こんなに下がるの!? “足つき”で諦めていたバイクも自動車高調で乗れる!! 近未来の新技術を一足先に体験!! “縁の下の力持ち”「Astemo(アステモ)」のテクノロジーに触れた!!

大柄で背の高いアドベンチャーモデルは、足つき性で諦める人も少なくありません。しかし、最新版はフロントフォークもバランスよく縮むハイトフレックス(車高調整機構)が備われば不安解消。市販車導入前の新技術をバイクジャーナリストの青木タカオさんが、Astemo(アステモ)のメディア向け発表会で体感してきました。

車高調整機能をフロントフォークにも搭載

 足が届かないからという理由で、ビッグアドベンチャーなどシート高の高いモデルをあきめる必要は、今後はもうなくなるかもしれません!

 さらなる進化を果たした「ハイトフレックス(車高調整機構)」は、メーカーが発売する市販車にはまだ搭載されていませんが、Astemo(アステモ)のメディア向け二輪技術体験取材会で、ひと足先に体験することができました。

※Astemoは日立オートモティブシステムズ、ケーヒン、ショーワ、日信工業の4社が経営統合して誕生した会社で、2025年4月1日付で「日立Astemo」から「Astemo」へ商号変更しています。

Astemoの開発担当と筆者(青木タカオ)。テスト車両はシートが800mm以上あるドゥカティ「ムルティストラーダV4S」です
Astemoの開発担当と筆者(青木タカオ)。テスト車両はシートが800mm以上あるドゥカティ「ムルティストラーダV4S」です

 停車中は足で支えていなければ、倒れてしまう二輪車。バイク乗りにとって、足つき性はかなり重要なポイントとなっています。

 だからこそ、バイクメーカー各社は新型車を開発する際、シート高を上げすぎないよう考慮し、ニューモデル発表時には「シート高を低く下げました」「良好な足つき性」などと、ユーザーたちにアピールします。これを読んでいるみなさんも、ご承知のとおりでしょう。

 シート高は、サスペンションのストロークと密に関わります。走りを重視したスポーツモデル、特に未舗装路を走ることを想定したデュアルパーパスやアドベンチャーでは、シート高を下げるにも限界があります。ユーザーも走りを犠牲にしてまで、シート高を低く設定することをあまり好みません。

車高が最大時(左)と最も低い際(右)の足元の比較画像。足つき性がバツグに解消されていることが分かるでしょう
車高が最大時(左)と最も低い際(右)の足元の比較画像。足つき性がバツグに解消されていることが分かるでしょう

 足つき性か、サスストロークか……まさにせめぎ合いなのです。

 そんな悩みを解消してしまう新技術を栃木県にあるアステモのテストコースで体験しました。冒頭で述べた「ハイトフレックス(車高調整機構)」の最新バージョンです!!

もう、これを知ってしまうと、「早くニューモデルに搭載して!!」と願わずにはいられません。

ヘッドライトの光軸のズレも解消

 SHOWA EERA Gen2(ショーワ イーラ ジェネレーションツー)のハイトフレックスを搭載したドゥカティ『ムルティストラーダV4S』(試験用)では、前後サスペンションが伸びたり縮んだり、車高を自動調整できます。

車高が最大時(右)と最も低い際(左)の足元の比較画像。膝周りの余裕からも違いが分かるでしょう
車高が最大時(右)と最も低い際(左)の足元の比較画像。膝周りの余裕からも違いが分かるでしょう

 走行中はストロークをフルに活かして、停車時だけは自動的に車高を下げて足着きがよくなるのがハイトフレックスです。ハーレーダビッドソンの『パンアメリカ1250S』(SHOWA)や、BMW『R1300GS』(ザックス)で、筆者(青木タカオ)はすでに体験済みでした。

 SHOWA EERA Gen2では、リヤサスだけを制御していた従来型に対し、フロントフォークにも車高調整機構が備わります。フロントもバランスよく沈むことで、リヤサスのみよりもっと車高を下げることができるだけでなく、ヘッドライトの光軸のズレも発生しません。

 走り出すと車高を復帰させて、サスのストロークを最大限に伸ばしますが、従来型では自重によるストロークで少しずつ車高が上がっていきました。

2018年初登場から進化を重ねてきたEERA

 ハイトフレックスの初代は2018年に登場。縮めたリヤショックは走行を開始すると、サスペンションの伸縮によるポンプ機能(セルフレベルポンプ)を利用して、オイルを油圧ジャッキ内に送り込み、車高を上昇させます。

 停止直前であることを速度センサーなどで検知すると、電子制御式油圧バルブによって流路を切り替え、油圧ジャッキ内のオイルをリザーバーに逃がすことで車高を低下させます。

 2022年には、ABSモジュレーターの油圧ポンプを転用し、前後サスの油圧ジャッキを駆動するシステムを発表しました。ABSモジュレーターで駆動するハイトフレックスはセルフレベルポンプ式に比べ、路面の状態によらず(走行開始後に)絶えず安定して車高を上げることができます。ABSモジュレーターは多くの車両に搭載されているので、コストを抑えることができる点でも優位性がありました。

フロント用(右・中)とリア用(左)のギアポンプ式サスペンションスプリングアジャスター。素早い動作を実現しています
フロント用(右・中)とリア用(左)のギアポンプ式サスペンションスプリングアジャスター。素早い動作を実現しています

 さらに、ギアポンプ駆動によるサスペンションスプリングアジャスターを2023年に採用し、油圧ポンプユニットをリアサスペンションに一体化することを実現しています。

 これにより、走行開始後、車高を上げる作動時間をABSモジュレーター式の約半分に短縮。ポンプユニットの作動流体には、サスペンション用ダンパーオイルを用いてリザーバーを共用にしました。このとき、外部への油圧ホース配管を廃止することを実現しているのも見逃せません。

テスト車両のフロントフォーク左側にはギアポンプ式車高調整システム、右側にはEERA Gen2セミアクティブサスペンションを搭載。右側にある赤いボックスがアクチュエーターとECUの一体型ユニットで非常にコンパクトな設計とされています
テスト車両のフロントフォーク左側にはギアポンプ式車高調整システム、右側にはEERA Gen2セミアクティブサスペンションを搭載。右側にある赤いボックスがアクチュエーターとECUの一体型ユニットで非常にコンパクトな設計とされています

 今回、筆者が体験したSHOWA EERA Gen2では、フロントフォークにも同機構を搭載。フォークトップ右側にアクチュエーター一体型ECUユニット、左側にはギヤポンプ式のサスペンションスプリングアジャスターを備わります。

 停止時にストロークを縮める量は前後とも約50mmで、リヤのみの場合より車高を下げることができます。車高が戻る(アップ)際の作動時間は約5~7秒で、ダウン時はおよそ1秒しかかかりません。応答性を高めつつ、さらに実用的になりました。

Astemoが開発中の低コストバージョンEERA Gen2。今回のメディア向け二輪技術体験取材会ではBMW Motorrad「G310」に装着。実際にまたがり、調整してもらうとかなりの違いを体感できました
Astemoが開発中の低コストバージョンEERA Gen2。今回のメディア向け二輪技術体験取材会ではBMW Motorrad「G310」に装着。実際にまたがり、調整してもらうとかなりの違いを体感できました

 また、小中排気量モデルなどには、リアのみに自動車高調整機能を持たせる低コストバージョンもアステモは設定済みです。価格を抑えられれば、ハイトフレックスが組み込まれるバイクが増えるでしょう。今後の動向から目が離せません。

最新版の電子制御サスは驚愕の連続

 SHOWA EERA Gen2を装備したドゥカティ『ムルティストラーダV4S』をテストコースで走らせることもできました。

Astemoのテスト車両に乗る筆者(青木タカオ)。「コンフォート」「ダイナミック」「アクティブ」の3モードが搭載されており、特にアクティブは「コンフォート」と「ダイナミック」のいいとこ取りといえるセッティングが施されていました
Astemoのテスト車両に乗る筆者(青木タカオ)。「コンフォート」「ダイナミック」「アクティブ」の3モードが搭載されており、特にアクティブは「コンフォート」と「ダイナミック」のいいとこ取りといえるセッティングが施されていました

「コンフォート」「ダイナミック」「アクティブ」の3モードを担当者がコントローラーで切り替えてくれ、それぞれ3周ずつ乗り比べしました。市販車に搭載される場合はメーターディスプレイを見ながらスイッチボックスで設定していくことになるのでしょう。今回は開発段階で用いている仮のインターフェースによって、担当者が素早くモード切り替えを行なってくれます。

 モード名が示す通りのセッティングで、「コンフォート」は前後サスが柔らかく動いて路面追従性に優れます。テストコースにはワインディングによくありそうなリアルなギャップなどが設けられ、そこを乗り越えれば路面からの衝撃を強く受けることになります。「コンフォート」でスポーティに攻め込むと、ギャップ通過時に衝撃を強く受けるので、減衰力を強めたいと感じます。余裕を持って、ジェントルに乗りたい時に最適なモードと言えるでしょう。

「ダイナミック」は減衰力が強く、収束も早い。コンプレッション、リバウンド、いずれも強く効いていて、乗り心地を重視するよりキビキビ走りたい時に選びたいスポーティな味付けです。

 注目は「アクティブ」で、車速に応じた減衰力と車体姿勢を自動制御してくれます。ギャップで受ける衝撃を柔らかく受け止めつつ、収束も早い。しなやかに動きつつ、踏ん張りも効くオールマイティでフレキシブルな足まわりを実現しています。状況次第で「コンフォート」と「ダイナミック」の良いところ取りをしてくれるから、これはもう電子制御の賜物としか言いようがりません。

まさに「縁の下の力持ち」的な存在のAstemo開発陣。オートバイのテクノロジーや安全性向上のため尽力してくれています
まさに「縁の下の力持ち」的な存在のAstemo開発陣。オートバイのテクノロジーや安全性向上のため尽力してくれています

 ついにフロントフォークにも車高調整機構を搭載し、停止時の足つき性を向上。走り出せば、路面次第で減衰力を自動調整してくれる電子制御サスペンション「SHOWA EERA Gen2」。市販車への搭載は現時点では未定ですが、新たに装備したり、アップデートしてくるモデルが出てくるのは間違いなさそうです。

 操作系を含めて、最終的なセッティングは、採用するメーカーと突き詰めて搭載するモデルのキャラクターにマッチさせつつ、我々ユーザーへプリセットが用意されます。

 SHOWAイーラ採用モデルが今後登場した時には、一体どんな味付けがされているのか、興味はつきません。

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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