一体どれを選べば? バイクいじりに便利なソケットレンチ インチやミリ表記で何種類かある「差込角」とは?

メンテナンスやカスタムするときに、あると便利な工具が「ソケットレンチ」です。この工具には「差込角」が何種類かありますが、そもそも差込角とは? どれを選べば良いのでしょうか?

バイク整備に欠かせない「ソケットレンチ」

 メンテナンスやカスタムに使う工具と言えば、すぐに思い浮かぶのがスパナやメガネレンチ、近年ではキャップスクリューと呼ばれるボルトを回すのに必要な6角棒レンチでしょうか。しかし奥まった場所や狭い場所にあるボルトやナットは、一般的なスパナやメガネレンチでは回すことができません。そこで威力を発揮するのが「ソケットレンチ」です。

ボルトやナットの頭のサイズに合った「ソケット」を専用のハンドルなどに差し込んで使う「ソケットレンチ」
ボルトやナットの頭のサイズに合った「ソケット」を専用のハンドルなどに差し込んで使う「ソケットレンチ」

 ソケットをT型ハンドルなどの先端に差し込めば、奥まった場所にあるボルトを回すことができるし、一方向にのみハンドルが振れる「ラチェットハンドル」を使えば、ボルトの頭からレンチを外さずに連続的に回せるので効率的に作業ができます。

 またソケットは六角ボルト(ナット)用だけでなく、ヘキサゴンビットやトルクスビット、「+」や「-」ドライバーのビットなど数多くの種類があり、プラグレンチもあるので様々な作業に対応できます。

「差込角」の大きさで、使えるソケットのサイズも決まる

 便利なソケットレンチですが、ソケットとハンドルを差し込む部分(差込角)は四角い立方体になっており、規格として次の8種類のサイズがあります。

①4分の1インチ(6.3mm)
②8分の3インチ(9.5mm)
③2分の1インチ(12.7mm)
④4分の3インチ(19mm)
⑤1インチ(25.4mm)
⑥1と2分の1インチ(38.1mm)
⑦2と2分の1インチ(63.5mm)
⑧3と2分の1インチ(88.9mm)

 なんとなく半端な寸法に感じますが、ソケットレンチは米国で生まれたためインチサイズの規格になっています。

 また英語だと四角=スクエア(square)なので、例えば「1/4sq」とか「6.3sq」と表記することもあります。とはいえ最近の日本国内では、ソケットの差込角は「6.3mm」や「9.5mm」などミリ表記が一般化しているように感じます。

 それではバイクの整備には、どの差込角のソケットレンチが適しているのでしょうか? じつは差込角の大きさによってソケットのサイズも決まってきます。

差込角が大きくなると、ソケット自体のサイズも大きくなる。画像はすべて二面幅10mmのソケット
差込角が大きくなると、ソケット自体のサイズも大きくなる。画像はすべて二面幅10mmのソケット

 目安ですが、六角ボルトの頭のサイズ(二面幅)だと次のようになります。

①6.3mm→3~14mm
②9.5mm→5~27mm
③12.7mm→6~46mm

 ちなみに⑥~⑧はかなり大型の機械用のサイズなので、バイクの整備には基本的に必要ありません。

 これを見ると「大は小を兼ねる」ではないですが、差込角12.7mmのソケットレンチが良いように感じますが……そうとも言い切れません。

 じつは差込角が大きくなれば、当然ながらソケットやビットのサイズも大きくなり、そのソケットを駆動するハンドル類も大型になります。

 前述したように、ソケットレンチのメリットは狭い場所や奥まった場所での使い勝手の良さといった部分にもあるので、その意味ではソケットやハンドルが大きくなるのはデメリットです。

 じつは自動車(乗用車)やバイクの整備では、昔(~1980年代頃)は差込角12.7mmのソケットレンチを使うのが普通でした。昔の車やバイクは整備の頻度も考慮して余裕を持った設計がされ、現在と比べるとかなり「スカスカ」だったので、大き目な12.7mmでも作業できました。また工具としての強度や耐久性も、当時は12.7mmが適していたのだと思われます。

 ところが時代が進むことで、とくにコンパクト化や軽量化、マスの集中化が性能や乗り味に直結するバイクは、どんどん「身が詰まった」作りになってきます。

 そこでバイク整備には差込角9.5mmのソケットレンチが一般的になり、そしてソケットレンチも進化して差込角6.3mmのタイプでも十分な強度や耐久性を持つようになり、コンパクトで使い勝手の良さから重宝されるようになってきました。

軽整備や簡単なカスタムなら、差込角6.3mmがオススメ

 そこでバイクをよく見ると、大抵のボルトが二面幅14mm以下で、呼び径(ネジの部分の太さ)も8mm以下が多いようです。これなら差込角6.3mmのソケットレンチで対応できます。

 しかしリアタイヤのアクスル軸を締めているナットや、トップブリッジのステムボルトなどは二面幅が30mmを超える場合もあり、これらをソケットレンチで回すには差込幅12.7mmでないと対応するソケットがありません。

 そこで「バイクのメンテやカスタムを自分でやりたい」と考え、これから工具を揃えようという人は、まずは自分がどんな作業をしたいのかイメージしてみましょう。

 たとえば外装パーツを着脱したり、レバーやペダル類の調整や、スモールパーツのドレスアップ作業なら、差込角6.3mmのソケットレンチが使いやすくて良いでしょう。

 またこれらの場所やサイズのボルト類は、それほど大きな締め付けトルクを必要としないので短めのハンドルでもしっかりと締め付けることができます。

 ただし旧車の場合だと、二面幅17mmや19mmのボルトやナットを使っている個所もあるので、車種によっては差込角9.5mmの方が良いかもしれません。

 そしてリアタイヤを外したり、チェーンの張り調整を行うにはアクスルナットのサイズのソケットとハンドル(いずれも差込角12.7mm)が必要です。

 とはいえソケットはともかく大型のハンドル類はけっこう高額なので、一般的なメガネレンチのほうが安価かもしれません。実際に作業を行う段階で考えた方が良いでしょう。

 というワケで、どの差込角を選ぶかはあくまでケースバイケースですが、これから軽整備やカスタムのために工具を購入するなら、コンパクトな差込角9.5mmのソケットレンチがオススメかもしれません。

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Writer: 伊藤康司

二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。

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