「せっかくハーレーの“XR1200”があるんだから一緒にサーキットを走りたい」 夫のレース観戦から始まった妻と息子の異例の参戦宣言!? 毎戦応援に駆けつけるお孫さんも参戦で将来は3世代で走る!?
家族でサーキット走行を楽しむ谷さんファミリー。実はひょんなことがキッカケでまさかの展開に発展します。今回はそのエピソードについて、自身もレース経験のある後藤武さんが紹介します。
ハーレーでレース復帰を決意
お父さんや子どものレースを家族で応援している光景、サーキットに行くと目にしますよね。今回紹介する谷さん一家も当初はそんな感じでした。
家族総出でお父さんがハーレーダビッドソンの「XR1200」で参戦していたレースを応援していたんです。ところがそれだけでは止まりませんでした。

なんとお母さんが同じXR1200を購入してレーサーをもう一台製作。息子さんと夫婦3人で練習走行をしているんだとか。おまけにお父さんと同じクラスへの参戦まで考えています。
その様子を娘さんとお孫さんが応援。レースになると父息子の仲間達が押し寄せて声援を送っています。なんとも楽しそうなモータースポーツライフを送っているアグレッシブな家族のことを紹介することにしましょう。

お父さんの一直さんと奥さんの由紀さんは知り合った頃から2人共バイクに夢中。2000年代初頭には当時人気だったスーパーモタードのレースにも参戦していました。
その後はサーキットから足が遠のきますが、最近になって一直さんがハーレーでレース参戦を決意。1990年代から2000年代に国内外のハーレーのレースで活躍した奥川潔選手のお店「BURN! H-D SPORTS」を訪れます。
一直さんは、「とにかくハーレーでレースがしたくて憧れの奥川選手に相談することにしました」と話しますが、そこでたまたま売りに出ていたのがXR1200でした。レースをするのならスポーツスターよりもXR1200の方が良いという奥川さんのアドバイスを受け、このマシンを購入。レース用にモディファイを開始します。
コンピューターをサンダーマックスに変更してマフラーはBURN製のチタンフルエキ。リアサスをナイトロンにして外装は自らペイント。こうして製作したXR1200でMCFAJのMAX10に出場します。
MAXシリーズは外国車のみで行われるレースで、ラップタイムを基準にMAX10、MAX6、MAX4の3クラスがあります。一直さんは最初にMAX10に出場して見事優勝。MAX10を卒業します。
次のレースではMAX6で総合2位、空冷クラス優勝という好成績。その次のレースでは集中力を切らし、5位という結果になってしまいましたが、ドゥカティやBMW Motorradなどパワーで勝る強敵を相手に、コーナーで差し返すという奮闘ぶり。一直さんのレースに家族や仲間が興奮していたことは言うまでもありません。
お父さんの勇姿にまさかの……
ここまではお父さんのレースを応援する家族。良くあるパターンだったんです。ところがBURNのスタッフから一直さんに電話がかかってきたことで事態が一変します。XR1200の売り物があるという連絡でした。
「さすがにもう一台同じバイクはいらないかな」と考えて断ろうとした一直さんですが、隣で話を聽いていた由紀さんが「私が買う」と一言。谷家に2台目のXR1200がやってくることになりました。

当初は公道で乗るつもりだったということでしたが、一直さん家族、話しているうちに盛り上がって暴走状態。「せっかくXR1200があるんだから一緒にサーキットを走りたい」由紀さんと息子の蔵人さんが言い出して、2台目のXR1200もレーサーになることとなりました。
話だけで終わらず、即行動に移すのがこの家族の凄いところ。由紀さんはすぐに筑波サーキットのライセンスを取得。2台のXR1200を筑波サーキットに持ち込み、家族でスポーツ走行をすることになりました。由紀さんはタイムこそ出なかったものの安定したペースで周回を重ねて走行を終えます。そして息子さんの蔵人さんも初めてハーレーのレーサーでサーキットを走ることになります。

実は蔵人さん、少し前にヤマハ「YZF-R3」を購入してレースデビューを目指し、練習をしていました。スーパースポーツ好きの蔵人さんは当初「ハーレーには乗らない」と言っていたのだそうです。それが変わったのは一直さんのレースを見てから。
一直さん「自分がMAX10で勝ったのを見た頃から、蔵人もこのレースに出たいと言い出しました。
走行から戻ってきた蔵人は大興奮でした。ハーレーってマルチや小排気量のマシンと違ってスロットルを開けた瞬間に蹴飛ばされるようなトルクで加速していくから、そのフィーリングが気持ち良かったらしいです。立ち上がりでも安心して開けられると言っていました」。
初めて乗ったXR1200は想像以上に楽しかったようです。
これで蔵人さんの目標が確定。来年のMAX10出場を目指して練習中です。一直さんと2台で走れば蔵人さんの練習も密度が濃くなります。同じバイクで走っている一直さんの走りを後ろから見ることができるし、アドバイスも参考になることでしょう。
ちなみに由紀さんもいつかMAX10に出たいと言っているのだとか。夫婦と息子3人でレースに出たら注目されるだろうなあ。そんなことになったら、もう一台XR1200を買わないといけませんが「XR1200だったら手頃な中古車が見つけられそうな気もします」と言う一直さんの言葉を聞いていると、もうすでに3台体制での活動が視野に入ってきているのかもしれません。

そんな家族の様子を見守っているのは娘のさりぃさん。息子の桃真君(一直さん由紀さんのお孫さん)を連れて毎回サーキットにやって来て応援しています。桃真君は現在2歳。小さな頃からサーキットの排気音の中でもスヤスヤ寝ているんだとか。もしかしたら家族3世代でサーキットを走る日が来る? なんて期待してしまいます。
ライダー10人体制での耐久レース参戦!?
実は谷家のサーキット遊び、これだけではないんです。いつも応援に着てくれている仲間達と昨年から筑波サーキットで開催されている耐久レース「ミニ6」に出場しているのですが、これがまた実に楽しそう。

「昨年は親チームと蔵人たち若者チームに分かれてエントリーする予定だったんですが、若者達の準備が間に合わなくて1チームにしました」。(一直さん)
2つのチームをまとめたものでライダーが10人という大所帯。この人数でエントリーしたチームは初めてだということで、主催者から「友達がたくさんいて楽しそうだね」と言われたそうです。
「今年は念願の2チーム体制です。親チーム6人 息子たち若者チーム7人で挑みます。親子対決も楽しみなんですよ」。(一直さん)
近々メンバー全員が集まり、富士スピードウエイカートコースで大練習会を開催する予定とのこと。なんかバイクで運動会やっているような感じですね。
海外では家族ぐるみでモータースポーツを楽しんでいる人たちがたくさんいますが、日本では家族全員でここまでハマっている家は少ないかもしれません。
しかもまだこれから話が大きくなっていきそう。谷さん一家のようにレースを楽しむ家族が増えたら、日本のモータースポーツの雰囲気もずいぶん変わるのではないかな、なんて考えてしまいました。
Writer: 後藤武
クラブマン誌や航空雑誌の編集長を経て現在はバイク、食、飛行機などのライターと
して活動中。飛行機とヘリの免許を所持しエアレースのTV解説も担当していたことも。2スト、旧車、V8のアメ車など多数所有。





























