意識したことある? レースじゃなけどエンジンの「レッドゾーン」はキケンの合図 シフトダウン時こそ要注意!?
エンジンの回転数を表示するタコメーターは、高回転の部分に赤く表記された「レッドゾーン」があります。見るからに「ココまで回したらダメ!」な雰囲気が漂っていますが、レッドゾーンまでエンジンを回したら、どうなってしまうのでしょうか?
エンジンを壊さないための警告
バイクで現在主流の4ストロークエンジンは、ガソリンと空気を混ぜた混合ガスを「吸気→圧縮→爆発(燃焼)→排気」という4つの行程を繰り返して回転します。そのため、吸気バルブや排気バルブは適切なタイミングで開閉する必要があります。

4ストロークエンジンの吸排気バルブは、カムシャフトによって押し開き、バルブスプリングの力で閉じます(ドゥカティのデスモドロミック機構を除く)。
それがエンジンの設計値以上に高回転まで回してしまうと、バルブスプリングがバルブの慣性重量に耐えられなかったり、バルブスプリングの共振などによって、バルブの開閉が適正なタイミングからズレてしまいます。
このような状態を「バルブサージング」とか「バルブジャンプ」と呼び、バルブがピストンと衝突してバラバラになり、エンジンに深刻なダメージを与える危険があります(ダメージの度合いによっては修理不可能)。
したがって「これ以上回したら危険、エンジンが壊れる」という警告で、タコメーターにレッドゾーンが表記されているのです。
もちろんレッドゾーンの設定(エンジン回転数の上限の設定)にはマージンを取っているので、わずかにレッドゾーンに入ったくらいで瞬時に壊れたりはしませんが、エンジンにとって良くないことは事実なので、「チョットくらいならイイや」ということではありません。
ちなみに2ストロークエンジンは4ストロークのような動弁機構を持たないので、レッドゾーンに入った時のダメージは(4ストロークより)少ないようです。とはいえ点火プラグの電極が溶け落ちたり、ピストンが焼き付く可能性はあるので、当然ながらレッドゾーンに入るまでエンジンを回すのは止めましょう。
いまどきのバイクは「回転リミッター」を装備
それではエンジンを回し過ぎてレッドゾーンに入ってしまわないように、走行中は常にタコメーターを意識していないとダメなのかというと、そうでもありません。

近年のほとんどのバイクはレッドゾーンまで回転数を上げると、点火や燃料噴射をカットしてそれ以上回転が上がらない制御機構が備わっているからです。
たとえば小~中排気量モデルだと、タコメーターを装備していないバイクもありますが、基本的には回転リミッターがついているので大丈夫です。
……と言うか、現代の大排気量バイクでレッドゾーンに入るほど回転を上げたらとんでもなくスピードが出てしまいます(1000ccクラスのスーパースポーツ系は1速で100km/h近く出る)。なのでビッグバイクが公道走行でレッドゾーンに入るほどエンジンを回す機会は、現実的にはあり得ません。
ただし、無用に「空ブカシ」を行うと回転リミッターを装備しない旧車などではレッドゾーンに入るまで回ってしまいます。これは気を付けましょう、と言うより迷惑なのでやめましょう。
減速時の「強いエンブレ」に注意
このように、いまどきのバイクではアクセルを開けて加速中にレッドゾーンに入ってしまう危険はほとんどありません。反対に、意識すべきは減速中の「エンジンブレーキ」でしょう。
エンジンブレーキは「後輪がエンジンを回す」状態なので、強くエンジンブレーキが働くとエンジンの回転数が上がります。これはその時のバイクのスピード(=後輪の回転数)と使っているギアの段数によって、いわば強引にエンジンを回しています。
そのため、スピードが高くエンジン回転数も相応に高い状態からポンポンと続けざまにシフトダウンすると、レッドゾーンに入ってしまう可能性があるのです。
……が、スリッパークラッチやEBC(エンジンブレーキコントロール)を装備しているバイクなら、急激で過大なエンジンブレーキを抑制してくれるので、レッドゾーンまでエンジンが回る危険は少ないでしょう。もちろん、スリッパークラッチやEBCが非装備のバイクは注意が必要です。
また、長い下り坂を強めにエンジンブレーキを効かせて走っているうちに、徐々にスピードが上がっている時などはエンジンの回転数がどんどん上がってしまうので要注意です(スリッパークラッチ装備でも、この状況だと作動しない場合がある)。
もし減速中にエンジン回転が上がってレッドゾーンに入ってしまいそうなら、高いギアにシフトアップするのが得策です……が、それだと当然エンジンブレーキは弱くなるので、前後ブレーキを使って減速する必要があります。
どちらかと言うと小~中排気量のバイクに起こりやすい事象とはいえ、これらのバイクはタコメーターが非装備の車種も少なくありません。エンジンブレーキでレッドゾーンに入るほど回転が上がると、猛烈な振動と音に包まれるので「普段の走行状態と違う」と気づくハズ……。
というワケで、レッドゾーンに入らないように対策された現代バイクはもちろん、旧車や小排気量車の場合も無用な空ブカシや過剰なエンジンブレーキ、はたまた交通ルールを無視したスピードや加速をしなければ、ことさら意識しなくてもレッドゾーンに入ることはあまりないでしょう。
とはいえ「回し過ぎてレッドゾーンに入れると、エンジンが取り返しのつかないダメージを受ける危険がある」ことは事実なので、それは覚えておきましょう。
Writer: 伊藤康司
二輪専門誌『ライダースクラブ』に在籍した後(~2005年)、フリーランスの二輪ライターとして活動中。メカニズムに長け、旧車から最新テクノロジー、国内外を問わず広い守備範囲でバイクを探求。機械好きが高じてメンテナンスやカスタム、レストアにいそしみ、イベントレース等のメカニックも担当する。












