が不要な「自動遠心クラッチ」を装備した「スーパーカブC100」を1958年に発売します。

 現在では片手運転は危険なため推奨できませんが、発売当時は出前持ちや新聞配達などで利便性が高く評価され、瞬く間に大ヒット。その後も進化・熟成を重ね世界各国で販売され、スーパーカブは2017年には世界生産累計1億台を達成したメガヒットモデルとなります。

 また操作の容易な自動遠心クラッチは、スーパーカブから派生してレジャーモデルの「モンキー」や「ダックス」などにも採用され、ファンバイクのジャンルでも人気を確立しました。

アナログメカで、クラッチ操作のすべてに対応!

 それでは、スーパーカブの大ヒットにつながる「自動遠心クラッチ」とはどんなメカニズムなのでしょうか?

「スーパーカブC100」用に開発された自動遠心クラッチ。細部の形状などは変化したが、2008年までのスーパーカブ各車に、基本的な構造を変えずに50年も採用された
「スーパーカブC100」用に開発された自動遠心クラッチ。細部の形状などは変化したが、2008年までのスーパーカブ各車に、基本的な構造を変えずに50年も採用された

 まずエンジンがかかっていて回転の低いアイドリングの状態では、クラッチは切れた状態ですが、スロットルを開けてエンジンの回転が上がると、遠心力によってウエイト(振り子)が動いてクラッチが繋がります。

 反対に、スロットルを閉じてエンジンの回転がアイドリング近くまで下がると、遠心力が弱まることでウエイトが元の位置に戻り、クラッチが切れます。これが自動遠心クラッチの基本的な構造です。

 発進・停止時以外でも、ギアチェンジのためにクラッチを断続する必要があります。その際にはシフトペダルに連動してクラッチを断続する構造になっています。

 さらに言うと、エンジンをかけるためにキックペダルを踏み込んだ時だけクラッチが繋がって、クランクシャフトを回してエンジンを始動できます。

 ちなみに近年のクラッチレスの変速機構は、油圧や電動アクチュエーターを使用して、ECU(エンジンコントロールユニット=コンピュータ)で電子制御することで行なっています。こちらは変速(ギアチェンジ)もオートマチックが可能で非常に進化していますが、スーパーカブの自動遠心クラッチはすべてアナログの機械式で「滑らかな発進」、「変速時のクラッチ断続」、「キック始動」の3種類の仕事をこなしています。

 相応に複雑な機構ですが、電子制御ナシで行なっている非常に効率的かつ高機能なシステムと言えるのではないでしょうか。

さらに進化した、2段クラッチシステム

 スーパーカブの自動遠心クラッチの機構は、1958年の登場から2008年まで基本構造の変更ナシに使われましたが、2009年の「スーパーカブ110」で新型の「2段クラッチシステム」に進化しました(「スーパーカブ50」は2012年モデルから採用)。

 従来の自動遠心クラッチがひとつのユニットで発進用と変速用のクラッチ断続を兼ねていたのに対し、新型は文字通り発進用と変速用を2段に分けることで、変速時のショックを低減しています。

 また、発進用のクラッチは振り子式から遠心シュー式に変更することで、発進もよりスムーズになっています。

 この2段クラッチシステムは、現行モデルの「スーパーカブ50/110(およびプロ)」をはじめ、派生モデルの「クロスカブ50/110」、さらにリバイバル&ファンバイクとして人気の高い「スーパーカブC125」や「CT125・ハンターカブ」、「ダックス125」にも採用されています。

 ビジネスモデルやファンバイクで優先される、「利便性」に応えるべく生まれたのがホンダの自動遠心クラッチであり、反面、スポーツバイクにおいてはクラッチレバーの操作は「趣味性のひとつ」と捉えられてきました。

 いまやAT(オートマ)化の波が押し寄せていますが、じつはその分野でもホンダは、昔から様々なクラッチレス機構やAT機構を生み続けています。利便性と楽しさの両面で、ライダーに寄り添う新技術の開発に余念がありません。

【画像】どういう仕組み? 自動遠心クラッチの構造を見る(12枚)

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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