ルーツは紀元前!? 自転車のチェーンはナゼそのカタチに? 起源と進化とは
自転車の基本である「走る・曲がる・停まる」を支える仕組みについて、当たり前過ぎるからこそ意外と知らないことがあるかもしれません。ペダルを漕いだ力を後輪に効率的に伝える役割を果たす「チェーン」に注目してみます。
真の発明者は、ダ・ヴィンチだった(かも)!?
クルマやバイクと比べると圧倒的にシンプルな構造を持つ自転車ですが、骨格となる「フレーム」、走行に必要な「車輪」、操作に必要な「ハンドル」、停まるための「ブレーキ」など、基本的な機能である「走る・曲がる・停まる」を支える構成部品について、今さら言われるまでもなく、それぞれに何となく仕組みが思い浮かべられるかもしれません。

しかしながら、詳しく見るとパーツのそれぞれに興味深い仕組みや、人類が歴史をかけて積み重ねてきた英知を見ることができます。
たとえば、人間がペダルを漕いだ力を後輪に効率的に伝える役割を果たす「チェーン」に注目してみましょう。
いわゆる何かをつなぎ留めたり、侵入を防ぐための鎖としてのチェーンではなく、動力や回転運動を伝達するために使われている伝導チェーンは、自転車だけでなく様々な場面で多彩な形状を取りながら活躍しています。
その起源はかなり古く、古代エジプト文明(紀元前3100年以前~※諸説あり)では水を汲み上げるための装置で使われていたと言われています。
しかし当然ながら、当時は現代のような高度な製造技術はなく、またその形状は鎖と言われてイメージするいくつもの輪をつなげた「アンカーチェーン」で、主に伝導チェーンとして使われていたそうです。
そこから数百年の時を経て、産業革命などで製鋼技術や機械加工技術などが発展した結果、1832年にフランス人のメデュール・ガルが、自転車用に薄いプレートとピンで構成された「リーフチェーン」を開発し、特許を取得しました。そう、現代でも様々な工業機械などで使われているリーフチェーンは、そもそもは自転車用として開発されたのです。
ただ、リーフチェーンは自転車のような高速で動かすには摩擦が大き過ぎ、ピンがすぐに摩耗や破損してしまう弱点がありました。その弱点を克服するために、1880年にイギリス人のハンス・レノルドがピンに改良を加え、短い円筒形のローラを薄いプレートでつなぎ合わせた「ローラーチェーン」を開発します。
これらの発明を受けて、1885年にジョン・ケンブ・スタンレーが前ギアと後ギアをチェーンで結ぶ駆動方式を採用した「ローバー型安全自転車」を発売します。このタイプの自転車は「セーフティバイシクル」と呼ばれ、現在の自転車の原型となります。
ちなみに、なぜセーフティバイシクルと呼ばれたかというと、チェーンを使って後輪に回転する力を伝える仕組みが採用されるまで、自転車はペダルが前輪の軸に直結している、現代でいうところの幼児用の3輪車と同じ仕組みで進んでいました。つまり、単純にペダルを一回転させるとタイヤが一回転します。
この3輪車方式の自転車でスピードを出そうとすると、ペダル一回転で進む距離を大きくしなければいけないので、どんどん前輪が大きくなります。もしかしたら「昔の自転車の絵」などで見たことがあるかもしれません。
極端なところまで行くと、前輪の直径が150cmを超えるものもあったそうです。そこまで前輪が大きくなると、自転車のサドルの位置も必然的に高くなるわけで、もちろん足は地面に届かないし、転倒した時にはかなりの高さから落ちることになるので、相応の危険を伴いました。
チェーンを採用した自転車は、チェーンが繋いでいる前ギアと後ろギアの歯の数を変える(比率を変える)ことで、ペダル一回転で車輪を一回転以上回転させることができるので、無駄に車輪を大きくしなくてもスピードを上げることができるのです。
そのため、いつでも地面に足を着くことができる「安全な」自転車と呼ばれたわけです。この点だけを見ても、チェーンが自転車の発展に大きな役割を果たしたことがうかがえるでしょう。
余談ですが……『モナ=リザ』や『最後の晩餐』の絵画などで知られ、科学の分野でも多大な功績を残した偉人、レオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1519年)は、約40年間にわたって自身のアイデアを書き綴ったノートを残しています。
その中にはヘリコプターや戦車など、時代を先取りし過ぎた発明品のアイデアが記されているのですが、実はその中に「ローラーチェーン」と思われるスケッチも残されています。
果たしてそれが本当にローラーチェーンなのかは不明ですが、実際に実用化される300年以上前にそのアイデアを思いついていたとしたら、ダ・ヴィンチ、恐るべしです……。




