見た目似てる気がするけどモトクロスと何が違うの? チャンピオンが解説する「スーパーモト」の正体とは
バイク競技のひとつ「SUPERMOTO(スーパーモト)」とは、どんなマシンで争い、モトクロスと何が違うのでしょうか? 見た目は似ているけど中身はまったくベツモノ。チャンピオンライダーや関係者の言葉をもとに、分かりやすくその違いを整理します。
そもそも「スーパーモト」って何?
1970年代後半、アメリカのTV番組「スーパーバイカーズ」で、ロードレースやモトクロス、フラットトラックのトップライダーが争った競技が、現在の「スーパーモト(SUPERMOTO)」の源流と考えられています。
その後、舗装路(ターマック)と未舗装路(ダート)を組み合わせた現在のスタイルが確立し、ヨーロッパを中心に競技として発展、世界選手権も開催されるようになりました。
日本では1990年代前半に、モトクロスバイク(モトクロッサー)にロード用タイヤを履いてサーキットを走行する「スーパーバイカー」が上陸。2000年前後には、ヨーロッパの影響を受けて「スーパーモト」という呼び名が定着し、2001年に全日本選手権として正式にシリーズ化されました。

ということで、2026年MFJ全日本スーパーモト選手権開幕戦の舞台である愛知県の美浜サーキットを訪れ、いわゆるモトクロッサーとスーパーモト車両の仕様の違いを中心に、この競技で活躍する人たちにいろいろと説明してもらいました。
ちなみに、スーパースポーツやアドベンチャー、ネイキッドなど、バイクのジャンルで言うところの「モタード」は、この「スーパーモト」スタイルのモデルを指すようになっています。
技術進化と規制強化。スーパーモトは転換期に
全日本スーパーモト選手権の競技スタッフ、池田孝宏さんに話を伺いました。

──スーパーモトという競技は、ここ数年で大きく進化してきています。マシンの性能向上とともに、レースそのもののスピード域も確実に上がっています。サスペンションやエンジン性能が年々高まっていることで、確実に速くなっていると感じるレベルで進化しており、そのぶん迫力も増していると思いますよ。
ただし、その一方で課題もあります。スピードが上がればケガのリスクも増えてしまうため、安全面にはより気を配る必要があります。モトクロスマシンの進化と同じく、その技術がそのままスーパーモトマシンにも反映されており、現在はロード系のチームやオフロード出身のライダーなど、さまざまなジャンルの人たちが関わってマシン作りが進められています。
スーパーモトはターマックとダートの両方を走る競技なので、どちらが得意かでアプローチが変わります。ターマックが得意なライダーと、ダートが得意なライダーではマシンの作り方も異なり、最終的にはどちらが総合的に速いかで勝負が決まります。現在はどちらかに偏るのではなく、両方を高いレベルでまとめることが求められています。
近年は音量規制が強化される方向にあり、スーパーモトでも今後はより厳しい基準が適用される予定です(2026年全日本及びS1チャレンジクラスは最大音量規定値114dB/A、2027年から最大111dB/Aとなる予定)。
これにより、従来のようなセッティングが使えなくなる可能性もあり、レース運営やマシン開発に新たな対応が求められています。環境への配慮と競技性のバランスをどう取るかは、今後の大きなテーマのひとつです。
モトクロスベースであっても中身は別次元の仕様
2022・2025年の国内最高峰クラス、「S1 PRO」クラスチャンピオンの小原堅斗選手は、スーパーモトマシンについて次のように解説してくれました。

──スーパーモトはモトクロッサーをベースにしたマシンを使用しますが、一番分かりやすい違いはタイヤですね。モトクロスはブロックタイヤですが、スーパーモトはスリックタイヤを使います。見た目は似ていても、ホイールとタイヤが大きく違うポイントになります。
スリックタイヤは冷えたままだと滑ってしまうので、レース前にはタイヤウォーマーで温めます。1時間くらい温めてから走ることで、しっかりグリップする状態になります。選手によっても異なりますが、私の場合はタイヤは1大会で1セットを使うことが多く、タイムアタックから決勝まで使い切るイメージです。
ブレーキも大きく違います。アスファルトでしっかり止める必要があるので、大径ローターや専用キャリパーに交換します。モトクロスのままだと熱を持ってしまうため、スーパーモト用に変えるのが基本ですね。
サスペンションは、乗りやすさだけで言えばよく動く方がいいのですが、速さを求めると硬めのセッティングになります。ブレーキングで沈み込まないようにするため、いわゆるリジッドに近いセッティングにすることもあるんです。ただしダートもあるので、硬すぎると滑るという難しさがありますね。
操作系では、ハンドガードを装着するなどエンデューロに近い装備ですね。また、ステム部分にアフターパーツを使用してキャスター角を調整し、接地感を高めるといった工夫もしています。こうした細かな変更によって、アスファルトでの安定性や操作性を高めています。
さらにレースならではの装備として、オイルキャッチタンクの装着が義務付けられています。これはオイルが漏れた際に路面に流れ出ないようにするためのもので、サーキット走行では重要な安全対策です。同様にラジエーターのリザーバータンクなども必要になります。
駆動系では、モトクロスに比べてギア比がロングになる傾向がありますね。スピードレンジが高いため、スプロケットの歯数を減らし、より高速域に対応したセッティングに変更されます。
硬く低くが鍵! 乗り方は常に進化中
2025年の「S1 OPEN」クラスチャンピオンの鈴木優那選手は、モトクロッサーからスーパーモトへの転向で「走り方」の違いや、現在も進化していることについて教えてくれました。

──モトクロスからスーパーモトに乗り換えて、一番変わったのはサスペンションの考え方でした。モトクロスよりも硬くする方向で、「動かす」よりも「低い姿勢を保つ」ことを重視します。コーナーの中で車体の姿勢を安定させ続けるようなイメージです。
最初の頃はよく動くサスペンションを使っていましたが、経験を重ねる中で、より押し付けるようなセッティングに変わってきました。その結果、グリップ感が上がり、ターマックでのスピードも上がっています。
昨年遠征したイタリア選手権での経験も大きく影響しています。現地のマシンはかなりサスペンションが硬く、最初は怖さもありましたが、実際に乗るとよく曲がるし切り返しも速いんです。その感覚を日本でも再現できれば速く走れると感じて、今のマシンもその方向に寄せています。
乗り方も変わってきていますね。以前はモトクロスのように常に内側の足を出すスタイルでしたが、現在はステップに足を乗せたままコーナリングするスタイルも試しています。こうすることでグリップ感が上がり、バランスが取れればこの乗り方でもいけると感じています。
とはいえ、乗り方に絶対的な正解があるわけではないのです。ロード出身ならロードの乗り方、モトクロス出身ならまずはモトクロス的な乗り方から入るなど、自分のベースに合わせてスタイルを作っていくのが現実的ですね。そこから少しずつ最適な形を見つけていくことが重要になるんだと思っています。
※ ※ ※
鈴木選手のマシンを見ると、一見飾りのようなオリジナルパーツもありますが、実はすべて意味があるのだそうです。例えばブレーキまわりに装着されたエア導入パーツはキャリパーを冷やすためのもので、夏場のフェードを防ぐ役割があります。
走行中にブレーキの遊び(タッチ)の変化を調整するためのアジャスターなどは鈴木選手のオリジナル。こうした細かい積み重ねが、最終的な走りの差につながっていくようです。
このように、スーパーモトはモトクロスをベースにしながらも、タイヤ、ブレーキ、サスペンション、そして乗り方まで、大きく異なる競技だということが分かりました。
見た目は似ていても中身はベツモノ。チャンピオンたちの言葉からも、その違いの大きさと奥深さがよく分かります。
気になる方は、全日本選手権会場に足を運んでみてはいかがでしょうか。コースの構成上、とても近い距離で選手やマシンの躍動感あふれる動きを観戦できるのも、この競技ならではの魅力です。






























